2025.09.14

CARS

設計のコンセプトはワイド&ロー どこからでもスーパーカーを眺めて暮らせる「スポーツカーのような家」 ポイントは天井の高さにあり!

建築家に設計を依頼した時に要望したのは「クルマ8台(所有は12台)、バイク7台、自転車4台を収納でき、平屋で、リビングからクルマを眺められる家」だった。

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スポーツカーのような家

この建物の居心地の良さを生み出す主な要因のひとつは、「ワイド&ロー」という建築コンセプトにある。山縣さんは設計段階において、Sさんのカーコレクションを綿密に観察し、洗練されたデザインと低い車高が織りなす独特の美しさに着目。その横長のプロポーションを建築空間にも取り入れることとした。

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そこでクルマの大きさや回転軌跡などを検討し、クルマのための12m四方の正方形と、居住空間のための21m四方の正方形を敷地内に配置するプランを策定した。

その際、住居部分には大きさの異なる4つの中庭を内側に設け、プライバシーを確保しながら明るく快適な住空間を実現している。さらに、ガラス面を巧みに配置することで視線の“抜け”を創出し、リビングやダイニング、そして寝室からもガレージに置かれたクルマを眺めることができるようになっているのだ。

「朝起きたらクルマが見える。本当にどの部屋からも見えるんです」

和室、廊下、ダイニングのそれぞれから、異なる自然の景色を楽しむことができる。

面白いのは、仲間が集まって過ごすことも多いSさんのライフスタイルに合わせて、居住スペースは、リビングとダイニングからなる空間と、寝室やバスルームなどからなるプライベート空間を2つに分けていることだ。

さらに、そこを繋ぐ廊下をヘルメットや写真、本などSさんの趣味の物をディスプレイするギャラリー・スペースに充てることで、扉で仕切らずとも両スペースを分ける、良い緩衝地帯となっている。

そしてワイド&ローの“ロー”を表現する梁と天井の低さもまた、この建物の不思議な居心地の良さを解き明かす、大事な要素となっている。

「打ち合わせをした時に『カイエンより大きなクルマに乗る可能性はありますか?』と聞かれて、ないと思うと答えたら、ガレージの高さが1950mmになっていた。今思うと2000mmにしとけばGクラスも入れられたんだけどね」

奥の壁面は収納スペースとして有効活用されている。

とSさんは笑う。確かに普通に考えれば天井は高い方が気持ちいい、と思ってしまうところだが、この1950mmという高さが居住部分にも採用されていることで、まるでスポーツカーのコクピットに収まったかのような心地よい包まれ感と安心感を生み出している。さらに、天井の高いリビングやダイニングとの対比が、この特徴をより一層際立たせている。

家にいる時間が増えた

「ひと言で表現すると『自分自身の歳を感じさせない家』だね」

マクラーレンを背景にリビングで寛ぐSさんはそう表現する。

「常にワクワクする家なんですよね。今、リビングにマクラーレンを置いていますが、フェラーリに替えると雰囲気がガラッと華やかに変わります。またGT3RSを入れるとピリッとした緊張感が生まれるんです。ガラス張りなので360度いろんな景色を楽しめますし、中庭の木々の四季折々の変化も堪能できます」

ガレージからの連続性を演出する低い梁と高いリビングの天井が、照明や自然光の陰影を効果的に活かし、空間に奥行きを生み出している。

この家が完成して、今年の夏で3年を迎えるとのことだが、もちろんその出来栄えには満足しているとSさんは話す。

「窓が多いので、確かに西日の影響はありますが、シェイドを閉めれば問題ありません。設計段階から温度管理にこだわり、断熱材には吹き付けの発泡ウレタンを使用し、窓はすべて二重ガラスにしました。その結果、気密性が良く、4基あるエアコンを最大出力で使用したことは一度もありません。フローリングの質感も気持ちよくて、普段は裸足で過ごしています。ちょうどコロナ禍と重なったこともありましたが、この家が完成してからは、本当に家で過ごす時間が増えましたね」

前篇【8台のスポーツカーと7台のバイクが並ぶ理想のガレージ! 最初の1台はフェラーリ360モデナ、ただ眺めるだけで心がワクワクした】では、Sさんの圧巻のコレクションを紹介している。

文=藤原よしお 写真=岡村昌宏(CROSSOVER)

(ENGINE2025年8月号)

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