2019.03.20

LIFESTYLE

オープンエアが気持ちいいリビングは「まるで船のデッキみたい!」 港町横浜にある帆船の舳先のような家の不思議な魅力とは 

まるで船のデッキのようにつながるリビングとバルコニー

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内と外の境が曖昧

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そんなお二人のハネムーン先は、クルマを借りて巡ったイタリア。道も知らなければ、言葉も通じない右側通行の国で、ドライブを楽しもうというのである。このエピソードを聞き、小島邸の設計を担当した建築家の保坂猛さんは、「不便を楽しめる夫婦」と判断し、大胆な家を設計した。まず、三角形の敷地のできるだけ外側に、2楝の建物をV字に配置。このレイアウトは無駄となる土地が無い合理的なものである。そして残った中央の三角形の部分を中庭とし、全ての部屋がガラス戸を通して中庭と相対するようにした。家の外側が見えるような窓は存在しない。
家具や照明にアンティークを揃えたが、オレンジのソファは、小島さんが独身時代に使用していたジョージ・ネルソンのもの。


中庭の木は、小島さんが植えたヤマボウシ。10年で家よりも高く育った。取材の3週間前は冬木の状態だったが、我々の訪れた2週間後には、白い花が咲いたそうだ。そしてこの庭に、色々な鳥がやってくる。そんな自然の営みを感じられる中庭を眺めながら、毎朝歯を磨くのが小島さんにとって至福の時だという。実は小島さんが建築家の保坂猛さんに依頼するきっかけとなったのが、雑誌で紹介されていた保坂さんの自邸の記事。2階の天井の一部が塞がれておらず、家の内と外との境が曖昧な家だ。小島さんが、そんな保坂邸に惹かれ、このような中庭に面して開かれた開放的な家を建てたのも、長いことオープンカーに乗ってきたことと無縁ではないだろう。


建築家のセンスだけでなく、小島さんたちの美意識も、この家をより魅力あるものにしている。何を隠そう小島潤一さんは、広告会社サン・アドのアートディレクターだ。サントリーやトヨタ、セイコーの広告や、地元である横浜銘菓のブランディングも手掛けている。そんな小島さんは、建築家の提案に自らのアイディアを加えて、個性ある家を完成させた。


例えば、階段の手摺や2階の中庭に面した柵に、船舶用のロープを使えないかと提案。外部に船舶照明を使う案なども採用された。また、自ら照明や把手、郵便受けなどのアンティークのパーツも揃えている。こうして誕生した2階のインテリアは、船乗りたちが通う港町横浜の老舗バーを思わせるもの。横浜で生まれ育った小島さんは、自然とこうした雰囲気が好きになったと言う。

ここは横浜

小島さんが偶然ラジオで聴いた横浜出身のミュージシャン、ゆずの番組の話も横浜らしいエピソードである。「横浜で生まれ育ってクルマの免許をとると、東京方面でなく、鎌倉・湘南・箱根など南の方角にドライブに行くのが圧倒的」と語る彼らに、共感する部分が多いと言うのだ。


仕事柄小島さんは都心の美術展に行くのも大事なのだが……週末はついつい夫婦で、南の海の方に出かけてしまうというのである。なるほど。

家もクルマもドライブも、オープン・エアが気持ちいいのだ。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一



■建築家:保坂猛 1975年、山梨県生まれ。横浜国立大学大学院修了。出世作である自邸「LoveHouse」は、2階建てにもかかわらず、延床面積37平方メートルしかない超狭小住宅。河口湖畔の郷土料理店「ほうとう不動」は代表作。暖簾に描かれたロゴは小島さんがデザイン。愛車はシトロエンC4。

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(ENGINE 2017年08月号)

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