2024.06.15

CARS

買って、使って、楽しめるクルマ! それこそがイタリア車だ!! もうすぐ生産終了のフィアット500のデザイナーが語る誕生秘話

雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、2008年12月号に掲載されたフィアット500(現行型)をデザインした。ロベルト・ジョリートさんのインタビューを取り上げる。ついに生産終了が発表されたチンクエチェント。復活デビューから長きにわたって人気維持した秘密はどこにあったのか。

新型500のデザイナー、ロベルト・ジョリートさんに訊く

新型500のデザインのベースは、2004年のジュネーブ・ショウに出品されたコンセプト・カー、トレッピウーノである。現在、フィアットとフィアット商用車のデザインの責任者という立場にあるロベルト・ジョリートさんは、当時フィアットのアドバンス・デザインのヘッドとして、そのトレッピウーノをまとめあげた。それは小さなグループで、若いデザイナーたちと議論を重ねながらの作業だったという。

1989年入社以来、フィアット一筋。現在フィアットの乗用車と商用車のスタイルの責任者をつとめる。当初はアドバンス・デザインに所属、93年のジュネーブ・ショウで発表したダウンタウンという電気自動車のプロジェクトに携わったのが初仕事。最近では、評価の分かれるムルティプラも手がけた。奇才です。

「最初からこういってました。いまの時代、もしフィアット500があったら、どのようにありえるだろうか、と。これこそ、決定的な新しい500のハートです。レプリカは避ける。これは古いクルマの翻訳ではない。新しいモダニティへのアプローチなのです。2番煎じではありません。われわれはオールド500をつくった会社と依然同じ会社なのですから、スクラッチからつくることになんの問題もありませんでした」

市販ヴァージョンの新型500はトレッピウーノから若干大きくなっていますね。

「05年5月にプロジェクトを見直しました。コスト面とつくり方の問題から、パンダのシャシーを使うことになって、トレッピウーノよりホイールベースを少しのばしました。でも、全長はのばしていません。フロントは削って、屋根はちょっとだけ伸びています。だからリアの傾斜が激しくなった。でも、丸型ヘッドライトとか、クラムシェル型のエンジン・フードとか、わかりやすい記号は変えていない。アッパーとロウワーのプロポーションは満足のいくものになりました。トレッピウーノは3人乗り、新型500は4人ですから、キャビンの大きさはぜんぜん違う。なのに、不自然な感じがしない」

こんなに成功すると思いましたか?

「トレッピウーノの評判が非常によかったので、確信はかなりありました。Webであなたのチンクエチェントをつくろう、と呼びかけたらけっこうな反響があって、ユーザーの好みもわかってきた。人間同様、ちょうど誕生9カ月前に、そういう調査をしたのです。成功した原因はあって、このクルマは飾りじゃなくて毎日使える。日常生活に入り込める、そういう感覚があります。ファッション・カーではない。ちゃんと4人乗れて全体に質感もよくなった。これまでフィアットを買わないようなひとにも魅力がある。単なるクラシックではない。デジタルのライカのカメラみたいに、機能は新しくなっても、スピリットは生きているんです」

500のスピリットとは?

「足すのではなく、引くことです」

禅問答みたいになってきた。私は思っていることをストレートに訊ねた。でも、レトロに見えますよ、と。

「レトロに見えるかもしれないけれど、フィアット・ファミリーの新しい一員と考えている。新型500はフィアットの典型的なベーシック・カーを狙った。それにいろいろなものを足していくようにした。そこが、ミニとの大きな違いではないか。新生フィアットとして、ノスタルジーよりは、イタリアらしさを生もうとした。買って、使って、楽しめるクルマ。エンジョイ・ライフです!」


これがオフィチーネ・アバルトだ!

元アバルト本社の隣、コルソ・マルケ34につくられたアバルトのショウルーム。車両だけでなく、チューンド・キットやパーツ、アバルト・マークの入った衣類や小物類も販売している。いまのところ、ショウルームだけで、ワークショップの機能は持っていない。日本でもこうしたショウルームが来年にはオープンするはず。



なお、1年半前にプロジェクトが立ち上がった新生アバルト&C.は、フィアット・グループの100%子会社で、CEOはフィアット・グループCEOのセルジオ・マルキオーネが兼任している。ナンバー2はアルファ・ロメオのブランド・マネージャー兼任のルカ・デ・メオ。写真左端のモノクロ写真の建物がコルソ・マルケ38の元アバルト本社。

(ENGINE2008年12月号)

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