2025.11.03

CARS

BMW「iX3」と「M2 CS」が共演 JMS2025で見せた“魂のアップデート”

ジャパン・モビリティ・ショー2025でBMWは、新世代EV「iX3」とハードコアな「M2 CS」を披露。電動化とピュアスポーツ、その両極で「駆けぬける歓び」の未来を語った。

全ての画像を見る
ジャパン・モビリティ・ショー2025(JMS2025)開幕早々、BMWブースには熱気が満ちていた。ドイツ本国からも多くの関係者が来日し、国際色豊かな空気が漂う。

advertisement


9月にミュンヘンで行われたIAAモビリティ2025でワールドプレミアを果たした新型BMW iX3、つまり、同社が掲げる新世代の象徴「ノイエ・クラッセ」の日本初公開が注目を集めるのは当然だった。

だがしかし、この日のプレゼンテーションは単なる新型車の紹介にとどまらない。次の時代に、BMWがどんな「駆けぬける歓び」を描こうとしているのかを物語っていた。


M2 CSはピュアスポーツの象徴だ

ステージに立つのはBMWグループジャパン代表取締役社長の長谷川正敏氏。まず国内市場の好調を報告した。BMWブランドは前年比6%増、MINIに至っては32%増という力強い伸びを示したという。しかしその表情や口調に誇示の色はない。むしろ「この勢いを次の段階へつなげたい」という静かな決意がにじむ。

その流れで紹介されたのが、国内限定87台の特別なM2 CS(1488万円)だ。従来のM2から約30kgの軽量化を果たし、最高出力530馬力を誇る直列6気筒エンジンを搭載。ニュルブルクリンク北コースでは7分30秒を切るタイムを記録したという。小さなボディに込められた純粋な走りの情熱は、まさにBMWが掲げる「究極のドライビングマシン」という理念そのもの。会場は一瞬で熱を帯びた。




「駆けぬける歓び」を再定義する

続いてステージに登場したのは、BMW本社の開発担当取締役、ヨアヒム・ポスト博士。氏は落ち着いた声でこう語り始めた。

「私たちはお客様自身が最適なBMWを選べるようにしたい。ガソリン、ハイブリッド、電気、そして水素。どんなパワートレインでも、BMWが目指すのは“駆けぬける歓び”の体現です」

博士が特に強調したのは水素技術の可能性だった。2028年登場予定のBMW iX5 Hydrogenは、トヨタと共同開発した第3世代の燃料電池システムを搭載。ゼロエミッションでありながら高出力と長距離走行を両立させる。ポスト博士はトヨタCTOの中嶋氏に感謝を述べ、「水素は次世代エネルギーシステムの鍵になる」と締めくくった。




新世代の電気自動車、iX3の頭脳「スーパーブレイン」

ポスト博士はさらに「BMWは技術でドライビングプレジャーを再発明する」と語り、ノイエ・クラッセの核心にある新アーキテクチャを紹介した。それが「スーパーブレイン」と呼ばれる電子制御システムだ。4つの高性能コンピューターが従来比20倍の速度で車両全体を制御。走行、アシスト、インフォテインメントをAIが統合的に学習し、ドライバーの走りに寄り添う。

BMWはこの体験を「シンビオティック・ドライブ(共鳴する走り)」と呼ぶ。人が機械に命を吹き込み、機械が人を理解する。その相互作用の中にこそ、BMWの言う「駆けぬける歓び」があるのだ。

この哲学を最も直感的に示すのが、次にステージに現れた新型 iX3である。新設計のプラットフォーム、円筒形セルバッテリー、そして400kW対応の急速充電を備え、わずか10分で372km分を回復する充電性能を誇る。さらに双方向充電機能を備え、クルマ自体が家庭や都市にエネルギーを供給する存在にもなる。もはや“走る家電”ではなく、“動く発電機”としての未来像が見えてくる。




光るキドニーグリルの挑戦

デザイン面での注目は、やはり新型iX3の内外装だ。手がけたのは、BMW Mとノイエ・クラッセ両部門のデザインを統括するオリバー・ハイルマー氏。氏は「技術の飛躍があってこそ、デザインは真価を発揮する」と語る。

インテリアのハイライトは「BMWパノラミック・ビジョン」。フロントガラス下部に帯状の情報ディスプレイを設け、ドライバーは視線を下げずに車両情報を確認できる。まるでクルマと感覚が一体化するような新しい運転体験だ。

そして外観で目を惹くのが、クローム素材に代えて光で存在を表現した縦長の新キドニーグリル。このパートは常に賛否を呼ぶデザイン要素だが、昼も夜もBMWらしい“顔”を放つこの試みは、ブランドがデザイン言語の刷新を恐れていない証拠でもある。




BMWとして変わること、変わらないこととは?

ハードコアなM2 CSから、ハイパーデジタルなiX3まで、BMWのステージは対照的な2つの世界で構成されていた。そのほかにも、「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2025」で公開されたBMW Concept Speedtopを筆頭に、525Li Exclusive M Sport、X7 NISHIKI LOUNGEなどが展示され、ブース全体がブランドの現在地を雄弁に語っていた。

JMS2025でBMWが伝えたかったのは、「電動化・知能化・共鳴」というキーワードのもとでのブランド哲学の再提示だったのだろう。AIに走りを委ねるのではなく、人と機械の関係を再構築する。その試みこそが、BMWの“魂のアップデート”なのではないだろうか。

未来のBMWは、技術の塊でありながら、どこまでも人間的である。そんな気がした。しかし、その矛盾を抱えながら前に進むことこそ、ブランドの真価だと思う。そう、BMWの「駆けぬける歓び」は、これからも私たちの心を動かし続けるに違いない!







■BMW M2 CS
駆動方式 後輪駆動
全長×全幅×全高 4590×1885×1405mm
ホイールベース 2745mm
エンジン形式 直列6気筒DOHC24+ツインターボ
総排気量 2993cc
最高出力 530ps/96250rpm
最大トルク 650Nm/2750-5730rpm
変速機 8段AT
車両本体価格(税込) 1488万円

文=佐藤 玄(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

◆ジャパン・モビリティ・ショー2025の最新情報はこちら!

(ENGINE Webオリジナル)

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement