新たな機能美の追求──「インヂュニア・オートマティック」
▲「インヂュニア・オートマティック 40」自動巻き。40mm径。120時間パワーリザーブ。177万6500円。
形態はつねに機能に従う。アメリカの建築家ルイス・ヘンリー・サリヴァンの提唱は、バウハウスにも大きな影響を与え、その理念になった。無駄な装飾を省いた機能性は、ミニマリズムとともに現代のプロダクトデザインにおける源流となり、それはクルマも時計も変わらない。カー・デザイン界の巨匠ブルーノ・サッコがメルセデスで生み出した多くの名車しかり。そしてIWCでジェラルド・ジェンタが手がけたのが「インヂュニアSL」だ。
初代「インヂュニア」は1955年に誕生した。当時、技術革新が進むなか、研究開発や医療、製造などの現場は強力な磁気にさらされ、それは時計の精度にとっても大きな問題だった。これを解決するため、「インヂュニア」はムーブメントを軟鉄製のインナーケースで包むことで高い耐磁性を備えたのである。その先進性からドイツ語とフランス語で“エンジニア”を意味する名が授けられた。
1970年代、技術の進化とともに時代は新たなフェイズに入る。「インヂュニア」にも変革の気運が求められ、白羽の矢が立ったのがジェンタだ。その期待に応え、1976年に「インヂュニアSL」を発表。初代がシンプルなドレス系だったのに対し、ケースと一体型ブレスレットを備え、5個の凹みのあるねじ込み式ベゼルとグリッドパターンの文字盤といったスポーティなデザインは、以降のコレクションの原点になったのである。
▲ベゼルはねじ込み式からネジ留めに変更し、個体差があった凹みの位置も定位置にネジを配する。文字盤にはSLのシンボルだったグリッドパターンを復活。90度ずつずらした水平ストライプと台形の幾何学パターンで構成する。
「インヂュニア・オートマティック 40」の詳細はこちら
「インヂュニア・オートマティック40」は、このスタイルにインスピレーションを得ながら、人間工学に基づいたプロポーションとモダニティに磨きをかける。ケースはSLから0.5mmの拡張に止め、むしろ厚さは12mmから10.8mmに薄くしている。さらにラグ間の長さを45.7mmに抑え、ミドルリンクを設けて手首のフィット感を向上している。ブレスレットもテーパーをつけることでこれに寄与し、見た目の高級感も増している。
初代誕生から約70年を経て、デジタル機器に囲まれた現代の日常に磁気は特別なものではなくなった。こうした耐磁性に加え、高硬度と85%のリサイクル率を誇るエンジニアリングスチールの採用など見えない先進技術がデザインを次世代に繋げる。それはメルセデスのGクラスが初のBEV化を遂げたと同様に、新たな機能美の追求にほかならない。
▲従来、ステンレススティール・ケースのインヂュニアにはブラック、シルバー、アクア(グリーン)の3色の文字盤が組み合わされていたが、このほどブルー文字盤が新登場。
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スピードに対する人間の憧憬──「パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ」
▲「パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41 “MERCEDES-AMG PETRONAS FORMULA ONE™ TEAM」自動巻き。41mm径。46時間パワーリザーブ。212万3000円。
近年、F1人気が高まっている。背景には、SNSや動画配信でリアルタイムでより臨場感あるレースが楽しめるようになったことや、スプリント導入などエンターテイメント性の向上が挙げられる。開催国や回数が増え、とくにこれまで人気が浸透しなかったアメリカでも年間3レースが開催され、来年はブラッド・ピット主演の新作映画『F1』の公開も控える。こうしたファンの拡大には、環境対策など時代性を配慮しつつ、頂点技術への飽くなき挑戦とスピードに対する人間の憧憬があるのだろう。
そんな魅力を味わえる時計が「パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41 “MERCEDES-AMG PETRONAS FORMULA ONE™ TEAM」だ。
IWCは2013年から同チームの公式エンジニアリングパートナーを務め、コラボレーションモデルを発表している。ケース素材には特殊なチタン合金をベースにしたセラタニウム®を採用し、チタンの軽さと堅牢性、セラミックに匹敵する硬さと耐傷性を併せ持つ。セラミックベゼルとともにブラックで統一したスタイリッシュなフェイスは視認性に優れ、まるで計器のようだ。さらにカレンダー表示やスモールセコンドなどにさり気なく配したチームカラーのペトロナスグリーンがマニア心をくすぐる。
▲パイロット・クロノグラフのスタイルを崩すことなく、あえてペトロナスグリーンだけでコラボをアピールするセンスにIWCらしさが息づく。
ベースになったパイロット・クロノグラフは、その名の通り、大空での機能性から生まれたモデルだが、サーキットの世界観にも違和感はない。それも卓越した唯一無二の技術追求という点で両者は共通するからだろう。
この時計を着用したら、それこそAMGのステアリングを握り、走り出したくなるに違いない。圧倒的なパワーとそれをいなすドライビングの快感がより深く味わえる。さらに試したいのが、専用工具を使うことなくストラップを簡単に着脱交換できるEasX-CHANGEシステムだ。別売の交換用ラバーストラップにはペトロナスグリーンも用意され、まるでタイヤ交換のピット作業のようにスピーディにドライビング仕様にできる。そんな軽やかな遊び心も楽しめるのだ。
「パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41 “MERCEDES-AMG PETRONAS FORMULA ONE™ TEAM」の詳細はこちら
問い合わせ=IWC Tel.0120-05-1868
文=柴田 充 写真=奧山栄一 スタイリング=梶本美代子 編集=数藤 健
車両協力:メルセデス・ベンツ日本 Mercedes-AMG CLE Cabriolet / G 580 with EQ Technology Edition 1 https://www.mercedes-benz.co.jp/
衣装協力:メローラ(CONDOTTI) https://www.condotti.jp/
(ENGINE Webオリジナル)
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