2024.08.03

LIFESTYLE

履き古した靴を循環させる試み? 日本のシューズ・ブランドが始めた新プロジェクト「サーキュレーション」が注目されている理由とは?

リセールの品々。品質は申し分なく、価格もリーズナブル。とても魅力的。

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修繕して長く愛用する、次の履き手に渡す、従来の靴に新しい解釈を与える……。日本の靴ブランドのプロジェクトがいま話題にになっている。

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日本における革靴の歴史

西洋において革靴の歴史は長い。紀元前約3300年前に葬られ、アルプス山脈から発見されたミイラ“アイスマン”はすでに履いていたようだ。最初は歩行時の足の保護という実用性から始まったに違いないが、歴史が下って階級社会が生まれると革の質感やデザインが履く人の属性を象徴するようになる。やがてフォルムの改良やデザインの洗練により、ファッションの重要なアイテムへと進化した。

リペアは他のブランドも対応可能。オールラバー交換で8800円とリーズナブル。修理期間が比較的短いのもありがたい。

草鞋や草履、下駄が主流だった日本が革靴に出合ったのは江戸時代末期。袴にブーツを合わせた坂本龍馬の写真は有名だが、より切実に必要性を実感したのは1861年に江戸幕府が派遣した遣欧使節団だった。日本から草鞋を持参したものの、ヨーロッパで見た革靴の格式と実用性に圧倒され、すべて海に廃棄されたという。恐らくこの滞在時に購入されたものだろうが、4年後の渡欧ではすべて出発時から靴を履いていた。開国を経て明治維新以降、日本は世界が瞠目する勢いで文明開化を実現したが、公共の場における靴の普及も一役買ったと見ていいだろう。以来、欧米の名品研究に熱心な風潮もあり、多くの海外ブランドが並び、また優れた日本製も生産されている。

靴は使うことで完成する

エンダースキーマも国内外で評価を集めるシューズ・ブランドのひとつ。靴は使われることで完成するものという位置づけから、「サーキュレーション(循環)」というプラットフォームで行なうさまざまなプロジェクトを行っている。修理することで長く使うことを提案するリペア、新しい使い手へと繋ぐリセール、既製モデルの新たな解釈としてのカスタム、そしてレザーを使ったアイテムづくりの体験型ワークショップで構成される。このうちワークショップを除く3つを展開する実店舗が、恵比寿の直営店向かいにオープン。今年2月のオープンながら、早くも多くの顧客を集めている。

植物タンニン鞣しによるヌメ革は経年変化を楽しむのにうってつけ。エイジングの評価軸のなかで最上級の「パティーナ」という段階を設けてタグに明記。

ただ完成品のみではない、靴にさまざまな価値を付加するプロジェクトは、人類が肌に纏った最古の素材、レザーの新たな可能性を提案する。革靴の発達では後進だった日本から、実用、格式、ファッションに引き続いて生み出された循環というサステナブルな価値観。ショップとして立ち上がった「サーキュレーション」の今後に注目したい。

文=酒向充英(KATANA) 写真=杉山節夫

(ENGINE2024年7月号)

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