イタリアのエヴォルート・アウトモビリが2024年に発表した「フェラーリF355」のレストモッド、「355 byエヴォルート」の製造が、 2026年3月にスタートする。内外装のデザインを手掛けたのは、かつてジャガーのデザイン変革を指揮したイアン・カラム率いるカラム・デザインズだ。
リトラクタブルのヘッドライトは当然そのままだ!
エクステリアは「F355」のスタイリングを活かしつつ、ボディ・パネルのカーボン化や、前面エア・インテークの大型化といった改修を実施。

スリットを切ったボンネットとリア・フェンダーは、歴代フェラーリのテイストを盛り込みつつ、パフォーマンスのグレード・アップも予感させるディテールだ。

空力にも配慮され、フロント・スプリッターやサイド・インテーク、リア・ディフューザーなどを新設計。ドア・ミラー形状も変更したほか、フラッシュ・サーフェスのドア・ハンドルを導入している。

ホイールは純正比1インチアップの19インチで、前235/35・後305/30のミシュラン・パイロットスポーツ4Sを履く。

ヘッドライトはリトラクタブル方式を踏襲するが、灯体は補助灯も含めてLEDを採用。テールライトも丸型4灯スタイルを受け継ぐが、こちらもLED化し、リア・エンドの傾斜に沿って設置される。

シャシーは、随所にカーボン材による補強を施し、ねじり剛性を23%向上。アーム類などを新設計したサスペンションは、フロントを77mm、リアを66mmワイド・トレッド化し、モータースポーツの世界で実績を重ねたR53サスペンションとの共同開発による、リザーバータンク別体の3ウェイ調整ダンパーも装備する。細かいところではホイール・ベアリングも刷新し、一個あたり1kg以上削減したという。

操舵系は、ロック・トゥ・ロックを3.25回転から2.0回転へクイック化。新設計の電動油圧アシストと併せて、シャープな初期レスポンスや改善された一貫性を実現。さらに、アナログ感を損なわず、自然な手応えやフィードバックをもたらすようチューニングされた。

エンジンは自然吸気V8で、純正同様の3.5リットルから、40ps/10Nmアップの最高出力420psと最大トルク370Nmを発生。専用のカムシャフトやステンレス・エグゾースト、ポート加工したシリンダー・ヘッドなど細部まで見直すことで、イナーシャを減らし鋭いレスポンスも手に入れた。
さらに、3.7リットル仕様も用意し、最高出力は480ps、最大トルクは400Nmに増強。部品の強化やハイリフト・カムシャフトの採用、バルブ系や燃料系の最適化によるピーク回転での吸排気効率向上などを図った高回転ユニットで、3.5リットル仕様ユニットのレブリミットは8500rpmだが、3.7リットル仕様ユニットはピーク・パワー発生点が9000rpmに設定されている。

トランスミッションは6段MTで、シフト・フィールを追求。ドライブシャフトは高強度の300M鋼材を用い、39mm延長しつつも、肉抜き加工を施し、左右各2kg近い軽量化も達成している。ブレーキは前6ポット・後4ポットのブレンボ製で、カーボン・ディスクもオーダー可能だ。
電気系も現代レベルにリニューアルし、およそ9割を刷新したハーネスや専用ECUを採用。ただし“ピーク・アナログ”という車両テーマに基づき、最新のパフォーマンス・カーのようなソフトウェア依存を避けた。電力はエンジンではなくバッテリーから引き出すことで、信頼性を高め、無駄な補器類も不要に。エアコンもバッテリー駆動で、効率と制御の改善を見ている。

インテリアは、レザーやカーボン、削り出しの金属パーツなどにより、質感の高い仕上がりに。ステアリング・ホイールやメーター・パネル、スイッチ類も新規起こしだが、今風のディスプレイ多用型ではなく、指針式メーターや実体スイッチでアナログ感を追求した。ただし、センター・コンソール前端にスマートフォン・ホルダーが設置されているのは、現代的なアレンジだ。

最終プロトタイプは8000kmに及ぶサーキット・テストや1.6万km相当のエンジン・テストを実施。4月には、3.2万kmの耐久テストを終える予定で、販売車両には3.2万km/2年の保証がつくという。
アメリカのシンガー・ヴィークル・デザインが手がけた964型「911」や、ピニンファリーナも関わった初代「NSX」など、レストアしつつ最新技術を用いたモディファイを施す、いわゆるレストモッド系のプロジェクトが、このところ注目度を高めている。現代レベルのパフォーマンスや信頼性を備えた昔の憧れを手に入れる、というのは多くのクルマ好きが思い描く夢なのだろう。

しかし、この手のクルマは、適切なコンディションのベース車がないことには始まらない。「355 byエヴォルート」に関しては、55台限定生産。夢を叶えるには、狭き門をくぐり抜けなければならないだろう。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)