2025.02.14

CARS

「私なら門前払い」 ホンダと日産の経営統合破断会見を見て、国沢光宏氏(モータージャーナリスト)は何を思ったか

本田技研工業(ホンダ)と日産自動車(日産)の経営統合に向けた協議の破談が両車から正式に発表された2024年2月13日、ホンダはそのことだけを伝えるために会見を開き、また日産は2024年度第3四半期決算発表のなかで事実と経緯を伝えた。その会見を見たモータージャーナリストの国沢光宏さんはどのように感じ、何を思ったのか? 早速リポートしてもらおう。

advertisement



どっちもこりゃダメだ!

ホンダと日産の取締役会があった2月13日の夕方に、三部さんと内田さんは記者会見を行った。両方見た印象を書くと「どっちもこりゃダメだ!」。ただ日産はホンダの50倍くらいの酷さである。ホンダから三行半を突きつけたのも無理ない。今の日産が抱えるリスクを全く無視して、バラ色のような再建計画を出してきた。日産のリスクは4つある。順に説明していきましょう。



その1:売れるクルマを作れるか

内田さんの再建計画を聞くと、新型車を出せば業績は回復すると主張している。単に「出します」だと信用してもらえないと思ったのだろう。今後数年で出す新型車を具体的に紹介した。「新型車を出せば売れる」のなら、今までなんで出さなかったのだろう? 理由は簡単。出しても売れるかどうか自信なかったからだ。けれどこれから出すクルマは全部成功するらしい。

記者さん達は話を鵜呑みに聞いているらしく「売れる確証は?」とか「今までなぜ出さなかったのか」的な質問出ず。出すクルマ全てがヒットすれば確かに大幅利益をもたらす。特に高額車であり、販売奨励金も不要であれば儲かる。そんなクルマを作ってこなかったら苦境に陥ったのだ。内田さんの話を聞くと「出せば売れる!」。どこから超楽観論が出てくるのか不思議でならない。



その2:中国リスク

日産の重荷になっているのは中国市場である。日産も認識しているらしく、再建計画で発表した今後の予想販売台数は、全部「中国を除く」と説明された。つまり中国市場の赤字はリスクと考えていないということ。これ、どう考えても甘い! 日産は東風汽車と折半で中国に投資してきた。東風日産が赤字になれば、日産も負担しなければならない。

例えば工場稼働率。資本主義国は工場稼働率が落ちたらワーカーをリストラすればいい。されど共産主義国じゃそんなことできない(建前ですが)。おそらく日産に負担させることになるだろう。赤字になる可能性大。日産は「中国で生産したクルマを輸出する」と主張しているが具体的な輸出国も出てこない。というか、中国製のクルマを受け入れてくれる国は限られる。




その3:関税リスク

トランプ大統領はメキシコ工場製のクルマに対し関税を掛けると言っている。ホンダの場合、関税によって7000億円くらいのマイナス影響を受けると試算してる。なのに内田さんの再建計画に関税リスクの”か”の字もなし。再建計画が全て成功して何とか黒字というのに、かなりの確率で起きるだろう関税による4桁億円のマイナスを勘案しておらず。


その4:為替リスク

トランプ大統領はアメリカからの輸出を増やそうと考えている。当然ながらドル安方向にしたくなるだろう。今の日産の状況は円安によって何とかトントンに持ち込んでいる。140円を超える円高にでもなろうものなら、それだけ巨額の収益減要因。これまた再建計画で触れず、メディアの皆さんからも質問なかった。財政基盤がしっかりしているホンダからすれば穴だらけかと。

結論

結論から書くと「少し考えれば誰にでも解る大穴だらけの再建計画をよく取締役で承認したな」と感心しきり。皆さんシロウトじゃないでしょうに。自分でビジネスをやったことのある人なら、出資してもらうのがどれだけ大変か解ると思う。私なら4つのリスクを説明していない時点で門前払いです。しかも4つのリスクは高い高い確率だ。内田さん「成功するまで辞めない」だって。



文=国沢光宏

(ENGINE WEBオリジナル)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement