2026.04.15

CARS

いったんは消えるも蘇ったMT! 多様化しパワー・アップを繰り返す「ポルシェ911 GT3」!!【新しいカブリオレ、GT3 S/C登場記念・後篇】

次世代へと続く「911GT3」! 自然吸気水平対向6気筒はいつまで存続するのか?

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「ポルシェ911」の、GT3レースのホモロゲーション・モデルから、高価格・高付加価値グレードへの変化を重ねてきたGT3。

ホモロゲ・モデルながらMTが消滅!?


それを顕著に感じさせたのは、2013年登場の991型だ。エンジンは自然吸気を継続したが、3ペダルのMTのみだったトランスミッションは、ついに2ペダルのデュアルクラッチ式自動MTへと置き換えられたのである。



エンジンは同時期の“カレラS”と基本を共有する直噴3.8リットルだが、クランクシャフトやチタン・コンロッドなど専用部品を多数使用。75psアップの最高出力475psを誇るが、2014年にはパーツ不良が発覚し、全数回収とエンジン交換という前代未聞の対応がとられた。



2015年には、“GT3 RS”を発表。500psの4リットル・ユニット搭載に加え、フロント・フェンダーのルーバーやリア・フェンダーのエア・インテーク追加、金属ステーのリア・ウイング採用といった空力面の変更も実施。

ルーフ・パネルはマグネシウムとするなど、軽量化も図られた。トランスミッションは、やはり2ペダルのデュアルクラッチ式自動MTのみだ。

もはや、速さを求めるなら3ペダルより2ペダルというのは定説だが、ポルシェは“GT3”の購買層のニーズを読み違えていた。MTを望む声が、想定以上に大きかったのだ。もっともそれは、世のクルマ好きには十分に予想できた事態だが。



そこで捻り出されたのが、2016年の「911R」だ。“GT3”シャシーに4リットルのフラット6と6段MTを搭載し、カレラ系と同じ可変リア・スポイラーのほかマグネシウムルーフや専用ディフューザーを奢ったこのモデルは、同名のレースカーの50周年記念車という触れ込みだったが、“GT3”のMT需要を探る試金石だったのは明らかだ。



もしくは、“GT3”の2ペダル・オンリーとしたことが、少なくとも商業面では多少の失敗だったと、素直には認めたくない意地だろうか。

というのも、2017年の991.2こと後期型では、MTが選択肢に加わるからである。エンジンは最高出力500 psの4リットルに換装され、リア・ウイングは高さを増しつつ後方へ配置することでダウンフォースを高めた。



また、この年には“GT3ツーリング・パッケージ”を設定する。人気を博した「911R」の普及版ともいうべきウイングレス・スタイルで、よりカジュアルに“GT3”と付き合いたいユーザーがターゲット。トランスミッションは、MTのみの設定だ。



2018年には“GT3 RS”も後期型になり、エンジンは520psへ増強。ボンネットにはNACAダクトが加わり、サイド・スポイラーとリア・ウイングはより強力な“GT2 RS”と共通化した。

ポリカーボネートのウインドウをリア・サイドにも備え、サスペンションも全リンクのボール化など手が加えられている。



992世代への移行は2021年。エンジンは先代比+10psの510psで、トランスミッションはMTとDCTを設定。カーボン部材を多用し、先代よりボディやタイヤなどをサイズアップしながらも、重量増加を5kgに収めた。

サスペンションは、フロントにレーシング・カーの「911 RSR」に倣った不等長ダブル・ウィッシュボーンを採用した。リア・ウイングも、レース仕込みのスワンネック・タイプだが、これを装着しないツーリング・パッケージも用意。992のツーリング・パッケージは、MTかデュアルクラッチ式自動MTが選べるようになった。



2022年には、新世代の“GT3 RS”がデビュー。



最高出力は525psと、かろうじて先代を上回るにとどまるが、空力性能は大幅に向上。センター・ラジエーター化によるフロントのスペースを活かしたアクティブ・エアロや、レーシング・カーのようなDRSを組み込んだ大型リア・ウイングを装備し、先代比2倍のダウンフォースを得ている。

現行“GT3”は、2024年登場の992.2世代。エンジンの最高出力は510psのままだが、ファイナル比の変更や、空力設計とサスペンションの見直しで走りを磨いた。また、“GT3”にサーキット向けアイテムを揃えた“ヴァイザッハ・パッケージ”、“ツーリング・パッケージ”にリア・シートをそれぞれ初設定し、より多様なニーズに応える仕様を展開している。



992型の“GT3”ベースの限定車も紹介しよう。2023年、911の60周年記念車である「911S/T」は、“GT3 RS”用エンジンとMTのセットを“ツーリング・パッケージ”仕様のボディと組み合わせた1963台の限定モデルだ。



2025年には、911をデザインしたブッツィーことフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェの生誕90周年を祝い、「911 GT3 90 F.A.ポルシェ」を発表。“GT3ツーリング・パッケージ”を、ブッツィーの愛車だった911のオーク・グリーン・メタリックへのオマージュとなるF.A.グリーン・メタリックで彩り、90台のみ生産される。

変速機のバリエーションやツーリング・パッケージの設定、限定車や派生車種の登場など、991世代移行は商品としての拡充を図ってきたGT3。巷では今後の展開に関する噂も聞かれ、いよいよカブリオレの追加や“GT3 RS”の改良を示唆するスクープ写真も出回っている。

さらに、もはや排気量と出力が限界に近づき、排ガス規制適合も難しくなった自然吸気6気筒の行方も気になるところ。今後のGT3は、どのようにして時代とファンの要求に応えていくのだろうか。

■996&997世代の“GT3” についての前篇はこちら
レーシング・カーのベースから人気の“役物”へ!!「ポルシェ911GT3」の歴史を辿る! もともとは簡素で安価だった!? 【新型モデル登場記念・前篇】

文=関 耕一郎 写真=ポルシェ 編集=上田純一郎

(ENGINE Webオリジナル)
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