2024.12.12

CARS

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SUVに求められる要素をしっかり満たしている 新しくなったルノー・アルカナに竹岡 圭さんが試乗した

ルノー初のSUVクーペとして登場した「アルカナ」がマイナーチェンジ。内外装のデザインや装備の見直しを行うとともに、F1やWEC(世界耐久選手権)で活躍するとともに、ミドシップ・スポーツのA110を輩出し、スポーツカー好きの心を鷲掴みにする「アルピーヌ」のエッセンスを採り入れた「エスプリ・アルピーヌ」と呼ばれる新しいグレードを導入した。そんな装いを新たにした新型アルカナに、「ルノー・メガーヌR.S.」を愛車に持つ、モータージャーナリストの竹岡 圭さんが試乗した。

昔RV、今SUV

ひと昔、いやすでにふた昔、いやもうちょっと前になるでしょうか、日本ではアルカナのようなSUVをはじめ、レジャーの相棒に相応しいクルマをひと括りにRVと呼んでいた時代がありました。レクリエーショナル・ヴィークルの頭文字から命名された「アールヴイ」はそれなりにヒットし、販売ランキングの上位に来ることが少なくありませんでした。ヘヴィ・デューティなSUVはクロスカントリー・ヴィークルの略称であるクロカンと呼ばれ、それ以外のライト・テイストなものがRV。そんな区分けだったように記憶しています。

優れた燃費性能もアルカナの大きな魅力。E-TECHフルハイブリッドはWLTCモードの社内測定値で22.8km/リッター、マイルド・ハイブリッドは17.0km/リッターとなっておいる。

ステーションワゴンからミニバンへ

その時代に、SUVスタイルのクルマとほぼ並行して主導権を握っていたのがステーションワゴンです。それまでは商用バンくらいの認識しかなかった利便性の高い荷室を持ったクルマたちが、若者を中心に人気を博していきました。

その後、同じく商用車くらいの認識しかなかったワンボックス・タイプの箱型のクルマが、スペース広々オウチのリビングがそのままクルマにやってきた~ の感覚で支持を得て、ファミリー・ユースのミニバンとして世の中を席捲するようになりました。子供に「クルマの絵を描いて~」と言うと、私が子供の頃はいわゆる3ボックス型のものを描いていた子がほとんどでしたが、最近の子供は四角い箱を描くのだとか。それくらいクルマに対する基本中の基本の認識が変化したということなのでしょう。

新型アルカナのラインナップは、E-TECHフルハイブリッドのアルカナ・エスプリ・アルピーヌE-TECHフルハイブリッドと、マイルド・ハイブリッドを積むアルカナ・エスプリ・アルピーヌ・マイルド・ハイブリッドの2タイプ。

取材車のボディ・カラーは、ホワイト・メタリックのボディとブラック・メタリックのルーフを組み合わせたブラン・ペルレM/ノワール・メタルM。

SUVじゃないと売れない

ここ10年くらいでしょうか、そんな時代を経てやってきたのがSUVブームです。このブームは意外なほど続き、もはやブームという言葉では片づけられない、いわゆる定番のカテゴリーとして認識されるまでに大成長を遂げました。もはやクルマはSUVじゃないと売れないと囁かれるまでになり、現在に至るというわけです。

しかし、なぜにこんなにもSUVが主導権を握ることになったのでしょう? まぁ、いくつも理由はあると思うのですが、私が子供の頃、つまり昭和世代は、クルマといえば3ボックスのカタチをしたセダンでした。なのでセダンに乗っていると、自分で頑張って購入したとしても、親のクルマを借りて乗っているように思われることが多かった。とにかくオウチのクルマ感が強かったので、それに対抗するがごとく「自分のクルマにするならワゴンだよね~」みたいな、セダンではないモデルを選ぶ風潮があったんです。ちょうどその頃、映画『私をスキーに連れてって~』とともにやってきた、一大スキー・ブームもその流れを押して、荷室の積載力や利便性ならこれに敵うものはないと、猫も杓子もワゴン・ブームが到来したんですよね。

黒を基調に青と白と赤のトリコロールを組合わせたアルピーヌ・テイストの内装。

百花繚乱SUV花盛り

それに対して、ミニバンで育った平成の子供たちは、アイポイントが高いクルマが当たり前の環境で育ってきました。その子たちが同様の理由で、オウチのクルマ、すなわちミニバンとは違う自分のクルマを選ぶとなると、同じくアイポイントが高めのSUVになるのが、ある意味自然でもあると思うんです。あくまで日本に限っての、しかもホンの一例だと思いますが、ここ近年、クルマと言えばSUVの図式、まわりを見渡すと必ず1台はSUVが目に入るという風景になりました。

するとどうでしょう。「人と同じはつまらない、やっぱりイヤなんだよね~」というニーズが出てくるわけです。とくに個性を重要視する欧州では、他人と同じなんて耐えられないでしょう。「まるっきり異なるものには抵抗があるけど、ホンのちょっとだけ人と違うのがいいんだよね」という考え方が強い日本でも、SUVのバリエーション拡大を求める声は多いようで、サイズ違いから始まり、定番の形態だけでなくさまざまな個性的なデザインが登場し、さらには、ほかのボディ形態と組み合わせたクロスオーバー型が生まれた。パワートレインもガソリンやディーゼル、ハイブリッドはもちろんのことEVも設定される……と、百花繚乱SUV花盛り状態になったのだと思われます。

フロント・シートは電動調整とヒーター機能付き。

大人が着座しても余裕がある後席。センター・アームレスト内にはカップホルダーが備わる。

新しくなったルノーのSUVクーペ、アルカナの詳しい情報はこちら!

アルカナはSUV、5ドア・クーペではない


さて、ずいぶんと長かった前置きはこのくらいにして、その百花繚乱SUVの中でも異彩を放っているのがルノー・アルカナなのであります。クロスオーバー型に分類される1台なのですが、あまりにもクーペ・ライクなデザインゆえ、SUVであることをうっかり忘れられているモデルだったりもします(笑)。そうなんです、最低地上高が高い5ドア・クーペだと思っている人も結構多いんですよね。それくらい半端なく個性的なデザインを誇っているのですが、これくらいアピール力がないと、埋もれてしまうと言っても過言ではないくらい、本当にSUVは増えたんですよね。そしてアルカナのすごいところは、見た目は半端なく個性的でも、中身はちゃんとSUVしてるってところなんです。

SUVの定義ってナニ? と問われると、答えは難しいのですが、代表的なものは悪路走破性だと思います。ちなみにアルカナの最低地上高は、しっかりと200mm確保されているんです。あの4×4専門メーカーとして名高いジャガー&ランドローバー社のレンジローバー・イヴォークの最低地上高は212mm。いかにちゃんと高さが確保されているか、おわかりいただけるのではないかと思います。

シートはサイズが大きく、ヘッドレストは固定式だが、どんな体型でもしっくりくる。

広い荷室とくつろげる室内

荷物の積載力もSUVに求められる要素ですよね。あくまでカタログ・スペックにはなりますが、またまた比較として勝手に数値を出して申し訳ないレンジローバー・イヴォークは472リッター。アルカナはE-TECHフルハイブリッドが480リッターで、マイルド・ハイブリッドが513リッターもあります。かなり広めのアンダーフロア・ボックスを備えていたりして、意外なほど利便性も高い。スタイリッシュな見た目とは裏腹に積載性能においてもしっかりとSUVに求められる要素を満たしているんです。

ボディは非常に伸びやかなスタイルのために長く見えますが、全長は4570mm。全幅も1820mmで街中での取り回しもバッチリな感じでして、オマケに全高1580mmということで立体駐車場もクリアするところが多かったりもします。つまり使い勝手がイイ。

ホイールベースが2720mmと長いので、リア・シートも広大とは言わないまでも、ロングドライブも快適に過ごせるスペースが確保されています。失礼ながら正直に言っちゃいますと、見た目からは想像つかないほど、しっかりくつろげる室内を持つSUVなんです。アルカナというと、モータースポーツ由来の技術がふんだんに生かされたE-TECHフルハイブリッドなど、ついついメカニズムの先進性に目が行きがちですが、ユーティリティ性能も実はすごく高いんですよね。

後席の背もたれは、右6:左4の分割可倒式。フロアボードを高い位置で使用すると、前席の背後まで床面をフラットにすることができる。

燃費だけじゃなく、走りも楽しめる

もちろん、E-TECHフルハイブリッドの技術は素晴らしい。とくに燃費がメチャクチャ良い。燃費性能ではなんと輸入車の中でナンバー3に輝いています。ちなみに1位はルーテシア、2位はキャプチャーで、どちらもアルカナと同じE-TECHフルハイブリッドのモデルです。つまりE-TECHフルハイブリッドが3位までを独占。この技術を販売台数の多い車種に展開したルノーは本当にエライと思う。さらには、パワートレインのダイレクト感も高い。走りもしっかり楽しめるのがE-TECHフルハイブリッドのいいところでもあるのです。「さすがはエスプリ・アルピーヌという名前ついてるだけのことはあるよね~」といった感じでしょうか。

ちなみに、新型アルカナには従来モデルに引き続き、1.3リッター直4ターボにモーターを組み合わせたマイルド・ハイブリッド・モデルも用意されています。マイルド・ハイブリッドもフルハイブリッドと同じアルピーヌ・テイストを盛り込んだエスプリ・アルピーヌになります。

走行状況に応じてエンジン、モーター、エンジン+モーターを使い分けるフルハイブリッドに対し、マイルド・ハイブリッドはあくまでもエンジンが主体でモーターがそれをアシストするというスタイルになります。エンジンならではの加速フィールが好み、常にエンジンの鼓動を感じていたいといった人にはオススメです。フルハイブリッドとより車両重量が90kg軽いため、クルマの動きも軽やか。それに価格が安価なのも魅力のひとつですね。

フロント・フェンダーには、エスプリ・アルピーヌの文字とアルピーヌの「A」をモチーフにデザインされたロゴが配されている。

シート表皮はフロントがTEPレザーとスエードのコンビ、リアがTEPレザーとなる。フロントの背もたれにはアルピーヌのロゴが配されている。

フランスのエスプリ

新型アルカナで日本初登場となった新グレード、エスプリ・アルピーヌは、モータースポーツで活躍するアルピーヌのキャラクターを採り入れたスポーティな仕立てが特徴になっています。アルピーヌの頭文字である「A」をモチーフしたロゴがあちらこちらに散りばめられるとともに、トリコロール・カラーが上手にあしらわれていて、オシャレなフランスのエスプリが味わえます。エスプリ・アルピーヌのドアを開けたらそこはフランスなのです。

アルカナでいつもの場所にお出かけすると、また違った景色が見えるかもしれません。

SUVの高い機能性と優れたデザイン性が高次元でバランスされているのがアルカナの魅力だと、竹岡さんは語る。

文=竹岡 圭 写真=茂呂幸正

(ENGINE WEBオリジナル)

新しくなったルノーのSUVクーペ、アルカナの詳しい情報はこちら!

車両重量は1470kg。

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