2024.05.18

CARS

ヤフオク7万円で買ったシトロエン、平和な日々と、その間のお買い物【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#38】

荷室にシートとキャスター付きの脚を無理矢理押し込んで主治医の元へ向かうエグザンティア。

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ヤフー・オークションで7万円のシトロエン・エグザンティアを手に入れ、10カ月と200万円かけて修復したエンジン編集部員ウエダの自腹散財リポート。走り出してから早くも2年目。今回は運良く手に入れることができた極上のドライバーズ・シートについてご報告する。

シート、あります

このリポートの第15回で、シートをはじめとするインテリアのかなり大がかりな修復について報告をしたのだが、その時、ENGINE誌の読者から「シートがあります」というありがたいお手紙をもらったことも紹介した。



はじまりは、編集部宛に届いた1枚の葉書だった。そしてその文面は、本当に必要最低限のものだった。

「前略 CITROEN XANTIA V-SX 右ハンドル車(赤色)右側シートあります。譲渡可。車体は13年前に廃車にしました。他の部品はありません」

差出人の名は、滋賀県在住の伊豆田 剛さん。彼はこのENGINE WEBでの長期リポートの前身である、ENGINE誌2022年6月号の巻頭特集、フランス車の「天国」と「地獄」を読んで僕のことを知り、わざわざ連絡をしてくれたのである。

しかし住所以外に連絡先は書かれておらず、僕も彼にならって手紙を書くことにした。インターネットが普及する前は、こうして雑誌の個人売買欄を通じて文通し、売買することもままあったと思う。

でも自分自身の経験だと、たぶん30年近く前、笹藪に放置されていた初代フィアット・パンダ4×4をタダでもらった時ですら、やりとりはすでにニフティ・サーブの掲示板上だった。文通というアナログで、少しもどかしいやりとりが、逆にちょっとワクワクする。


返信してから一週間ほど経って、伊豆田さんから今度は封書が届いた。中にはエグザンティアの運転席の写真や、現在の状態が書かれた便せんが3枚が入っていた。確かに僕のリポート車と同じV-SX用で、電動調整式の、肘掛けの付いたタイプだ。

おまけに室内でオフィス・チェアとして使えるように、キャスターの付いた立派な脚が組み合わせてあった。破れやすいサイド・サポートの部分も綺麗に見えるし、たばこの焦げ跡などもないようである。

ただ、西武系とマツダ系という2つのインポーターや、イヤー・モデル、カスタム・オーダー色によっても異なるためハッキリしないのだが、1994年頃に輸入元が発行した資料によれば、V-SXの内装色の種類は5パターンもあった。名称はブリューム/レッド、グレイ/レッド+オーガン、サバン/グリーン、サバン/グレイ、サバン/ブルー。これが基本11色設定のあった外装色と、それぞれ色味が合うようコーディネートされていた。

ところが、よりによってリポート車両のサバン/ブルーという青い格子柄の内装は、ブルー・モーリシャスという外装色1色としか組み合わせのない、いちばんレアな仕様なのである。

伊豆田さんから送られてきた手紙の中のエグザンティアの運転席は、柄こそ同じだけれど、残念ながらリポート車とは色の異なる、赤い格子柄のものだった……。



便せんには幸い電話番号も書かれていたので、さっそく連絡を取ってみる。

話をしてみると、伊豆田さんは自ら手を汚すタイプのエンスージァストであることがすぐに分かった。長年ユーノス・ロードスターに乗り続けており、エグザンティアを購入したのは、20年近く前の2003年のことだったという。

手に入れたのは1994年型の初期モデル。グレードはリポート車と同じV-SXで、西武系のディーラーもの。ボディ・カラーはやはりリポート車とは異なり、レッドだったそうだ。すでに9年オチのユーズド・カーだったが、内装の状態はとても良かったらしい。

そして
伊豆田さんは購入直後に運転席をレカロに交換して乗っていたそうで、そのままエグザンティアを売却してしまった。そのため取り外していたオリジナルの運転席だけが、16年経った今も残っているという。

「スフェアを代えるなど手を入れてはいたんだけど、ハイドローリック・システムの不具合が続いて、4年でギブアップしたんですよ」と笑う。




現在のリポート車の運転席の状態は、座面の左右のグレーの生地に穴があいてしまっていたため、背面はオリジナルの青い格子柄なのに、座面は部品取りのアクティバ用という、柄も色も形状も違うニコイチ状態である。伊豆田さんの運転席を譲ってもらったとしても、座面をただ単純に置き換えるだけでは、柄と形状は揃うけれど色は青と赤なので、またしてちぐはぐなものになる。

現在のリポート車のシート。運転席座面のウレタンは補修済みなのだが、助手席もそろそろヘタリはじめている……。

ならば彼のシートの座面の生地を分解し、左右のグレーの生地のみを摘出。これと今は別途保管しているリポート車オリジナルの青い格子柄の生地をなんとか合体できれば、新車当時のシートが復活するはずだ! 僕はそう考えて、伊豆田さんに運転席をぜひ譲って欲しいと伝えた。

価格は脚付きの状態で2万円。ただしかなり重く大きいので、輸送費がけっこうかかる。そこで僕は関西方面に行く機会を待つことにした。


ところがその後、契約変更にともなって彼の携帯電話が一時繋がらなかったりして、連絡がうまく取れなくなってしまったのである。結局僕が滋賀の伊豆田さんの自宅を訪ねたのは、最初に葉書をもらってから半年後のことだった……。

次回はこの運転席を求め、はるばる滋賀まで向かった時の模様をご報告する。


文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=岡村智明/カークラフト/上田純一郎

■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX
購入価格 7万円(板金を含む2023年5月時点までの支払い総額は236万6996円)
導入時期 2021年6月
走行距離 17万4088km(購入時15万8970km)

(ENGINE WEBオリジナル)

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