突き抜けた、極上のV8ランボルギーニ第2のHPEV(ハイ・パフォーマンス・エレクトリファイド・ビークル)にしてウラカンの後継モデル「テメラリオ」。1万rpmまで鋭く吹け上がる新型V8の全開走行から、軽量仕様「アレジェリータ」の試乗まで、その真価をエンジン編集部 サトウがリポートする。
先代ウラカンと違う感動と高揚感
テメラリオの音をどう表現すればいいのか──。あの日以来、ずっと悩んでいた。
7月中旬、ポルトガルのエストリル・サーキットで初めてそのステアリングを握ったとき、テメラリオのエンジン・サウンドは先代ウラカンが積む自然吸気V10とはまったく違う感動と高揚感を私に与えてくれた。だが、それをどう言葉にして伝えればよいのか。試乗当時は、答えは見つかっていなかった。もちろん、試乗だけでなく、各部門の責任者によるプレゼンテーションまで用意されていて、国際試乗会そのものはとても充実した内容だったのだが──。
エストリルのピットロードに並んだテメラリオを間近で目にしたとき、まずその造形に圧倒された。これまでのランボルギーニが強調してきた重量感や荒々しさとは異なり、軽快さと俊敏さを前に押し出したデザインだと直感したからだ。


デザイン責任者のミティア・ボルケルト氏は笑顔でこう語ってくれた。
「テメラリオは、レヴエルトの“若くて反逆的な妹”なんです。もっとコンパクトで、もっと自由。軽快で、ドライビングプレジャーに溢れた存在として企画しました」
さらに彼は、デザインの核となる哲学をこう表現する。
「キーワードは“エッセンシャル&アイコニック”です。必要最小限の線で本質を際立たせ、それでいて誰が見てもランボルギーニだと分かるスタイルを目指しました」
実際、クルマ全体を貫く六角形モチーフは単なる装飾ではない。ボルケルト氏はそれを“言語”と呼ぶ。ヘッドライト内部のシグネチャー、吸気を効率よく導くサイドインテーク、テールのグラフィック。繰り返し現れる六角形は、光と空気の流れを整え、そのまま性能に結びついている。

「六角形は、ビートのようにリズムを生むんです。形が繰り返されることで、視覚的にも感情的にも音楽のように響く。私たちはこれをただの装飾ではなく、感情に働きかける言語として使っているのです」
リアはさらに印象的だ。高く掲げられたエキゾースト・パイプと露わになったエンジンは、彼が敬愛する日本のスーパースポーツ・バイクを想起させる。「見せるための意匠」ではなく「機能が必然として形を決めた結果」であり、冷却や空力の要件がそのまま造形に置き換わっているのがよく分かる。

実際にキャビンに身を沈めてみると、その思想ははっきりと伝わってくる。低いシート・ポジションや航空機を思わせるトグル・スイッチなどを備え、操作系は視線を大きく動かさずに手が届き、スイッチのクリック感も明快。六角形の言語はシートのステッチやUIグラフィックにまで及び、ドライバーは視覚と触覚を通して操縦している感覚を味わうことができるというわけだ。
