モリッツ・グロスマンの小石川ブティックはグラスヒュッテ、ひいてはドイツの誇るモノづくりを全身で体感できる、時計好事家のための聖域と言える場所だ。
“モノづくり”の伝統が息づく場所で
東京都文京区小石川の地に、ひっそりと居を構えるウォッチメゾンがある。19世紀にドイツ・グラスヒュッテで活躍した時計師の名を冠するマニュファクチュール「モリッツ・グロスマン」の小石川ブティックだ。

現在のモリッツ・グロスマンは、かつてA.ランゲ&ゾーネなどで経験を積んだ時計師、クリスティーネ・フッター氏主導の下、2008年に復活した比較的新しいブランドだ。しかしながら、卓越した技術と繊細な手仕事によって、2010年にリリースされたファーストモデルの「べヌー(BENU)」は高い評価を獲得。以来、世界の時計好事家たちを惹きつけている。

このブティックがオープンしたのは2015年2月。世界初のオンリー・ブティックとして、この東京の地にモリッツ・グロスマンを誘致したのが、現モリッツ・グロスマン・ジャパン代表取締役である工藤光一氏だ。
「モリッツ・グロスマンの時計は、実際に手に取って見てもらってこそ、その良さがわかると思っています。なので、日本導入にあたりブティックも作る必要があると考えていました」

まず驚かされるのは天井の高さだ。ここは元々、印刷業が盛んだった小石川で紙工業を営んでいた物件だったそうで、その伝統に倣って工藤氏は、世界最高峰とも言われるドイツ・ハイデルベルク社の活版印刷機を探し出して設置した。

また、音響設備には世界中の放送局や録音スタジオで使用されたスチューダー社のオープンリール・デッキや、かの坂本龍一氏も愛用していたというムジークエレクトロニク・ガイザイン社のモニタースピーカーを設置。
「時計のクオリティを味わってもらうためには、ブティックにあるものも全て“本物”であることにこだわりたかったんです」
工藤氏が語るように、“アナログ”かつ“最高峰”のもので囲まれた店内は、インダストリアルかつオーセンティックな雰囲気で普通の時計店とは一線を画している。

そうして生まれた空間は研ぎ澄まされていながらも非常に居心地が良く、グラスヒュッテの”モノづくり”に込められた繊細な想いと真摯に向き合うことができる。
世間の流行りに左右されず、真に優れたモノだけが持つしみじみとした佳さを全身で味わう。そんな時計好事家のための“聖域”に足を運んでみてはいかがだろうか?
文=浅石祐介(ENGINE編集部) 写真=田村浩章
モリッツ・グロスマン ブティック

東京都文京区小石川4丁目15-9
Tel.03-5615-8185
営業時間 13:00~19:00(日・月曜定休)
モリッツ・グロスマン公式サイト(ENGINE2026年9・10月号)