2019.06.12

LIFESTYLE

窓がない、と思ったら大間違い! なんと家の中に家がある!? 光と風が吹き抜ける驚きのアイディア住宅

仲佐昭夫さんの設計によるM邸

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正面に窓が無いので分かりにくいが、この家は3階建てだ。ガレージにはシャッターが備わり、右側の奥が玄関になっている。入口の上部は吹き抜けになっており、上から光が入ってくる造りだ。その他1階にあるのは、主寝室と水回り。寝室の大きなガラス越しにはクルマが見える。こうしたのは、建築家の手掛けた事例として中佐さんの自邸を見学して感動し、同じようにした結果。毎朝目覚めると、Mさんは電動リモコンでガレージのシャッターを開けるのが日課となっている。外光が、ガレージや寝室、廊下にまで入ってくると、「これで一日が始動するスイッチが入る」と感じるそうだ。

そしてガレージは、少し余裕のあるサイズ。そこで、壁面上部に有孔ボードを貼って、子供たちのスポーツ用品などを掛けるスペースとした。またクルマ奥の階段下の空間を利用して机を置き、ちょっとした作業ができる場所に。書斎としても使えるよう、寒さや換気の対策も施されている。

ベッドルームの窓ごしにガレージ内の愛車が見える間取り。ガレージ内は、クルマに向かって右手が全面ガラス窓。階段脇の廊下はガラスの引き戸で、家の中からもガレージに行き来できる。


2階は、「家では殆どリビングルームに居るので、一間続きの大きな空間」を希望したMさんの想いを実現させたもの。南東の角は吹き抜けとなっていて天井が高く、窓の外は白い壁の内側のバルコニー。視線が抜け、広さを感じる作りとなっている。事前に家具の置く位置まで考慮されているので、スペースに無駄がなく、ことさら空間に余裕が感じられる。キッチンはアイランド型で、部屋全体を見渡せるプラン。床に木を用いた、温かみのある落ち着く空間となっている。そして3階は、子供たちの部屋がふたつと、かなり広い三角形の洗面所の構成だ。

光溢れる空間

隣家が迫る86平米の土地に建つにもかかわらず、M邸のリビングには、太陽の光が溢れている。外観から想像するより、内部ははるかに明るい。また、外見上窓が無いお陰で、プライバシーが守られている家でもある。数多い窓にはカーテンを付けていないが、「全くそれは気にならない。逆に太陽が昇ると目が覚め、早起きになった」と話す。



ところで、Mさん夫婦は横浜出身者ではない。縁あって、新婚時代は、ベイブリッジが見える高層マンションに住んでいた。ところが子供ができ、コミュニティを身近に感じる住宅街での子育てを望むように。そこで住まい方を変更することにした。だが、すぐに家を建てるのではなく、どの街に住むかしっかり計画を立てたのが興味深い。マンションを手放すと、まず自分たちが気になっていたこの街で、賃貸物件に住んでみた。そして街を気に入ってから、土地を手に入れたのである。

一方、カー・ライフといえば、乗ってきたクルマのカタログや、ノベルティとして貰ったミニカーなどを今でも大事に保管しているクルマ好きだ。最初に自分のクルマとなったのは、マツダRX-8。そしてジープ系のクルマが好きで、タワー・マンション時代にチェロキーに。だが、狭い道の多いこの街に移ってからは、奥さんが運転しやすいようにと、フォルクスワーゲン・ゴルフに乗り換えた。このクルマで奥様は練習を重ね、サッカー・クラブに通うお子さんたちの送迎も行っている。

キャンプに相応しいクルマは

「ゴルフは安全性、機能、走り等本当に申し分ないクルマです。ところがキャンプデビューしてから、ゴルフでキャンプ場に行くことに違和感を覚えるようになったんです」とMさんは話す。特にこの家に移ってからは、毎朝目覚める毎に、ガラス越しに見えるゴルフの姿に「違う」と感じていたそうだ。最後は、言葉に出さずとも気持ちを察していた奥様の理解もあり、去年の初夏にジープ・コンパス(2017年型)に乗り換えた。「ちょうどよいサイズ」(幅はゴルフとほぼ同じ)で、運転しやすいコンパスとの新生活をM家は楽しみ始めたばかり。今後はこの家同様、お子さんたちと多くの思い出を作っていくことだろう。もっとも準備のいいMさん。ずっと先のことまで考え始めている。「思うんです。20年後、子供たちが巣立ったら、また背の低いスポーツカーに乗れたらいいだろうなと」。寝室から愛車が見える家ができて、Mさんのクルマ好きは加速したのかもしれない。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一



■建築家:中佐昭夫 1971年広島県生まれ。早稲田大学大学院修了。山本理顕設計工場勤務を経て、広島時代の同窓、中薗哲也と共同で事務所を設立。写真は代表作のひとつである自邸。保育園も多く手掛け、しぜんの国保育園では、グッドデザイン賞の他多くの賞を受賞。愛車はアルファロメオ75

■お知らせ:雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。必見です!


(ENGINE2018年3月号)

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