数々のアートワークやショーカーを手掛けてきた造形クリエーターが2年近く探し続けた「2代目前期型の4S、色はクレヨン」パナメーラ。パナメーラのどんなところが、彼の心を突き動かしたのだろうか。
心を撃ち抜かれた
一目惚れ……という言葉があるが、その対象は人だけとは限らない。

「2012~13年くらいの時ですね。当時、渋谷の富ヶ谷に通勤で通っている時に初代パナメーラを見かけたんです。キャララホワイトのGTSだったのですが、それが結構衝撃的で、スタイリングも音も含めて“もうこのクルマしかないな”って撃ち抜かれたんです(笑)。もちろんパナメーラの存在自体は知っていたんですが、本物を見たら自分の中にドンとハマった。そんな経験は初めてでした。でも環境もお金も整わなくて、実際に手にいれるまで10年以上経ってしまいました」
そう語るのは2018年型パナメーラ4Sのオーナーである飛鳥田嘉則さん。飛鳥田さんがパナメーラに惹かれた理由……それは仕事にも大きく関係している。
「子供の頃からモノ作りが好きで建築の仕事をしたかったんですが、0→1にするクリエーターは向かないと悟って。ならばそれをサポートする1→100の仕事をしようと、モックアップ・プロダクトの世界に足を踏み入れたんです」

飛鳥田さんはモックアップを手がける大手企業に入社し、当初は白物家電の開発を担当。程なくショーカー製作の部署に転属すると、有名自動車メーカーのショーカー、プロトタイプのモックアップを数多く手がけることとなった。
「楽しくて、すごくやりがいのある仕事だったんですが、どんなに腕を磨いても社内検討用で限られた人にしか見てもらえない。芸術家は他人の評価ではなく自分の内面を掘っていく作業ですが、職人たるもの人の評価を気にしなくなったら職人じゃないですから」
そこで一念発起した飛鳥田さんが門を叩いたのが、テレビ美術、CM、映画・テーマパークの造形物などを幅広く手がける有限会社ケンシアートだった。
ここでハンドワーク・クリエーターとしてのキャリアをスタートした飛鳥田さんは着実に実績を重ね、村上隆氏、名和晃平氏といった世界的なアーティストから依頼を受け、彼らの立体物の製作を担当している。

「どちらもプロフェッショナルなんですが、感性を求められる造形屋は美術寄り、一方で精度の高さが求められるモック屋は工業寄りなんですね。でも近年、造形屋にも精度の高いものが求められるようになった。そこでモックアップをやってきた自分の経験が武器になっているのだと思います」