2台の6代目ゴルフGTIを乗り比べ! 傑作はどっちだ?
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特徴があまりないのが特徴新型GTIの外観上の特徴は、特徴があまりないことにある。なんて言ったら、煙に巻いているように聞こえるかも知れないが、これが新型GTIに初対面した私の率直な感想である。これまでのワッペン・グリルはもちろん、GTI専用のフロント・マスクという考え方も6代目にはない。あくまで基本はノーマルの顔。その横長グリルの上下に配した赤いラインが最大の見せどころだ。そう、要するに初代の手法をそのまま踏襲しているのだ。どうやら新型GTIは、先に上陸した6代目ゴルフがそうであったように、初代を強く意識し、バック・トゥ・ザ・ベイシックスの哲学でつくられている。
しかし、30年以上も前ならいざ知らず、価値観の多様化した21世紀のいま、それだけで差別化を図り、存在を主張するのは難しい。そこで5代目からもスタイリング要素を引用して横長グリルのパターンをハニカム状にし、バンパーの左右には新たなアクセントとして縦長のフォグランプを配した。それでも見かけは5代目GTIに較べたらずっと地味だ。サイド・ビュウに至っては、ホイールを除いてほとんどノーマルと見分けがつかない。リアの羽根や左右のエグゾースト・パイプの間に装着されたディフューザーも控えめで、声高に存在を主張することはない。
内装もそうだ。初代からの引用であるタータン・チェック柄のシートは5代目と同じだが、その色合いはより地味なものが選ばれているように思えた。インパネのスイッチ類の質感などはノーマル同様、5代目より格段にアップしているものの、エモーションを掻き立てるというよりは、大人っぽい洗練されたスポーティ感を醸しだすのに重点が置かれていると感じられたのである。静かなる傑作走りも同じだった。本質的な乗り味は基本シャシーを同じくする5代目と変わらない、すなわち目を見張るような斬新さはないが、あらゆる面で格段に洗練され、安定感を増したのが新型の最大の特徴である。最初に気づいたのはステアリング・フィールの進化だった。先代で導入された電動パワステは、重さといいしっとり感といい、文句のない域に達している。センター付近の微妙な領域でのレスポンスも素晴らしい。サウンドも進化した。6代目ゴルフ自体の遮音が進み、余計な雑音が入らなくなったこともあって、より野太くチューニングされた排気音がほどよく室内に響いてくるのだ。
新しい直噴2リッター直4ターボの完成度も高い。タイミング・ベルトをチェーン駆動にし、シリンダー・ブロックにバランサー・シャフトを組み込むなどした結果、より軽くコンパクトになり、燃費も向上した新世代ユニットは、旧型と同じトルクに11ps増しのパワーという数字を超えて、何よりも高回転域での吹け上がりが良くなった。6200rpmからレッド・ゾーンになっているが、実際には7000rpmまで淀みなく回る。足回りの進化も相当なものだ。ノーマルよりフロントが22mm、リアが15mmローダウンされたサスペンションは、基本的にかなり硬めの味付けだ。都内を低速で流している時など、路面の荒れをダイレクトに伝えてくるのにやや戸惑う場面もあった。しかしその分、高速道路やワインディングでは水を得た魚のようになる。5代目より明らかにロールもピッチも抑えられており、どんな場面でも路面に吸いつくような走りを見せた。一方、新たにオプション設定されたコンフォート、ノーマル、スポーツの3つのモードが選べる“DCC”を装着した仕様では、ひとサイズ大きな18インチのタイヤを履いていても、コンフォートはもちろんノーマルでも標準車より乗り心地が良かった。スポーツ・モードを選べば、足のみならず、エンジンやステアリングのレスポンスもシャープになり、よりアグレッシブな走りが楽しめる。DSGは低速時の繋がりがさらに滑らかになったのに加え、DとSのふたつのレインジの差が大きくなった。Dでは基本的に燃費指向。ひとたびSに入れるや、高回転域まで引っ張る過激なシフト制御を見せる。走行安定性を高める電子デバイスも進化しており、全体として時にホイールスピンやトルクステアも見せた先代のアグレッシブさが消え、安定感が増したために、一見大人しくなったと感じられるかも知れない。が、確実に速くなっているのだ。内なる炎、とでも言えばいいのだろうか。見かけも走りも地味になった6代目だが、秘めたるハートは熱い。台風迫る雨の箱根の峠道をなんの不安もなく駆け抜けながら、これは伝説のGTIの名を継ぐに値する“静かなる傑作”だと思った。文=村上 政 写真=望月浩彦(ENGINE2009年10月号)
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