2019.06.26

LIFESTYLE

家の中は路地だらけ! チューブでつながる高床式住宅の室内は驚きに満ちている!!

チューブでつながった不思議な家。

チューブが交差する家

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さて、家の中心となるのは、中央棟の2階にある天井高が3mほどあるリビングルーム。1階の玄関(南棟1階)から、階段を上れば、必ずここにたどり着く間取りだ。そしてこのリビングからは、同じ階のダイニング(南棟)と、子供部屋(北棟)、そして3階の寝室(北棟)と、前述の玄関へと合わせ合計4本のチューブが伸びている。武田さんが建築家にお願いした、「数値的に広くなくていいから、広さを感じられるリビングと、そこを介して各部屋に行く構造」を実現させた形だ。そして中央棟の3階は、家事動線を考え、風呂、トイレ、洗面、洗濯機置き場、物干を1か所にまとめた水回り。ここから北の寝室と南のダイニングへ2本のチューブがつながっている。



住宅密集地だが明るい

武田邸は、中庭に面した窓から、チューブに反射した光が室内に入る仕組みになっている。そのためそれぞれの部屋は明るい。すぐ近くに、隣家が迫っているのを忘れるほどだ。そのうえ窓から空や隣家の壁など外部の景色が見えるので、狭さは感じない。

チューブは、大人が荷物を持って通るのがやっとの部分もあれば、壁に棚が設けられ、ちょっとした部屋くらいの幅のところもある。しかも、水回り以外はこの家には扉が存在しない。だから、直接顔が見えなくても、家族の気配を感じるものだ。形は入り組んでいるが、ひとつの大きな部屋に居るような感覚である。加えて家の中での移動距離が長いので、延床面積よりもはるかに広い家のように感じられた。



建築家の竹口さんは説明する。「南イタリアやギリシャには、細い路地が入り組んだ集落がいくつもあります。道がカーブして先が見えないと、その先に何があるかワクワクするとともに、広がりを感じるものです」。

そうした集落の仕組みを家の中に組み込んだのが武田邸である。もっとも、こうした変わった形を最初から目指していた訳ではない。建て主が出した機能面の要求を、建築家が優先順位をつけて設計した結果、できあがったのがこの家だ。お子さんたちが成長して、学校の友達たちが遊びに来るようになったら、間違いなく人気の家になるだろう。

もしもの時に備えて

武田さんたちの家は、家の中に居ても、窓から隣家や、場所によっては道行く人の脚が見える。逆にこれは、外部から家の中の雰囲気が少し分かることを意味する。かかる設計になったのは、この家が東日本大震災の前後に設計・施工されたことと大きく関係している。震災時、知らない者同士が急に助け合い、それまで全く行き来が無かったお隣さんと知り合いになることが起きた。竹口さんたちはこの教訓を設計に活かし、近隣との接点を設けたのだ。

しかもこの地域は、南海トラフ巨大地震が発生した場合、2mほど水没することが予想されている。鉄製の脚で2階以上のスペースを支える作りとしたのは、そのためだ。この鉄製の脚は、6.5cm角の無垢材で、何かの理由で一本を失うようなことがあっても、家の構造を保つ強さを備えている。

あれからもうすぐ7年。もしものことに備えて家を建てることを、我々は少し忘れてしまっているのかもしれない。



■建築家:竹口健太郎+山本麻子 共に1971年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、アルファヴィル一級建築士事務所を共同設立。個人住宅だけでなく、商業施設、宗教施設などを手掛ける。代表作は「カトリック鈴鹿教会」。作品は国内だけでなく、海外のメディアでも紹介され、国際的な賞の受賞経験も。神戸大学や京都大学で、後進の指導にもあたっている。

■最高にお洒落なルームツアー「東京上手」がYouTubeチャンネルでスタート!
雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。建築、インテリア、アートをはじめ、地方の工房や名跡、刺激的な新しい施設や展覧会など、ライフスタイルを豊にする新感覚の映像リポート。第1回配信は、エンジンでも紹介したことのある国際的建築家、窪田勝文さん設計の山口県のミニマリスティックな住宅。最新のルームツアーは、名建築家、宮脇檀が設計した別荘をダイジェストで紹介中。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなライフスタイル番組は必見の価値あり!


(ENGINE2018年3月号)

◆愛車と暮らす理想の住まいを求めて!
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