今年もGW後半戦がスタート。天気も連日晴れの予報で、絶好のお出かけ日和が続きそうだ。今回は犬好きクルマ好きにとってのユートピアを紹介。ルノー/アルピーヌのスペシャリストとして知られる藤井照久さんが千葉県鴨川市に拠点を移して始めた、おすすめのカフェレストランだ。
都内から1時間半の楽園
愛犬とのドライブでも人気のスポット、東京湾アクアライン海ほたるPA。そこから橋を渡り、房総半島の中央部から南下する館山自動車道を走ること30分。鋸南保田ICを降りてすぐの、東西に走る長狭街道を鴨川方面に向かってさらに20分進むと、これぞ日本の里山という風景の中に「Hangar eight(ハンガーエイト)」が現れる。
2022年夏にオープンしたこのカフェレストランは、飛行機の格納庫のような建屋が特徴的だ。前面には掃き出しのデッキが広がり、その先には広々とした草地のフリースペースとドッグランが用意されている。
もともとここは近所に住んでいた外国人を中心としたイベントスペースとして運営されていたが、コロナ禍で閉鎖されてしまった。その再生を託されたのが藤井照久さんだった。
オーナーは自動車業界出身
藤井さんは自動車業界では知る人ぞ知る存在だ。F1の仕事に携わりたいとの想いから本田技術研究所に勤務。そののちに自らの理想を追求し、ルノー/アルピーヌのスペシャルショップである「SiFo(シーフォ)」をオープン。そのつながりからルノーF1チームのロジスティクス担当として日本GPの際に奔走してきた。筆者も以前から彼を知っていたが、こうした多彩な顔を持つことから「藤井さんはいったい何者?」と思っていたのが正直なところだ。
「縁あってこの場所のオーナーになりました。もともとこの格納庫は8ヵ国の人たちが関わってSDF(里山デザインファクトリー)として運営されていました。でもコロナですべてが止まりました。それまでいい雰囲気のコミュニティスペースとして機能していたので、もったいないと思っていたんです。そんな時に大家さんに声をかけられ、1年半かけてリフォームし、2022年夏にカフェレストランとしてオープンして今に至るという感じです」

当初は具体的な方針を決めず、リフォームを進めながら構想を練っていた藤井さん。しかし、飲食は外せないと考え、移住者の中で出張シェフをしている人物に声をかけた。
「彼の料理を食べて、やはりプロの仕事は違うと実感しました。サーキットをコンマ数秒も違わずに走るプロドライバーと同じで、どんな素材でも確実に美味しさを引き出し、安定した味を提供してくれます。ひとつ誤算だったのは、僕が彼の料理を食べられないこと。すべてお客さんに出しちゃいますから(笑)」

シェフは都内の割烹や天ぷら店等で修行し、オーナーシェフとしても腕を振るってきた一流の料理人。筆者がここを取り上げたいと思った理由のひとつも料理の美味しさだ。地元の素材を生かしつつ、余計な手を加えすぎない絶妙なバランス。その深い味わいを私は密かに“鴨川ヌーベルキュイジーヌ”と呼んでいる。