2025.04.28

LIFESTYLE

レコード・コンビニの上総屋ってなに? お宝探しからイベントまで楽しめるコンビニ レコード好き、集まれ!

レコードコンビニ Yショップ 上総屋 住所:東京都中央区日本橋浜町2-55-5-104 営業時間:7:00~23:00 日・祝日定休

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復活を通り越して、もはやブームと言えるレコード。アメリカでは2年連続でCDの販売枚数を上回っている。そして日本ではアナログ派が通うコンビニが人気上昇中。

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レコード・コンビニが生まれた理由

記録という原義の通り、レコードはもともと音声を残すことを目的としてエジソンが発明した。当初は円筒式で視覚障がい者用の機器だったが、ドイツで開発された円盤式が量産しやすいことから一気に普及。それまで生で聴くしかなかった演奏が記録されることで、音楽は限られた聴衆の特権から大衆の共有財産となる。ジャケットも単なる包装にとどまらず、ミュージシャンの世界を表現するアートワークへと洗練されていった。その後CDの隆盛で生産数が激減するも、配信が主流となったミレニアム以降、アナログならではの豊かな音が見直され、音楽媒体として再度チャートインを果たす。

最近注目を集めている「短冊」と呼ばれる縦長のシングルCD。日本特有のもので、8センチ・サイズのディスクと長方形のジャケットの組み合わせが「エモい」と人気。

レコード・コンビニと呼ばれる上総屋は、かつて花街だった日本橋浜町にある。大人の遊び場として毎日賑わっていたが、人口のドーナツ化で住民が少なくなったことから、1999年に酒屋からヤマザキショップへコンバート。以前と同様の家族経営で、現在は創業者の孫にあたる進藤康隆さんが店長を務めている。

道路に面したウィンドウ側にもシングルレコードの棚を設置。掘り出し物を探してジャケットを一枚ずつチェックすることも若い世代には新鮮なようだ。

古の花街に音楽が人を呼ぶ

進藤さんがもともとレコード好きなこともあり、店内でお気に入りのアルバムをかけ始めた。やがて評判が広がり、古物商の免許を取得して中古レコードの売買を開始。現在はカップラーメンやスナックと共に、シングルやLP、8センチCDが並ぶ。さらに毎週末にはDJイベントが開かれ、数十人規模のファンを集める。地下のスペースで開催されるDJ教室も、平日夜の開催にも関わらず、他県から通う人がいるほど人気だ。

毎週土曜日に開催されるDJイベント。

こうした活動の原動力のひとつが、進藤さんのコミュニティづくりへの熱意。子どもの頃はすでに花柳界ではなくなっていたが、地元に愛される個人商店が軒を連ねていた。ビジネス街となった今、街にその面影はない。特に東日本大震災を機に、進藤さんは地縁の薄さを痛感したという。だからこそ日用品を通じて生活の、音楽を通じて人と人とのつながりのインフラを、レコード・コンビニという形でつくりあげようとしている。

SNSの口コミを見て、レコード購入やイベント参加のため、海外からも客が訪れるとか。鑑賞だけでなく、体験し、初めて会う人と昂揚感を分かち合えることも音楽の醍醐味。伝統の町のコンビニは、レコードが記録以上に記憶をつくるツールだとあらためて教えてくれる。

文=酒向充英(KATANA) 写真=松崎浩之(INTO THE LIGHT)

■レコードコンビニ Yショップ 上総屋 住所:東京都中央区日本橋浜町2-55-5-104 営業時間:7:00~23:00 Tel:03-3666-6044 日・祝日定休

(ENGINE 2025年5月号)

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