2019.05.03

LIFESTYLE

たった1つの窓だけで豊な家が成立する理由 それはあきらめる勇気! ローコストなのに魅力的な家のつくり方とは

シンプルな箱にたったひとつだけの窓で豊な家が成立する理由とは?

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雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。横浜市の急坂の上に建つ、靴箱のようなシンプルな形に大きなガラス窓のI邸を紹介。デザインプロデューサーのジョースズキがリポートする。その家には、とてもローコストとは思えない魅力があった。

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限られた予算は明確な優先順位でクリアする

靴箱のようなシンプルな形の構造に、大きなガラス窓がひとつあるだけの、漫画に出てきそうな姿をしたIさん(42歳)たちのお宅。こうした大胆な設計になったのは、サラリーマンであるIさんたちが、限られた予算の中で、明確な優先順位をつけて家作りをしたからに他ならない。この大きな窓のプランを実現させるため、他の多くのことを諦めた。結果、ローコストだが、それを全く感じさせない魅力的な家が誕生したのである。



それまで東京でマンション住まいをしてきたIさん夫婦が、家を建てたひとつの理由は、ガレージのある家で暮らしたかったから。二人共に地方出身者で、クルマがあって当然の環境で育った。しかし、東京に出てきて自動車の無い生活を続け、そろそろクルマのある生活に戻りたかったという。

そして見つけたのが、横浜市の急な坂を上った丘の頂きにある104m2の土地だ。日当たりのよい南と東は隣家に接しているが、西は敷地を迂回する道路で、北はその道を挟んで緑あふれる公園を見下ろす立地である。運が良いことに、少々有利な条件で手に入れることができた。

設計は、友人の後輩にあたる岩﨑浩平さんと阿部任太さんが主宰する建築事務所、EANAにお願いしている。当時は独立間もなく、二人にとって最初の個人住宅の設計である。多くのエネルギーが、この家のために注がれたのは間違いない。

さて、建築家の岩﨑さんたちは、コストを抑えるため、シンプルな形の家にすることを提案。敷地は変形地だが、それに合わせるのではなく、「羊羹のような」単純な形を選んだ。これが敷地の西寄りに、南北に建っているのである。余ったスペースは車庫と前庭にし、コストのかかる、フェンスや門扉が無くても成り立つデザインにした。

レイアウトは、1階に寝室や水回りを。天井高は、法律が定める最低の2・1mとした。逆にリビングダイニングのある2階は、斜線規制が許す最大の高さにしたため、天井高はなんと4m。この部屋の公園側の床から天井までの全面を、大きな窓としたのである。実はI邸で室内から外の景色が見えるのはこの大窓だけで、あとは通風のための窓が数個あるのみ。どれも小さいが、これで十分な換気が行われるのである。

大きな窓がある家が好きなことを建築家に事前に伝えていた。竣工以来6年間、窓の掃除はしたことがないが、汚れは全く気にならない。内部から外が見える窓はここだけで、あとは通風のための小さな窓が数個あるのみ。通りから家の中が見えないよう、下からも閉まる機能を備えた高価なブラインドを、施主支給で付けている。


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