2025.10.27

CARS

ウラカン後継、「テメラリオ」試乗 V10の咆哮は超えられるか? ランボルギーニのV8ハイブリッドが放つ“新しい音”


原点は「ホンダS2000」

しかし、テメラリオの真価は外見だけでは終わらない。開発責任者のルーベン・モール氏は「模倣を良しとしない反逆者のDNA」を強調し、新たに開発した4リッターV8ツインターボに3基のモーターを組み合わせたパワーユニットを開発。合計920psを発揮し、最高回転は1万250rpmに届くことを目指した。

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このV8は、ランボルギーニ初となるホットV構造を採用し、ターボをシリンダーバンクの内側に収めることで熱効率とコンパクトさを両立した。潤滑方式はレーシングカーと同じドライサンプ。軽量かつ高剛性のパーツも惜しみなく投入されている。そしてモール氏はこうも語る。

「このエンジンは7000rpmを超えてからが本番です。多くの人はその前にシフトしてしまう。でも面白いのはそこから先なんです」エンジン単体で9000~9750rpmに達し、最大800psを発揮。さらにモーターのアシストが加わると、レスポンスは途切れなく伸び、1万250rpmまで駆け上がる。ターボでありながら電動との組み合わせで、ラグをほとんど感じさせないのも大きな特徴だという。



さらに彼は自身の原点を振り返る。

「ホンダS2000が登場したとき、本当に衝撃でした。自然吸気で9000回転まで回るなんて……。S2000は、走りの刺激とは何かを私に教えてくれたんです」

彼が求めたのは、高回転の快感を別の手段で再現すること。S2000が純粋な吸気で達成した領域を、テメラリオではターボとモーターで描き直したのである。

そして、そのパワーをクルマ全体に調和させるのが統合制御システム「LDVI2・0」だ。アクセル、ステアリング、ブレーキといった入力をリアルタイムで解析し、エンジンやモーター、サスペンション、ブレーキ、トルクベクタリングを一斉に協調させる。モール氏はこれをオーケストラの様だと例え、こう続けた。

「大事なのは、ユーザーがすべての技術を完璧に使いこなす必要はないということです。“このクルマならできる”と知っているだけで特別な気持ちになれる。これこそが私が思うパフォーマンスの民主化です。誰もが簡単に、最高レベルの性能を味わえるようにしたいのです」

剛性の高さはすぐにわかった

いよいよテメラリオのステアリングを握る機会がやってきた。試乗プログラムはプロドライバーの先導走行に連なるかたちで行われた。

1周目は完熟走行となり、コクピットの操作系を確認しながらブレーキングポイントを頭に入れる。シート位置は低いが視界は広く、フェンダーの盛り上がりが車体の位置をつかみやすくしてくれる。キャビンは後方視界こそ割り切りが効いていたが、その分、前方に集中できる作りで、走りに没入しやすいコクピットという印象だ。

2週目からはスピードを上げて走行モードをデフォルトの「ストラーダ」から「スポルト」、さらに「コルサ」へと切り替えていく。



第1コーナーはストレートエンドからの強い減速が必要な右コーナーだ。ここでは思いきりブレーキを踏んでも車体は安定し、ステアリングを戻す操作も最小限で済む。第3コーナーはタイトなヘアピン。ここでは立ち上がりで電動モーターが加速を後押ししてくれ、途切れのない推進力が背中を押してくる。続く第6コーナーは緩やかに曲がり込む左の中速コーナー。そこで自然にノーズがインへと入り、想像以上に素直に向きを変えていくのが印象的だった。

ボディ剛性の高さも際立っていた。高速で切り返しが続くS字区間に飛び込んでも、車体がよじれる気配はまったくない。新しいフレームはウラカン比で20%以上ねじり剛性を高めたというが、その効果がはっきりと伝わってきた。さらに駆動力はトルクベクタリングにより状況に応じて左右に最適配分されるから、フロントタイヤの負荷を抑えつつ、ノーズを自然にコーナーへと向かわせる。

そしてホームストレートに戻り、アクセルを全開にするとテメラリオの本性がいよいよ顕になる。ターボとモーターの力が一斉に解き放たれ、タコメーターの針は一気に跳ね上がる。8000rpmを超えた瞬間から世界がガラリと一変し、排気音は力強さを残しながら鋭さを増し、9000rpm近辺では金属を切り裂くような高音へと変わる。さらに1万回転に迫ると、もはやただの排気音ではなく、澄んで鋭い響きとなって胸の奥まで響いてきた。

また軽量仕様「アレジェリータ」にも試乗することができ、こちらはまったく別のキャラクターを見せてくれた。チタン製エキゾーストとカーボンパーツで約25kg軽く仕上げられた車体は、動き出しからしてスムーズだ。ターンインの応答は鋭く、コーナー出口ではリアが軽く流れても、専用のトラック走行用タイヤが素早くトラクションを回復する。標準仕様が安定感と余裕で魅せるなら、アレジェリータは攻める楽しさを倍増させてくれる仕様だと感じた。

走行モードを振り返ると、「ストラーダ」は落ち着いた乗り味が際立ち、「スポルト」は加速とシフトの反応が一段と鋭くなる。そして「コルサ」に切り替えると、入力に対する遅れがほとんど消え、車体の動きは鋭さと安定感を同時に示した。今回はサーキット走行のみだったため、街乗り用の「チッタ」を試すことはできなかったが、カタログ上は、約10kmのEV走行が可能とされている。



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