2025.03.29

LIFESTYLE

サブリナ・カーペンター&チャペル・ローンを聴く グラミー賞2025で圧巻のパフォーマンス!

18禁の単語を多用しても決して下品にならず、聴いていて明るい気持ちになれるのが彼女のキャラと歌の魅力。

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2月2日に行われた第67回グラミー賞。その最大の見どころは話題のアーティストたちによるライブ・パフォーマンスだが今年はその中でも眩い輝きを見せていた2人の若手スターに注目。

2月2日に米ロサンゼルスで開催された第67回グラミー賞授賞式。女性またはLGBTQアーティストの存在感が男性よりも際立つのはここ数年続く傾向だが、今年はそのなかでも特に新人(グラミーの基準で新人とされるアーティスト)たちが眩い輝きを見せていた。ここでは最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムなど2部門を受賞したサブリナ・カーペンターと最優秀新人賞を受賞したチャペル・ローンを取り上げるが、ほかにもラップのドーチー、UKの歌姫レイ、チャーリーXCXなど、圧巻のパフォーマンスで強い印象を残したのは若き女性またはLGBTQアーティストばかりだ。

サブリナ・カーペンターもチャペル・ローンも今Z世代の間で凄まじい人気の自作自演歌手。どちらも音楽性は明るくキャッチーなメロディが印象的なポップだが、それぞれ純粋に歌唱表現力が非常に高い。年齢も近く(ふたりとも20代半ば)、サブリナはチャペルの曲をカヴァーしたこともある。とはいえ歌詞内容とキャラクターはある意味対照的。もとはディズニーアイドルで10代の初め頃から女優としても活動してきたサブリナはユーモアセンスが抜群で、一言で書くなら“面白いコ”。小悪魔的でキュートだが、下ネタとジョークが大好きで、楽曲にもパフォーマンスにもそれを盛り込む才能に秀でている。ティーンが直面する恋愛のシリアスな悩み事もリアリティを残しながら明るいポップに転化する才能があり、だから心の傷ついたコたちもサブリナの明るい歌でそれを乗り越えることができるわけだ。そんな彼女にとっての最大のヒット曲が昨年の「エスプレッソ」。「帰りは遅くなるよ だって歌手だもん」と歌詞のなかであっけらかんと述べるあたりも軽い曲調にハマっていて、何度聴いても飽きがこない。エンパワーメント系のメッセージ曲が増えすぎる傾向にある昨今、それに対する疲れもあってか、下ネタOKのサブリナの軽みとユーモアのある表現が人気なのはよくわかるというものだ。



SABRINA CARPENTER
今回のグラミーでは、あたるべきスポットライトが自分にあたらないといったギャグを混ぜながらマリリン・モンローのように昨年の大ヒット曲「エスプレッソ」などをジャズバージョンで歌って会場を沸かせたサブリナ。昨年発表の6作目『ショート・アンド・スウィート』(ユニバーサル)はR&B調からカントリー調まで色彩豊か。18禁の単語を多用しても決して下品にならず、聴いていて明るい気持ちになれるのが彼女のキャラと歌の魅力だ。


一方チャペル・ローンはレズビアンであることを公言し、LGBTQコミュニティから強く支持されて人気を拡大したシンガー。生まれ育ったアメリカ中西部ミズーリ州は保守的な町で、ゲイの人をピエロと呼んだそうだが、故にチャペルは顔を白く塗り、グラミー賞のパフォーマンスではクィアの権利と解放を示すべくピエロたちと共に踊って歌った。そんなチャペルは同性同士の赤裸々な性愛や、世の中の不条理に対する怒りを、シアトリカルな見せ方と80年代的なサウンドでポップに表現。

恐れることなく声にする勇気と大胆さとユーモアと機転。これらが現代ポップアイコンに必要不可欠な要素なのだろう。



CHAPPELL ROAN
最優秀新人賞を受賞した際のスピーチで、レコード会社に対し、駆け出しのアーティストたちにも生活ができる賃金と健康保険を保障すべきだと求めたチャペル・ローン。2023年発表のアルバム『The Rise and Fall of a MidwestPrincess』(ユニバーサル)は昨年になって火がついた。キャッチーなメロディと80年代的なポップサウンドと力強いメッセージが融合。クィア・ポップをメインストリームに押し上げた作品としても高く評価されている。


文=内本順一(音楽ライター)

(ENGINE2025年4月号)

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