日産初代シルビアとSR311型フェアレディ2000
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SRを諦めた理由そのチャンスは3年ほど前に突然訪れた。それがシルビアの横に写るロー・ウィンドウのSR311だ。「ジムカーナに出ていたのか、後付けのオーバー・フェンダーとかが付いていたけど、ボディに腐りはないし、機関のオリジナル度も高そうだから、と最初は軽い気持ちだった。でもこれがとんでもないクルマだったの!」というのも、素性を調べてみたら60年代に95戦中90回の総合優勝を遂げたジムカーナ・キングであり、SR遣いとして名を馳せた中村昌雄さとお兄さんが、新車で購入したクルマであることが判明したからだ。
「しかもメンテナンスを専門家の高島康久君にお願いしたら、塗装、プレスライン、スポット溶接の跡など、あちこちが驚くほどオリジナルの状態を残した、貴重な個体であることがわかったんです」そこで後藤さんは、新車当時の姿に戻し後世に残すべきだと決意する。しかしその一方で、少しずつSRの存在が重く感じるようになっていったという。「いざレストアしようと思っても、知識もパーツもないから、一から始めないといけない。僕ももう63歳だからね。完成まで何年かかるんだろう……と思うと、そこまでの熱意がないことに気づいた。一方で高島君はまだ20代で知識も部品も直す技術も熱意もあって、どうしてもこのSRが欲しいという。じゃあ譲りましょうという時に、彼のお父さんが持っていたシルビアと交換することになった、というわけです」
実はこのシルビアも只者ではない。元々素性のいいクルマだったというが、ボディ、機関がイマイチだったので数年前にフルレストアを決意。ただ部品の流通がまったくないので、部品取りを2台手に入れ、その中の一番良いパーツを使い、鈑金職人が“もう古いクルマはやらない”と音をあげるほど徹底してレストアをしたのだという。その甲斐あってシルビアは内外装、機関ともに世界屈指のコンディションに仕上げられている。「僕のところに来てから、まずタイヤを換えて、室内のメッキパーツをやり直したくらい。出来上がっているクルマは楽ですよ(笑)。それも自分が散々苦労してきたからわかること。そういう意味でも二十歳の時に自分でEタイプをレストアしたいと思ったのが原点。珍しいからとか、高いからじゃなく、自分が良いと思ったもの、欲しいと思ったものだから、ずっと続けてこられたのだと思います。古いクルマに限らず何事も、何より“思い込みと情熱”が大事なんですよ」文=藤原よしお 写真=茂呂幸正(ENGINE2024年5月号)
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