2025.08.18

CARS

かたや2億円 こなた6000万円 ともにタイプ964のポルシェ911を専門に手がけるアメリカの「シンガー」とイギリスの「セオン」という2ブランドを比較する!

これがイギリス流!? タイプ964のレストモッドを手がける「セオン」を知っていますか?

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ポルシェ911のよさをできるだけ守る


そうしたなかで興味深かったのが、セオンはカーボン・コンポジット製のタブを用いてボディを補強している点にある。

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実はシンガーもカーボン・コンポジットでボディを補強しているが、対象となるのはカブリオレのみで、クーペには補強を行わない。いっぽうのセオンはタルガとクーペの両方に、カーボン・コンポジット製タブによる補強を実施しているという。



ここでいう“タブ”はバスタブに由来するモータースポーツ用語で、一般的にはモノコックのことを指す。もっとも、セオンの創業者ホーリーは「911のスチール・ボディには手をつけずに、タブで補強する」と語っていたので、F1で用いられるようなカーボン・モノコックでオリジナルのボディ・シェルを置き換えてしまうわけではなさそう。

いっぽうのシンガーはオリジナルのボディ・シェルにカーボン・コンポジットのシートを貼り付けて補強していた。

もっとも、シンガーのターボ・クラシック(クーペ・ボディ)を公道で試乗した範囲で言えば、ボディ剛性の不足は一切感じなかった。それどころか、足まわりはかなり硬めの設定とされていたにもかかわらず、その入力を跳ね返すような頑丈さも感じられて、実に頼もしかった。

エンジンのスペックも微妙に異なる。私が試乗したシンガーのターボ・クラシックは排気量を4リットルまで拡大したうえで、バリアブル・ジオメトリーの最新型ターボチャージャーを2基装着。ボッシュの最新エンジン・マネージメントと組み合わせることで最高出力は510psを発生するという。シンガーでは、これ以外に4リットルの自然吸気フラット6をラインナップしているほか、DOHC4バルブ・ヘッドを水冷化したユニットなどを手がけている。ギアボックスも、エンジン・パワーに応じてポルシェ製の5段と、リカルド製6段のマニュアルを使い分けている。



いっぽうのセオンは、3.6/3.8/4リットルと3種類の排気量を用意。自然吸気だけでなくスーパーチャージャーもしくはターボチャージャーを装着することも可能という。



ここまでをご覧になっても、決定的な違いは見当たらないというのが率直な印象ではなかろうか。そこでホーリーに「シンガーとの違いはなにか?」とストレートに訊ねると、「シンガーはポルシェをリイマジン(『再考する』の意味)していますが、私たちはポルシェのよさをできるだけ守りたいと思っています」との答えが返ってきた。



なるほど、内外装の仕上げを見ると、独自性が強いシンガーに比べるとセオンのほうがオリジナルの面影がよく残されているようにも思える。こういった思想の違いが走りの面でどのような影響を及ぼしているのかも興味深いところだ。

ちなみにシンガーのターボ・クラシックは作業と部品代などで2億円程度を要するのに対し、セオンのほうはおよそ6000万円がスターティング・プライスとなる模様。企業としての規模も大きく異なっていて、シンガーが前述のとおり年に100台ほど手がけているのに対して、セオンは年産5〜6台に留まっているようだ。

文=大谷達也

(ENGINE Webオリジナル)
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