2025.02.12

CARS

2台持つとクルマはもっと楽しい! アルファ・ロメオ75とランチア・リブラ・ワゴンでイタリア車の濃〜い世界を楽しむ

アルファ・ロメオ75とランチア・リブラ・ワゴンに乗るオーナーのKさん。

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カルチャー・ショック

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その昔、東京の環八沿いにあったジヤクスで買ったアウトビアンキY10アバルト・ターボでカー・ライフをスタートさせたKさんは、イタリア車と釣りを愛するひとだ。

Y10は先代のA112の人気もあって日本ではアウトビアンキ・ブランドで販売されたが、欧州の一部ではランチアとして売られ、Kさんのクルマは「LANCIA」のステッカーも車体横に貼られていた。

「アウトビアンキでアバルトでランチア、いわばトリプル・ネームです。それが変に格好良く見えて……」


Y10ではカルチャー・ショックを受けたという。日本製のクーラーが付いていたのに全然冷えず、夏は日が昇ると全身汗だくに。でも、そのびっくりするくらい元気な走りは、若きKさんの心を貫いてしまった。

Y10から乗り換えたのはアルファ・ロメオ155の8V。フィアットのエンジン・ブロックをベースにアルファがチューニングしたヘッドを載せた16Vでなく、いわばアルファ伝統の4気筒のほうだ。もともとバイク乗りで、カワサキのツイン・プラグのチューニング・エンジンを知っていたから、アルファのツイン・スパークは気になっていた。



そしてこの155購入の際、以来四半世紀の付き合いになる盟友と出会う。販売店のスタッフだったこのひとのおかげもあり、気づけば155は75になり、さらに様々な縁に恵まれ、ギャラリー・アバルト自動車美術館の館長だった山口寿一さんをはじめ、信頼できる整備や板金の工房とも知り合い、今の2台目の75が維持できている、と彼は振り返る。

コの字型のサイドブレーキ・レバーやバック・ミラーのすぐ上、天井部にある前ドア用パワーウインドウ・スイッチが75のインテリアの特徴。

「もともとこの75は、ボルボの黄色に塗り替えられていたんですよ。でも施工が良くなかったのかガソリンがこぼれた時にまだらに……。山口さんにも相談して、この色に塗りました。アルファの純正色なんです」


これがまた前オーナーが装着したツェンダー製エアロと見事にマッチ。やはりアルファ純正だというホイールとのバランスも絶妙だ。Kさんは内装はほぼ手を付けていないが運転席だけレカロに交換している。

レカロの運転席以外、ほぼオリジナルの状態を保つ75の室内。普段はシートの生地が傷まないようカバーをかぶせている。

「75の魅力はなんといっても後輪駆動らしいハンドリング。ぜんぜん運転は上手くならないんだけどね」とニコリ。75は2台で27年間乗って今のクルマも走行距離は13万kmを超えたが、ここ数年クラッチ・マスターシリンダーなどが入手できず、ほとんど乗れなかった。取材当日は久々のドライブで、これからくたびれたタイヤも新調し、乗り回すのが今から楽しみだ、という。

フィッシング・エクスプレス


75を乗り継ぎながら、独立した友人の紹介でKさんは何台かのクルマとの出合いと別れを繰り返す。仕事場が遠くなり、移動が増えた75を温存するためと、なんといっても趣味の釣りのためだ。Kさんのフィールドは基本、海。ルアーで狙うのはサワラにヒラマサにカツオにキハダマグロ。近頃東京湾口に来るというクロマグロも釣りたいし、いつかは海外に出かけ、フライでキング・サーモンも狙いたい、と目を輝かせる。

まず並行輸入の1.7リッターボクサー・エンジン搭載の145が友人の店にやって来たのをきっかけに、アルファ・ロメオ2台持ちがはじまった。

「もともと145は新車の頃、買うかどうか悩んだクルマ。おまけに欲しかったブルー。今では後悔しているが、つい手放してしまい……」


75の車内には、まさにそのブルーの145のミニカーが今もあった。

「145の次は何にしようか考えていたら、フィアット・ウーノ・ターボを薦められて(笑)。でも、ちょうどその時にシトロエン・エグザンティア・ブレークも入庫してきたんです」



75という本命がいることを気遣っての、いずれも安価な売り物だった。でも、共に魅力はあるが、一筋縄ではいかないクルマだ。Kさんはエグザンティア特有のLHM漏れに泣き、遠方の港から這々の体で帰ってきたことを笑いながら話してくれた。同じように手頃なルノー・メガーヌ・クーペにも乗ったが、コーナリングの速さは納得できてもイタリア車好きの心には響かない。エグザンティアが限界に達しそうな頃、友人がまた仕入れてきたのが今のリブラ・ステーションワゴンだ。

積算計の針がすでに9万kmを超えているとは思えない美しいリブラの室内。

「リブラはエグザンティアより一回り小さくて、狭い漁港や釣り場に行くのに便利。でも、大きなクーラーボックスも釣りのロッドもしっかり載せられる。75が踏むとアルファらしくガーン! 
と勢いよく加速するのに対し、上品に穏やかに加速していくところはランチアだなぁ、と思う。僕はやっぱり、この時代のアルファやランチアが好きなんですね」

リブラ以降は、時期の重なる旗艦テージスもあったとはいえ、小型車が基本となってしまったランチア。8Vのエンジンを載せた75と同じく、リブラもまた、かつてのイタリアン・ブランドの個性を色濃く残した最後の世代だ。そういうところに彼は強く惹かれているようである。



Kさんの2台への思いは深い。75は不運にもトラックに追突されたが、レストレーションで著名な鈑金工房で荷室部を丸々別の75から移植して見事に蘇らせた。リブラは色褪せた車体を塗り直し、こちらもその筋では知られた修理工房でステアリング・ラック交換など、100万円以上を投じてリフレッシュさせた。

「目標にしているクロマグロなど大物が釣れたら、フィッシングは卒業して、2台持ちもやめるかも。そうしたら以前手放した145のボクサーが、乗り換えの有力候補かな」


そういってKさんは手元で145のミニカーを触り、名残惜しそうに2台を見つめた。いや、でもここまでの愛情から察するに、それはもう少し先のことになりそうである。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=岡村智明 協力=ガッティーナ

(ENGINE2025年2・3月号)

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