2025.08.12

CARS

ボルボ新型XC60に試乗 人気SUVの稼ぎ頭は安全性も快適性も進化し、ロングセラー確実! 

新型ボルボXC60のB5はキラキラと輝くグリルが特徴で879万円~。上位の“ウルトラT6 AWD PHEV”は艶ありの黒となる。価格は1029万円~。

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上陸から7年目を迎えるボルボXC60が、フラッグシップのXC90と共通のグリルや大型ディスプレイの採用など内外装をアップデート。さらに新たな小食の新心臓も得たという。して、その仕上がりは?  エンジン編集部の上田が試乗会に参加した。

フルモデルチェンジは7年ぶり

ボルボの全生産車の約3割を占めるというまさに稼ぎ頭たるXC60は、ここ日本でもXC40に次ぐ息の長い人気者だ。そのため凝った斜行する新グリルや、大型のセンター・ディスプレイの装備などに加え、ボルボのフィロソフィーである安全性も、運転アシスト中にドライバーがステアリングを保持しない場合、自動停止する“エマージェンシー・アシスト・ストップ”の追加など、新しさをあちこちで感じさせる、2018年の上陸以来の大きな改良が施された。

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日本仕様はマイルド・ハイブリッドのB5がFWDと4WD、プラグイン・ハイブリッドのT6が4WDのみの計3グレード。最初に試乗したのはB5の4WDだ。


エンジンも大幅改良

ボルボは2030年に目指していた完全電動化への歩みの速度を若干抑えており、その一環か、B5エンジンにも手が入り、今回はミラーサイクル化された。

振り返ればXC60は元々ダウンサイジングの2リッター過給ガソリン/ディーゼル・ユニットを搭載していたが、ディーゼルが廃止になり、ガソリンもベルト駆動式スターター兼発電機によりマイルド・ハイブリッド化。そして、さらにエンジン自体大幅に手が加えられた。



可変ノズル・タービンのターボ採用によりミラーサイクル化の出力低下を補い、ピストンや吸気マニフォールド、オイル・ポンプを変更。WLTCモード燃費は14.3km/リッターを達成した。実際、高速巡航でならリッター14kmくらい余裕だったと聞いていた。

実際、今回は混み合う街中から高速、峠道と省燃費走行を一切せず走ったが、最終的に燃費計の数字は11km/リッターを一度も下回らなかった。高速巡航時の瞬間燃費計を見る限り、淡々と走ればさらに小食傾向なのは間違いない。

でも、燃費よりもこの新心臓のもたらす身のこなしの軽快さと、アイシン製8段ATの変速の小気味よさが印象深かった。制御がさらに進んだ感じで、市街地での加減速が意のまま。ほどよくスポーティでイキがいい上に、振動やノイズなど雑味の角がきれいに丸められているのもいい。

ただ19インチを履く足の動きはエア・サスペンション(B5は33万円のオプション)ながら、補修の多い田舎道ではもう少ししなやかさが欲しい。同じB5でもさらに重く大きいXC90だと欧州では標準となるフロントの純機械式FSD(周波数感応式ダンパー)が、XC60に今のところ設定がないのは惜しいと思う。


プラグイン・ハイブリッドのT6

途中でプラグイン・ハイブリッドのT6に乗り換えると、機構的には従来のままのはずだが、エンジンの主張が減るのと同時に、ぐぐっと車体を押し出すモーターの大トルクが明確に感じられる。

ハイブリッド/パワー/ピュア/オフ・ロード/AWDと5種あるモードをパワーにすると、B5の軽快さとは違う、踏み込みに応じてスムーズかつ強烈な加速もやって来る。ただ、足の仕立ての傾向はB5と同じだ。



T6はエア・サスが標準だが、B5より重量が250kgも重い2.2t級でしかもタイヤは21インチだから、けっこう引き締まっている。その分峠道ではパワー・モードを多用してもアクセルを踏めるのだけど、燃費は9km/リッター前後に留まった。ここは外部電力を得られるプラグインゆえ、単純な比較はできないけれど。

新しくなったXC60を表すのには“正常進化”という言葉がよく似合うな、と僕は思う。ライバルを横目に熟成不足で世に出てしまい、短いモデルライフで生を全うするクルマが多い現代においてはなかなか希有なことだから、これはうれしいことである。



文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=阿部昌也

(ENGINE2025年9・10月号)
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