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レンジローバーの末弟として登場した初代イヴォークは革命児だった。イヴォークの元になったコンセプト・カー〝LRX″はBMW X6と奇しくもほぼ同じタイミングで登場し、ともにクーペ・スタイルSUVという新たなジャンルを産み、多くのフォロワーが現れた。はじめて試乗した時、コンセプト・カーがショウ会場から飛び出したみたいだ!と思ったのを鮮明に憶えている。
2代目は兄貴分のヴェラールからつるりとしたマスクや左右ランプをつなぐリア・ガーニッシュなどを踏襲したが、後方に向ってなだらかに降りていくルーフ・ラインや、勢いよく駆け上がるショルダー・ラインなど、これぞイヴォークという記号性はそのままだ。車体はわずかに拡大したが、シルエットもほぼそのまま。初代イヴォークは累計77万台のヒット作で今やレンジローバーの屋台骨。変革を避けるのは当然だ。
むしろ大変革を遂げたのは中身の方だ。なにせPTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)と呼ばれる新世代プラットフォームを使った2代目イヴォークは、フリーランダー2ベースの初代と共通なのはドア・ヒンジのみ。フロント・サスペンションのアッパーマウントなどに一部アルミも用いるが、基本はスティール・モノコックで、3ドアやコンバーティブルの設定はなく5ドアのみとなる。最大のトピックは電動化に対応したことだ。
イヴォーク初のハイブリッド・システムはフロア下の0・2kWhのリチウムイオン・バッテリーとオルタネーター代わりのBiSG(ベルトドライブ・インテグレーテッド・スタ ーター・ジェネレータ)の組み合わせ。17 ㎞/h以下でブレーキを踏む とエンジンを停止し、回生エネルギ ーをバッテリーに蓄え、その電力を用いてBiSGが14・3kgmのトルクで発進をアシスト。約6%の燃費改善を実現するという。日本仕様はすべて2ℓ過給のインジニウム・エンジンで、ディーゼル(180ps)とガソリン(200ps、250ps、300ps)の全4種類。このうち300ps仕様のみハイブリッド・システ ムが組み合わせられる。
駆動方式は基本ハルデックス・カップリングを用いたオンデマンド式4WD。ただし試乗したハイブリッドのP300だけは前後輪の駆動遮断装置と、ディファレンシャルに代わり後輪左右ベクタリングを可能にする電子制御多板クラッチを2つ備えている。
品川で車両をピックアップして混み合う五反田駅前を抜け、高速入口を目指す。走り出しから印象的だったのはエンジンや変速機、ステアリングや足の仕立てといった感触すべてのスムーズさだ。静粛性も初代より一枚上手で、室内の意匠のせいか、まるでヴェラールに乗っているような気分になる。ただしモーターのみの走行はしないので、いわゆるハイブリッドらしさは感じない。500㎞ほど高速中心に走ってみたが、燃費は10㎞/ℓ前後に止まった。都市部での使用が少ないなら、60㎏以上軽くなる純ガソリンかディーゼルに歩があるはずだ。
御殿場で高速を降り、峠道にさしかかると2代目イヴォークはさらに別の顔を見せた。オール・ニューのプラットフォームを得た効果は絶大。ちょっとビックリするくらい走りがいい。〝ダイナミック″、〝コンフォ ート″と硬軟を選択できる電子制御式ダンパーは変化の幅がさほど大きくはないが、こつこつと路面の凹凸を拾うきらいのあった初代のものよりも、両モードともずっとしなやかだ。ステアリング・フィールも上々で、2トン弱の背が高いSUVとは思えないくらい機敏かつ自然な反応を見せる。狭い長尾峠のような所でも、幅の広い車体を狙い通りに操れるのが気持ち良くてたまらない。
初代イヴォークは優秀な実用SUVだったフリーランダー2に強力な 吸引力のあるスタイリングを組み合わせ、それによって生じた不都合を丁寧に打ち消した秀作だった。けれどスタイリングの良さはそのままに、中身をゼロから構築した2代目には、もはや非の打ち所が見つからない。これはまさに理想的な進化だ。
カメラ映像をデジタル処理し前方下部をモニターに映す"クリアサイト・グラウンドビュー”。鮮明だが作動は30㎞/hまでで表示にわずかにタイム・ラグがある(左上にNOTLIVEと出ている)。
室内中央の2枚の液晶やクヴァドラ社の肌触りのよいテキスタイルなど外観以上にヴェラールとの近似性が感じられる室内。欧州仕様の数値で比較すると車体は先代比で全長が+6㎜の4371㎜、全幅(ミラー収納時)が+34㎜の1996㎜、全高が+14㎜の1649㎜とわずかに拡大。軸距は+21㎜の2681㎜で後席ニー・ルームが+20㎜、荷室容量も10%拡大し472ℓに。アンテナ一体カメラの映像をバックミラーに映す"クリアサイト・リアビューミラー"も装備。
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文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=神村聖
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