2025.10.17

CARS

かつてのメルセデスの威厳は蘇るのか?【アールデコ様式とクラシカルなグリルと先進技術の融合】その名は「ヴィジョン・アイコニック」

フォルムと内装はイイが、賛否両論ありそうなのはこのグリル!

全ての画像を見る
メルセデス・ベンツの新たなコンセプト・カー「ヴィジョン・アイコニック」は、威厳ある風貌への回帰を予感させるデザインと、先進のテクノロジーが共存する、未来への提案だ。

センチュリー・クーペに続きメルセデスも旗艦クーペが復活か


なんといっても目を引くのが、フロント・エンドの巨大なグリル風デザイン。

advertisement




電気自動車の新型「GLC」で導入されたそれを、メルセデスは“アイコニック・グリル”と呼ぶ。W108やW111、600プルマンといった往年のモデルが備えた、直立したクロームのグリルに着想を得ているとのことだ。



そしてもう1つ、ボンネット先端にはイルミネーションを仕込んだスリー・ポインテッド・スターがそびえ立つ。最近は衝突安全性の観点から姿を消しつつあるが、やはりメルセデスといえばこれが欠かせない、というファンは少なくないはず。



ヘッドライトをスター・パターンにしてブランドを主張しても、このマスコットの存在感には敵わない。

全体的なスタイリングは、自動車デザインの黄金期と言える1930年代にインスパイアされたもの。長大なボンネットや彫刻的で流麗なラインにアールデコ風のタッチを織り交ぜ、自動車の美を象徴するようなルックスに仕上げた。曲線的なリア周りは、伝説的な「300SL」のイメージも取り入れている。



このエクステリアを引き立てるのが、深い輝きを放つブラックのボディ・カラーだ。しかし、単に黒く塗られているだけではなく、ソーラー・ペイントなる新技術が盛り込まれている。これは太陽光発電機能を持つ極薄のコーティングで、中型SUVのボディ表面に相当する11平米に塗った場合、最大で年間1.2万km走行分に相当する電力を生み出すという。発電効率は一般的な太陽電池並みの20%を達成しながら、レアアースやシリコンを用いず、容易にリサイクルできるのもメリットだ。



インテリアはアールデコ感満点。ダッシュボードは“ツェッペリン”と銘打った、宙に浮いたようなガラスの構造物で、内装パネルはマザー・オブ・パールの象嵌仕上げ。フロアは、17世紀から使われる麦藁細工風の精緻な装飾が施され、扇型のモチーフを描き出す。

ドア・ハンドルは緻密な造形を磨き上げた金銀2色の金属製で、古風な4本スポークのステアリング・ホイールは、中央にスリー・ポインテッド・スターを内包したガラスの球体が埋め込まれている。フロント・シートは、ディープ・ブルーのベルベットで覆われる。



技術面では、後輪操舵を含めたステア・バイ・ワイヤや、市街地では“レベル2”、高速道路や駐車時は“レベル4”を実現する自動運転システムなど、レトロな見た目に反してハイテクを満載。そのデータ処理を、少ないエネルギー消費で素早く行うため、ニューロモルフィック・コンピューターも採用している。



さすがに懐古主義が過ぎると思えるところもあるが、近年の空力追求型デザインに辟易としていたオールド・メルセデス派を喜ばせそうなルックスの「ヴィジョン・アイコニック」。

日本ではトヨタがセンチュリーにクーペを追求するとの話題で沸いているが、メルセデスもグリルだけでなく、こんな威風堂々たるビッグ・クーペをラインナップに復活させてくれないだろうか。

文=関 耕一郎

(ENGINE Webオリジナル)

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement