2019.05.31

LIFESTYLE

世界的建築家と学生がコラボレーション!? アイディア満載の斬新な一軒家を都会の真ん中にローコストで建てた!!

都会の真ん中に建つ斬新なアイディアの一軒家。

全ての画像を見る
心地良い軒下空間

advertisement


モダンな建築に軒とは意外かもしれないが、乾研究室で発見したのは、「軒下周辺の空間が居心地良くなる」こと。そこでM邸では、3つの階それぞれに軒(天井と一体になったコンクリート構造)を設けるとともに、その角度を工夫した。例えば、2階の天井は、リビングの南側(上写真の右手)は低いが、道路に向かって高くなり、その続きが上を向いた軒となっている。しかもその軒が家をぐるりと囲み、上の階のバルコニーも兼ねている。窓も大きく数も多く、結果、屋外の見える範囲まで我が家のような、得も言われぬ開放感が生まれた。

また、学生たちはアイディアを出すだけでなく、時には自分たちで施工の一部を手伝い、コスト削減に貢献している。例えば、各個室に収納を作れなかったので、3階の階段脇のスペースを共同のクローゼットとしたのは学生たちの案。古着屋のように服を吊るせるよう、学生たちは考えた。リビングダイニングの照明も、天井裏の配線を行わず、コンセントから直接電源をとった灯りを、天井に打ち込んだフックから下げるよう、自分たちで仕上げている。



街の景観にも貢献

将来息子さんがクルマを持った時の2台目の駐車スペースは用意できなかったが、学生たちも頑張って完成させた家は、Mさんたちの期待をはるかに上回るものとなった。設計した建築家の乾久美子さんにとっても重要な作品のひとつとなり、国内外の展覧会で紹介されている。

建物の魅力だけではない。家の植栽がもたらす雰囲気も、街の景観を良くしているとMさんは自負している。自分の家を美しく作って通行人に見せ、街の美化に貢献する発想は、海外には多いが日本では馴染みが薄い。だが、Mさんたちの目指しているのはそこだ。

わざわざ大きなヤシの木(重さ1トン!)を遠方から取り寄せ、通りに面した庭を作った。この木々がもたらす効果は大きい。玄関脇のベンチに遊び心でカフェの看板を出したM夫人も、「本当にカフェか事務所と思われているようで、ベンチに座って和んでいる近所の方も多い」、としたり顔だ。街に素敵な家が登場したのは、間違いない。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一



■建築家:乾久美子 1969年大阪生まれ。イエール大学大学院修了。青木淳建築計画事務所勤務を経て独立。代表作は日比谷花壇日比谷公園店(写真)など。国際的に知られ、現在横浜国立大学の大学院で教鞭をとる。 ■市川竜吾 1980年長野県生まれ。東京藝術大学大学院修了。乾久美子の事務所を経て独立。建築事務所を共同主宰。首都大学東京特任助教。

■最高にお洒落なルームツアー「東京上手」がYouTubeチャンネルでスタート!
雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。建築、インテリア、アートをはじめ、地方の工房や名跡、刺激的な新しい施設や展覧会など、ライフスタイルを豊にする新感覚の映像リポート。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなルームツアーは必見の価値あり。ぜひチャンネル登録を!


(ENGINE2018年3月号)

▶︎過去の連載一覧はコチラ!
マイカー&マイハウス 記事一覧

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement