2024.05.17

CARS

いまや大人気のアバルト 復活第2弾のアバルト500は、どれだけ凄いホットハッチだったのか? 小さな身体に強心臓! 惚れ惚れするしかない!

痛快極まりない500アバルト!

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中古車バイヤーズガイドとしても役にたつ『エンジン』蔵出し記事シリーズ。今回は2008年9月号に掲載されたアバルト500の記事を取り上げる。この前の年の秋に登場したプント・アバルトは9カ月で9000台を売るヒットを記録。欧州各国では専売ディーラー網も急速な勢いで拡張された。そして、ついに投入されたのが本命モデル。発売開始後わずか8時間で1500台を受注していきなりホームラン・デビューを飾った500アバルトにバロッコで乗ったど直球のリポートをお送りする。

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グイグイと向きを変え続ける!


「お見事!」思わず心の中で叫んだ。惚れ惚れするようなシャシーのセットアップだ。アバルト開発チームは、グランデ・プント・アバルトに続き、500でも素晴らしい仕事をやってのけた。バロッコの特設コースを攻め立てるのが楽しくてしかたない。これでステアリングの情報伝達能力がもう少し上がってヴィヴィッドなものになれば、言うことはない。



9カ月前、同じくここバロッコ・プルービング・グラウンドで、新生アバルト第1弾となるグランデ・プント・アバルトを駆った記憶がまざまざと蘇ってきた。あのときもテスト・コースの所々をつないだショート・サーキットだったが、今回は奥のテクニカル・セクションを変えて、左右に切り返すよりタイトなコーナーの連続でつないである。全幅が小さくて背の高いクルマにとっては厳しいはずのまさにそこを、500アバルトは嬉々としてすり抜けていく。

軽微なアンダーステアを維持したまま、深く深く回り込む。もうそろそろ鼻が外へ逃げるか、と予期するところを超えて500アバルトは堪え、次のコーナーへと狙いを定める。

ヒタっとした接地感は失われず、かといってタイヤのショルダーを苛めるような感触も生まないまま、グイグイと向きを変え続けるのである。



体感ロール角は記憶のなかのグランデ・プント・アバルトよりむしろ小さい。身のこなしがソリッドだ。にもかかわらず、外輪が突っ張りながら堪えているような気配もない。ホイール・ベースが優に20cmほども短いのが有利に働いているだろうにしても、全高はほとんど変わらず、トレッドは5cm以上狭い500アバルトに、どうやったら、これほど安心感にみちたコーナリング・マナーをもたらすことができるのだろう。

重心がことさらに低い感じはないのに、ピタッと決まるコーナリング。期待値を明らかに上回る回頭性能。しかも、過敏なところは微塵もない。

シュアということでは文句をつけるところのないステアリングは、こうしてスポーツ・モードに切り換えて走れば操舵、保舵の重さもまさに適切。ステアリング・ホイールの回転慣性が勝ってふらついたりすることのない重さを確保しつつも、絶対的には決して重過ぎない。絶妙だ。これでコンタクトエリアの情報がもう少しダイレクトに伝わってくれば素晴らしいのに、と欲が出る。



とは思ったけれど、公道で毎日使うスポーツ・シューズのそれとしては、いいさじ加減なのかもしれないとも思う。今回はテストコース内だけの試乗なので、そこのところはなんとも判断が下せないが、このステアリングに大筋のところで文句がないことには変わりない。

自信をもってコーナーの連続に飛び込んでいけるのはしかし、この優れたステアリングのおかげばかりではない。やはり、シャシーが優れているのだ。軸間距離が2300mmしかないことの美点だけを前面に出し、それが抱えてもおかしくないネガをおくびにも出さない。ブレーキング時にも、中高速コーナーをリミットに挑戦するかのように攻めているときにも、リアのスタビリティは磐石で、不安を一切抱かせない。そこがなによりも凄い。この安定性の高さが背後にあるからこそ、ガンガンと攻めたてていけるのだ。


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