2025.07.11

CARS

新型ゴルフRは本当にドリフトできるのか? 4WDホットハッチをGTIとサーキットで比較試乗!

日本上陸ホヤホヤの8代目のフェイスリフト版となる最新ゴルフR。

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4代目ゴルフ時代の2002年に「R32」として登場して以来、常にシリーズ最強の座に君臨してきたゴルフR。このほど、8代目のフェイスリフト版となる最新ゴルフRが日本上陸したのを機に、クローズド・コースで試乗会が開かれた。ENGINE編集部ムラカミがGTIと乗り比べながら、Rが目指す走りについて考える。

試乗コースはPEC東京

新型VWゴルフRの試乗会は千葉県木更津市にあるポルシェ・エクスペリエンス・センター東京で開かれた。まずはハンドリング・トラックでRとGTIを乗り比べながら試乗した後、スキッド・パッドでRのドリフト走行を体験。さらには、ダイナミックエリアに設えられたパイロン・コースでRとRヴァリアントのスラローム性能を試すという盛りだくさんの内容だった。

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この施設のハンドリング・トラックはこれまでも何回か走っているが、激しいアップダウンに加えて、ハンドリング性能を試すのに最適なS字の連続コーナーやニュルブルクリンクのカルーセルを模したバンクなどがあり、クルマの持つポテンシャルを試すのには絶好のコースだ。

まずは19インチのタイヤを履き、アダプティブ・シャシーコントロールのDCCも標準装着されたRアドバンスでコース・イン。インストラクターの乗るGTIの後について走り、徐々に速度を上げていく。S字では、わざと曲がりにくいラインを行く先導車の後をトレースするように言われたが、Rで追いかけると、まるでオン・ザ・レール感覚で走れてしまうから、特に難しいラインを走っているようには感じられない。



実はこれ、Rに標準装備されるRパフォーマンス・トルクベクタリングという秘密兵器のおかげだったということを後で悟るのだが、知らずに乗っている分には、とにかくクルマの挙動が安定しすぎており、まだまだ踏んで行ける感じがして、先導車つきで走っているのでは、まるで物足りないくらいだったのだ。



ところが、GTIに乗り換えてみると、なんと同じラインで走るのが必ずしもイージーなわけではないのだから驚いた。もちろん、GTIも高いハンドリング性能の持ち主で、曲がれないわけではないのだが、Rのオン・ザ・レール感覚とは明らかに違っていて、常にわずかなアンダーステアが感じられる。つまり、このアンダーステアを、Rは左右後輪のトルク配分を0-100%の間で変化させるRパフォーマンス・トルクベクタリングでまったく自然に消していたということになるわけだ。

健康優良児とヤンチャ

RとGTIは、そのほかの面でもずいぶんと味付けが異なるように感じられた。Rの走りはドシッと安定していて大人っぽい。顔色ひとつ変えることなく、それでいて信じられないような速度で突き進んでいくスポーツ万能、頭脳明晰の健康優良児という感じか。それに対してGTIは軽快感が強く、サウンドも派手ならスロットルのピックアップもややピーキーで、いい意味でヤンチャな味付けになっているようだ。

Rが333ps、GTIが265psというパワーの違いよりも、この味付けの違いが、どちらを選ぶかの決め手になるだろう。たとえば私なら、走りのことだけを考えたら、自分で運転している感が強いGTIの方が楽しいような気がする……などと考えながらスキッド・パッドへ。もちろん、ここで使うのはRだけだ。前輪駆動のGTIではドリフトしながらの定常円旋回はできない。では、前輪駆動ベースの4WDであるRではそれが本当にできるのか?





答えは、イエスである。電子制御の車両安定装置ESCをオフにし、エンジンの出力モードをS+に設定した状態でスキッド・パッドに入る。旋回しながら、タイヤを少し内側に向けた状態でアクセルを強めに踏み込むと、トラクションがリアの外輪に一気にかかってリアが滑り始める。滑るのに合わせてカウンターを当ててアクセルを微妙に操作し、ドリフト開始。

ただし、その状態でいると、4WDシステムが前輪にトルクを回してどんどん姿勢を立て直してしまうので、再び少しタイヤを内側に向けてアクセルを踏む込む。その繰り返しで、慣れればドリフト状態が繋がるようになってくるのだ。ポルシェ911みたいな後輪駆動ベースの4WDのように、深いアングルで見事にドリフトすることはできないが、これは目からウロコの体験だった。こんなことができるのなら、やっぱりRの方が楽しいかも。

次のスラロームでは、RとRヴァリアントの両方を試したが、ホイールベースの長いヴァリアントでも、想像以上に良く曲がるのに感心した。

というわけで、RかGTIかの結論は、来月、両方をもう一度借り出して、編集部のみんなとじっくり比べてみようと思います。お楽しみに。



文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン

■VWゴルフR
駆動方式 フロント横置きエンジン4WD  
全長×全幅×全高 4295×1790×1460mm  
ホイールベース 2620mm  
車両重量 1510kg  
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ  
排気量 1984cc  
ボア×ストローク 82.5×92.8mm  
最高出力 333ps/5600-6500rpm  
最大トルク 420Nm/2100-5500rpm  
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT  
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前後) 225/40R18  
車両本体価格(税込) 704万9000円  

■ゴルフGTI
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動  
全長×全幅×全高 4295×1790×1465mm  
ホイールベース 2620mm  
車両重量 1430kg  
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ  
排気量 1984cc  
ボア×ストローク 82.5×92.8mm  
最高出力 265ps/5250-6500rpm  
最大トルク 370Nm/1600-4500rpm  
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT  
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前後) 225/40R18  
車両本体価格(税込) 549万8000円

(ENGINE2025年8月号)

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