腕時計のリュウズは3時位置が多い。左腕に時計を着用するユーザーにとって右リュウズは操作しやすい。が、右腕に時計を着用するユーザーにとって3時位置のリュウズは使いづらいと感じる。そんな右腕に時計を着用するユーザーにおすすめなのが、イタリア語で「右手の」を意味するパネライのデストロだ。
ダウンサイジングしたケースと高い防水性能で使いやすさが向上したルミノール
手巻きツールウォッチの伝統に焦点を当てた今年のパネライは、1950年代半ばから1960年代にかけて作られた歴史的な「ルミノール Ref.6152/1」の47mmケースの構造を今回初めて44mmに変換し、新たに右リュウズの「PAM01731」と左リュウズの「PAM01732」の2つに再現。

ポリッシュ仕上げのクッション型ミドルケースと、サテン仕上げのフラットなリュウズプロテクターを備えたオリジナルのシルエットを踏襲しながら、現実的に着けやすいサイズを実現した。巻き上げ方式は、手巻き、パワーリザーブは3日間。ケースはステンレススティール。防水性能は30気圧。価格は136万4000円だ。

高い防水性を確保しながら、オープンケースバックを採用する本モデルは、サファイアクリスタルを通じて高性能の自社製手巻きムーブメント、キャリバーP.6000を見ることができる。
世界平和を願う、レフトハンド再来
モデル名にある「デストロ(destro)」とは、イタリア語で「右手の」を意味する。通常とは逆側のリュウズ位置から、その由来は明らか。右手に装着する左利き用の腕時計“レフトハンド”が、2年ぶりに再来した。
前作からデストロと改称したのは、左リュウズは左利きのためではなく、伊海軍の潜水士が左腕に海中コンパスなどの計器を身に着けていたため右手に装着する腕時計を製作した、という出自により忠実にするためであろう。

すなわちこれは、真のミリタリー・スペックの継承モデル。地域紛争が激化している今の世界情勢だからこそ、この新作のリリースには意味がある。何故なら軍用をラグジュアリーに昇華して、平和利用に転化しているからだ。
同じく軍用に考案されたサンドイッチダイアルは、これまでの“レフティ”にはなかった深淵なブルーに染められ、装いはいつになくスタイリッシュである。ミルスペック由来は軍礼賛ではなく、平和への祈りだ。
文=高木教雄 Web編集=齊藤優太
(ENGINE2026年6月号)