2025.09.23

CARS

まるで双子コーデ? 新旧の「ポルシェ911S/T」が現る カスタム&レストアで再現した栄光のル・マン・ウィナー

こんなポルシェ911を新車でオーダーをしてみたい!

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ポルシェが2台の911S/Tを製作した。モチーフとなったのは、いずれも1972年のル・マン24時間でクラス優勝を果たした仕様だ。

何よりもオーダーするひとのセンスが問われる


901世代のポルシェ911S/Tは、まさしくル・マン・ウィナーの現車そのもので、米サンフランシスコ近くの納屋で朽ち果てているのが発見された。



レース参戦記録は1975年、ニューヨーク州リバーデイルで出走したのを最後に途切れ、その後2人のオーナーの元を渡り歩いたことは判明していたが、以降の足取りが途切れていた。

その状況に変化が訪れたのは2008年。いわゆるバーン・ファインドされる手がかりが見つかったのだ。すると2013年、スイスのコレクターがこの911S/Tのレスキューに乗り出し、カリフォルニアへと飛ぶ。しかしもはや容易にレストアできないコンディションで、独シュトゥットガルトのポルシェ・クラシックのエキスパートに助力が依頼された。



2.5S/Tの残骸とでも呼ぶべきそれは、ツッフェンハウゼンのポルシェ・エクスクルーシブ・マヌファクトゥーアへ運び込まれる。伝説的な911は全面的なレストアが必要な状態で、まずは分解と塗装剥離に始まり、ボディは治具で矯正。欠損パーツは慎重に更新し、オリジナルの板金ゲージや図面をもとに新規起こししたコンポーネンツも少なくない。ボディ・ワークだけでも、1000時間以上が費やされたという。



その成果を長期的に維持するため、車体には現代の量産車同様にドブ漬けで行う最新の陰極防食コートが施された。ボディ・カラーは、当時と同じカラー・コード“117”のライト・イエローで、2年半かけて2016年に再生されたゼッケン41は、44年の時を超えて新車時の姿を取り戻した。



この901のレース・カーを、現行の911S/Tで再現した仕様も製作された。このクルマのオーナーは、特注プログラムの“ポルシェ・ゾンダーヴンシュ”によるもの。まず、数十年ぶりにポルシェのパレットに復活したコード“117”のライト・イエローで全身を塗られるのだが、ここに大きな問題があった。



992世代のS/Tは、911GT3 RSのツーリング・パッケージに軽量なカーボン・パネルを標準装備化したような仕様だが、隠蔽力の弱いライト・イエローでその地肌を隠すのには、ゾンダーヴンシュのエキスパートたちも手を焼いたのだ。その課題を解決したボディには、元ネタの901S/Tと同様のリバリーが加えられ、ゼッケン・サークルには41の数字も記された。



ホイールはダーク・シルバーの鍛造マグネシウムで、ブレーキ・キャリパーはブラック。インテリアもブラックを基調に仕立てられた。エンジンはベース車のままだが、最高出力525psを発生する4リットルの自然吸気フラット6は、1380kgの車両重量なら十分以上だ。トランスミッションは、6段MTを組み合わせる。

レース・カーのレプリカは、カスタマイズでは定番手法だが、D.I.Y.や社外ファクトリーが手がけるすると、ベース車の価値を下げるクオリティになりかねない。



ところがゾンダーヴンシュが手がければ、クオリティは純正レベルに仕上がり、しかも保証も受けられる。旧車のボディ・カラーを忠実に再現することも可能だ。クリアすべき問題は、コストと、モチーフや仕様を選ぶオーナーのセンスくらいのものだろう。

文=関 耕一郎

(ENGINE Webオリジナル)
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