2019.06.07

CARS

100年に1台出るか、出ないか。日本が世界に誇るマツダ・ロードスター

3代目登場とともに、エンジン・ホット100で見事1位に輝いてから早4年。 2年目の4位、3年目の8位と徐々にランク・ダウンするかと思いきや日本が世界に誇るライトウェイト・オープン・スポーツカー、マツダ・ロードスターがふたたび7位へと浮上!

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ずっとベスト10圏内をキープ

綺羅星のごときクルマたちが居並ぶこのランキングにおいて、ND型ロードスターは登場以来、ずっとベスト10圏内をキープし続けている。


票を投じた選者は年齢も性別も個性も豊かで傾向のようなものはないように窺える。言い換えればその存在は括りようもなく、嫌われようもないということだ。「国民の〇〇」という台詞さえ大袈裟には思えない。「日本純血で最も身近なスポーツカー」(河村康彦さん)、「作っているだけで偉い日本の国宝」(小沢コージさん)、「スポーツカー界のイチロー」(西川淳さん)と、その賛辞は何かと自信を失いがちだった平成の日本にあって尊きものだったことを示しているかにみえる。


ライトウェイト・スポーツカーの原点

ロードスターへの賛辞の中心にあるのは、そんな平成の頭からおしまいまで、三十余年にわたる求道的なまでの自己研鑽にあるのだろう。「30年間変わることなく代わるものがない」(藤野太一さん)、「ブレずにロードスター道を極め続ける姿勢は貴重」(島崎七生人さん)、「初代から変わらぬ価値を提供し続けている」(石井昌道さん)と、選者の多くが評するその最たるところは、やはりライトウェイト・オープンというコンセプトだ。


衝突安全や環境基準への対策など、付加物がてんこ盛りな現在のクルマ事情にあって、概ね1tという重量をスポーツカーで実現しようと思えば高価な素材の材料置換や寸法容量の制限などを余儀なくされる。そこをマツダは、デミオやアテンザと同等の基本品質を保持しつつ200万円台の価格から実現しているわけだ。しかも忘れてはならないのは、ロードスターは前後にドライブシャフトが居座るFRレイアウトでもある。どうしてこんな奇跡が叶えられるのか。恐らく僕以上に同業他社が疑問に思っているだろう。


「ライトウェイト・スポーツカーの原点に立ち返った秀逸なスポーツカー」(日下部保雄さん)、「往年のブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツの真の継承車」(藤原よしおさん)、「ライトウェイト・スポーツカーの基本」(高平高輝さん)と、称賛されるその軽さを、走りに一家言もつ選考委員たちがどう捉えているかも面白い。「速さでなく運転操作することの面白さ、奥深さを最も大切な価値として作った」(斎藤聡さん)という濃密な対話感や「ハンドリングやオープン・エアを気軽に楽しむモデル」(佐藤久実さん)と人懐っこさに注目する向きもあれば「前後ダブル・ウイッシュボーンを採用しタイロッドは前引き式に拘る」(松田秀士さん)と本格的なメカニズムに注目する向きもある。


深化を続けるロードスター

幌屋根とRFとでは綺麗に嗜好が分かれているようで、選考委員のコメントにも注目してもらえればと思うが、ともあれ皆々に共通しているのは、敢えて速度的進化を選ばず、誰もが運転を楽しめる世界観を大事にしていることに対する評価だろう。「ストイックなほどシンプルだが贅沢なほど楽しい走り」(生方聡さん)、「ますます理想のハンドリングに近づいた感あり」(飯田裕子さん)と、いわば深化を続けるロードスターに、個人的に抱くのはもはや感謝の気持ちに近い。「これほど素晴らしいクルマは100年に1台出るか出ないか」(清水草一さん)「たぶん日本一つくり手の愛が詰まったクルマ」(今尾直樹さん)は大袈裟でなく本当にそう思う。


■全長×全幅×全高=3915×1735×1235㎜。ホイールベース=2310㎜。車両重量=990㎏。ロードスター"S"のフロントに搭載される1.5ℓユニットは最高出力132ps/7000rpm、最大トルク15.5kgm/4500rpmを発生し、後輪を駆動する。ソフト・トップのほか、リトラクタブル・トップの"RF"もラインナップ。車両価格=255万4200円(S)~


文=渡辺 敏史 写真=茂呂 幸正

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