2026.03.01

LIFESTYLE

ストイックな外観なのに中は別世界 四角好きの施主が限られた予算でつくった驚きの空間

長方形で規則的に並んだ窓から3階建てのように見えるが、実は周囲の家とほぼ同じ高さの木造2階建て。

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画廊のような空間

そんなSさんが竹内さんに頼んだのが、天井が高くて天窓から光が入る、白くて四角い家だ。自身がクリエイターであることから、要望が多いと面白みのない家になってしまうことは分かっているので、それ以外はお任せにした。ただし近年の建材費や職人の人件費の高騰で、予算的に大きな制約がある。S邸はそれを逆手にとって、既製品を多く用い収納は扉などで隠さず、床もコンクリートにし画廊のような雰囲気にした。その分、細部のデザインにこだわり、幾何学的な意匠を多用。こうして生まれた唯一無二の空間でイメージしたのは、「70年代の住宅や、NYのロフト」と竹内さんは話す。

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柱のない1階の大きなリビング・ダイニング・キッチン。吹き抜け部の天井高は4m近い。丸い窓の開いた梁に見える部分は、中2階のクローゼット。

完成した家の内部も、外観同様に白い。間取りは、1階が大きなリビング・ダイニング・キッチン。柱のない60平方メートル近い大広間だ。2階は3つの寝室と水回り。天井に、建物の横幅に近い細長い天窓が配され、1階にまで光を導いている。特徴的なのが、1階と2階の間に存在する中2階だ。中央部は太い梁のようにみえるが、内部は天井高が140cmのクローゼット。1階の壁上部にも、部屋全体をぐるりと取り巻くようにオープンのロフトを設け、むき出しの収納とした。

1階奥からの眺め。人のサイズからも広さが分かる。中2階の丸窓の上部の天窓から光が差し込む。

こうした個性的でセンスの良い建物でありながら、奥様は「特別な家に住んでいる気はしない」と話す。聞けば、冬の炬燵だけでなく、夏は家族が床でゴロゴロと自由に寝ている、飾らないライフスタイルを謳歌しているという。「置いてあるものが色々と見えるが気にならない」ロフト部の存在も、真っ白い空間の緊張感を和らげているようだ。

暮らし始めて1年。友人の大きなお宅に招かれても、柱のない開放的な我が家に戻ると、「この家も存分に広い」と感じるSさん。大層気に入っている。予算の関係で実現できなかった部分も少なくないが、それでも「美しい家を作ることを諦めなかった」のは、彼のちょっとした誇りだ。



■建築家:竹内吉彦 1987年名古屋市生まれ。シンガポールで育つ。東京理科大学、東京藝術大学大学院を経て、スペインのカタルーニャ工科大学へ留学。スペインの設計事務所で研鑽を積んだ後、青木淳氏の建築事務所に勤務。新潟県十日町市市民交流センター、ルイ・ヴィトン銀座並木通り店を担当した後に独立し、自身の設計事務所「c」を2021年に立ち上げる。事務所名は、「竹内デザイン」の略称を「t」と「デ」で表したもの。写真は、設計を手掛けたバレンシアガの銀座初の旗艦店。

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー)  写真=田村浩章

■人気連載「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」の記事一覧を見る!

■ジョー・スズキ写真展、東京・森岡書店で開催

ジョー スズキは、「1種類の本だけを売る」銀座の森岡書店で、3月10日から15日の日程で、写真集『Thursday’s Child』の出版記念展を行います。写真集のタイトルは、『マザーグース』の「木曜日に生まれた子供は旅に出る」という一節から着想を得たもの。木曜日生まれのスズキが長年撮りためてきた、旅の写真で構成されています。





大判の写真集が主流のなか、この『Thursday’s Child』は文庫本ほどの可愛いサイズ。しかも表紙に写真はなく、優しい手触りのテクスチャーのある布に、箔押しでタイトルが入っているだけで、どこか懐かしさを覚えます。写真業界でもちょっとした話題のようです。ご興味のある方は、是非訪れてみてください。

会期: 3月10日(火)~15日(日) 13:00~19:00
場所: 森岡書店 東京都中央区銀座1丁目28-15 鈴木ビル



(ENGINE2026年1月号)

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