2025.03.16

CARS

ライバルを凌ぐ本物感 ランドクルーザー250のレクサス版GX550に日本で初めて試乗した

2023年6月に発表された日本初導入となるレクサスGX。日本ではまず2024年に先行販売モデルが限定100台で導入されていたが、カタログ・モデルは認証問題などにより発売が遅れ、ようやくこのタイミングで試乗が実現した。本格オフローダーのランドクルーザー250と機能面の多くを共有するレクサスの新しいSUVはどのような乗り味なのだろうか。モータージャーナリストの島下泰久が早速試乗した。

見た目のインパクト大

それにしてもインパクトの大きなルックスである。水平基調のボディライン、角度の立ったウインドウなどで構成されたスクエアなフォルムは、サイズの大きさもあって存在感抜群。道具的なテイストを感じさせる。一方で、ライトシグネチャーやスピンドルを彷彿とさせるフロント・グリル周辺の処理、横一文字のテールランプといったディテール、上質な仕立てによって、まさに「ザ・プレミアム・オフローダー」というコンセプトをそのまま体現している。これまでのレクサス車とは異質の雰囲気にディフェンダー、あるいはメルセデス・ベンツGクラスあたりがライバルとして浮かび上がってくる。



リアルなオフローダー

それは単なる見た目の話に留まらない。GXの車体はフレームが別体となったいわゆるボディ・オン・フレーム構造で、リア・サスペンションはリジッド。勘のいい人ならそのフォルムを含めて共通項を感じ取ったかもしれないが、実は開発は初期段階までトヨタ・ランドクルーザー250と一緒に行なわれていたという。要するに、中身もリアルなオフローダーなのである。

試乗車は100台限定のモデルと同じGX550“OVERTRAIL+”(オーバートレイル+)。外観は、片側10mmずつ拡大されたフェンダー内に、あえてインチダウンされた265/70R18サイズのタイヤを収め、ルーフレールも、より使い勝手の良いフローティング・タイプとなるなど、オフローダーとしてのテイストを前面に出したモデルである。内装もカーキ、ベージュなどを用いてアウトドア・テイストを強調している。



車体の大きさを意識させない

よじ登るようにして室内に入り運転席に腰を下ろすと、高い着座位置、切り立ったAピラーなどにより、雰囲気はまさしくオフローダーである。中央が凹まされたボンネット、縦型の大型ミラーなどのおかげもあり周囲の見切りは良く、車体の大きさを意識させないのが有り難い。

後席は着座位置がさらに高く、アップライト気味に座るかたちとなるが、スペースに余裕があるため十分にくつろげる。視界にも開放感があって居心地は良い。荷室は車両のサイズに対しては幅、奥行きともそれほど大きくはないが、高さがあるので容量自体は十分。ガラスハッチが独立して開くのも高ポイントだが、一方で荷室壁面の樹脂がむき出しなのはマイナスである。レクサス車なのだからここもカーペット張りにしてほしいところだ



3.5リッターV型6気筒ツインターボ

エンジンは3.5リッターV型6気筒ツインターボ。基本的にLX600と同じものだが、低回転域のレスポンスを重視した小径ターボチャージャーの採用により最高出力は353psに抑えられている。10段AT、そして当然ロー・レンジ付きの4WDシステムを組み合わせる。



フットワークの一体感に感心

走らせて感心させられたのは、フットワークの一体感の高さだ。操舵に対して反応が遅れることなく、素直に向きが変わっていく。

この時に大きな姿勢変化を伴うことがないのも美点である。非常に大きなサスペンション・ストロークを持っているにもかかわらず、オンロードでは落ち着いた挙動に終始するのは、電子制御ダンパーのAVS、そして電子制御式可変アンチ・ロールバーのE-KDSSの働きによるものだろう。



おすすめは「コンフォート」モード

一方で乗り心地は、揺すられ感がやや強めに出る。北米向けのオールテレインに対して、国内向けのタイヤが通常のオールシーズンとされることなどの影響もあるのだろうか。ゆったり落ち着いた感じとは言い難い。あるいは、洗練されているとはいえ、やはり出自はリアル・オフローダーということか。見た目に惹かれて、RXやNXと同じような気持ちで選ぶと面食らうかもしれない。

おすすめはドライブモードを「コンフォート」に設定すること。姿勢変化はやや大きめに出るようになるが、乗り味は当たりがマイルドになる。



加速は想像以上に豪快

動力性能に不足はない。加速は想像以上に豪快だ。特に「スポーツ」もしくは「スポーツ+」モードに切り替えると、室内には増幅されたサウンドが響き、迫力を一層増してくれる。低速域でのフレキシビリティも満足行くものだ。

せっかくマルチテレインセレクト、リア・デフロックも備えた“オーバートレイル+”なのに、今回オフロードは走れなかった。とはいえ、このクルマで悪路に臨むという人は、きわめて少数派だろう。

大事なのは、それだけのポテンシャルを秘めたクルマを操っているのだという満足感をしっかり得られるということ。見た目、乗り心地などからもそこはかとなく漂う本物感は、冒頭に挙げたライバルたちを凌ぐのは間違いない。

このレクサスGX、通常販売も近日中に開始となる模様である。



文=島下泰久

(ENGINE WEBオリジナル)

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