2024.07.06

CARS

中古SUVで他の人と被りたくないならこの手もありか スカイライン・クロスオーバー 意外と掘り出しモノのSUVかも

いまだから乗りたいクルマかも!

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年10月号に掲載された第3のスカイライン、クロスオーバーのリポートを取り上げる。サルーン、クーペに続いてスカイライン・シリーズに追加されたクロスオーバー。クーペ・スタイルのSUVというBMW X6ばりのコンセプトのスカイラインってどんなクルマだったのか?

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時代の最先端だったかも


アメリカで販売されているインフィニティEXが日本でも発売された。日本名はスカイライン・クロスオーバー。その名のとおり、セダン、クーペに続くスカイラインの第3の派生車種で、車高を上げたSUVである。クロスオーバーといえばセダン、あるいはワゴンとSUVの融合というのが普通だが、スカイライン・クロスオーバーの場合はクーペとSUVである。



前後オーバーハングを切り詰めて四隅にタイヤを置き、キャビンを後寄りにしてノーズの長さを際立たせ、リアを滑らかにスラントさせたスタイルはカッコいい。同じクーペ・スタイリングのBMW X6が小山のように見えるのに対して、セダン比プラス125mmに抑えたSUVとしては異例に低い1575mmの全高のおかげで、スカイライン・クロスオーバーはスマートに見える。

確かに個性的でカッコいいが、正直に告白すると、実は、乗る前はネガティブなことばかり考えていた。恐竜絶滅隕石説にたとえていうなら、リーマン・ショックという隕石で自動車を取り巻く環境が一変してしまった今は、発売のタイミングが悪すぎやしまいか。エンジンは3.7リッターで330馬力もあるから好燃費は期待できない。価格は2駆の一番安いので420万円。4駆の最豪華モデルは499.8万円もするから、恐竜みたいに生き残れないんじゃないか、と思ったわけだが、いざ乗ってみると、そんな思いがいっぺんに吹っ飛んでしまうような魅力的なクルマだったのだ。

ブラウンの本革と本木目のウッドパネルが随所に奢られた、まるでイギリスの高級車のようなタイプPの室内。タイトさがかえって心地いい。


セダンより高級

富士の裾野、御殿場で行われた試乗会でまず乗ったのはFRの370GT。走りはじめてすぐに気がつくのは乗り心地の良さだ。クーペはいうに及ばずセダンと比べても明らかにしなやかさが増している。プラットフォームも共通なら足回りも基本的に同じ。マルチリンク式のリア・サスペンションの取り付け位置がSUV用に若干変更されているだけだが、超扁平タイヤの乗り心地を研究し尽くしているだけあって、バネ下が重くなる大径のオールシーズン・タイヤをバタつかせることなく履きこなしている。重厚かつしっとりとしており、これなら乗り心地はセダンより高級である。

一応5人乗りだが、後席はおせじにも広いとはいえない。


3.7リッターV6は日産のお宝だけあってスポーティだ。型式のVQ37VHRのHRは高回転(High Revolution)の略で、7500rpmまで回ることを指しているが、街乗りで普通に走っている分にはスポーツ心臓であることを意識させない。しかし、いったん右足を踏み込めば猛然と加速し、淀みなく7500rpmのリミットまで回ってみせる。そんな時でもクーペと比べるとエンジン音は控えめだ。刺激的ではあるけれど、適度にミュートされた音はクールという言葉がピッタリくる。



雨と濃霧という生憎の天候だったことで撮影を優先したため、本格的なワインディングを攻めるチャンスはなかったが、低重心が功を奏して御殿場のちょっとしたカントリー・ロードをけっこうなペースで楽しむことができた。ロールも自然で、ステアリングを切った分だけリニアにクルマが向きを変えてくれる。FRならではの楽しさだ。この後4駆モデルの370GT FOURにも試乗したが、プラス90kgの車重と4駆化にともなう操舵フィールの違いもあり、軽快さは明らかにFRの方が上だった。雪道を走る必要がなく、ハンドリングを楽しみたいならお薦めは断然FRである。

走りがいい。乗り心地も高級とくれば気になるのは内装だろう。ナビゲーションやオーディオなどのスイッチ類の配置こそ同じだが、ほとんどが専用デザインの室内はラグジュアリーの一語に尽きる。特に本革や本木目があしらわれたタイプPは豪華である。クーペよりタイトで包まれ感があると思ったら、頭上高以外の室内長はクーペより狭かった。SUVといえば家族で荷物を積んで、というイメージだが、このクルマにファミリーは似合わない。オトナのクルマ好きが1人、あるいは2人で乗るのが似合う。たとえて言うなら現代に生まれた新しいシューティングブレイクだろうか。

文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=小林俊樹

(ENGINE2009年10月号)

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