2019.12.08

LIFESTYLE

クルマ好きの理想の家! 旧車のミニと豊かな自然の里山で暮らす 


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それとは別に、走るためのクルマも所有してきた。好みは、古くて、小さい、可愛いクルマ。22歳の時に手に入れたのは、SP311型と呼ばれる丸い目をしたオープンのダットサン・フェアレディ(1967年型)だ。走るのにうってつけのワインディングロードが近くにあり、その先の峠で旧車クラブの仲間と落ち合い、情報交換を行う週末が何年も続いている。



ガレージの中にもうひとつの屋根が見えるが、途中に雨樋があり雨でもクルマが濡れることは無い。現在の愛車のミニは、「女性オーナーが、故障が多いからと手放したが、僕の所では全く問題ない」とか。カニ目の愛称で呼ばれるオースチン・ヒーレーは、友人の手に渡ったかつての愛車。

15年乗ったフェアレディを、写真のオースチン・ヒーレー・スプライトMk.Ⅰ(1959年型)と交換したのも、旧車クラブの仲間である。10年ほど乗ったが、4年前に東京へ転勤となり、幼馴染で旧車仲間の友人に譲ることに。転勤から戻っても、友人としては、簡単にヒーレーを返すことはできないだろう。そのような訳で現在は、内外に手が入ったお洒落なインテリアのローバー・ミニ(1994年型)で、峠のドライブを楽しんでいる。こうした古いクルマのメンテナンスは、自分で行わずに信頼おけるショップにお任せ。心残りなのは、数年前にそのお店から声を掛けられたのに見送ってしまった、古いアルピーヌA110だ。

そんな佐川さんの家は、2台が縦列駐車できるように設計されている。普段停まっているのは、ミニと通勤やレジャーで使用しているワンボックス・カー。小さいクルマが好きなため、車庫のサイズも少し小さめだ。

そもそも佐川さんが、建築家の小松さんにお願いしたのは、明るく、既存の庭が見える縁側のある家。そのうえ、面白い家に住みたいともリクエストした。

そして小松さんが設計したのは、かかる要望と、周辺環境や長年のご近所さんとの関係を配慮した、以前と同じ平屋構造の家である。周囲にはトーンの異なる3色のグレーの屋根瓦を使った家が多いので、佐川邸も屋根だけでなく壁にも同じような3色の屋根材を貼り、風景に溶け込むように心がけた。西隣の家に住む両親は、佐川さんの家の南側にある庭を通って出入りしている。そこで庭に面した部分に、祖父母の建てた日本家屋と同じような、長い軒下と大きな開口部、そして現代の縁側のようなスペースを設けた。縁側部は、腰かけるには少々高いが、季節の良い時期は大きな窓を開け放ったままなので、庭から屋内の家族と簡単にコミュニケーションできる仕組みになっている。





そしてこの家の大きな特徴が、南北に深い平屋の北側の部屋に太陽の光が届くよう、中庭を設けていること。しかもこの庭が、段々畑のような構造で、観葉植物が植わっているのだ。この中庭を実現させるための、家の構造が実にユニーク。南、中央、北の3つのブロックに分け、床の高さが工夫してあるのだ。玄関、キッチンなどがある中央のブロックは、地面のレベルの高さだが、リビングダイニングなどがある南は、床が90センチ上がっている。そして北も、南と同じく90センチ上に。こうしてできたギャップを利用し、段々の中庭が生まれたのである。結果、北側の部屋は、希望通りの明るい空間に。しかも爽やかで解放感がある。また、この中庭があるから、リビングダイニングの北側上部に窓を設けることができ、風通しが良好になった。そして何より、段々畑に植物の植わった中庭があることで、建て主が希望した面白い家になったのではなかろうか。


この家で、まだ小さい子供たちはどのように成長していくのだろう。そして、旧車好きの佐川さんのカーライフは、どう変化していくのか。いずれにしろ里山にある佐川邸は、豊かな生活を送るのに相応しい舞台だと思う。



■建築家:小松隼人 1979年、広島県生れ。立命館大学大学院修了。SUPPOSE DESIGN OFFICEを経て独立。40歳前後で最も活躍している建築家のひとりで、最近は瀬戸内の景観を生かした住宅や大きな施設の依頼も。広島近県のクライアントには、愛車ジープ・ラングラーで出かける。将来はこのクルマで子供とキャンプに行くのが夢。


文=ジョー スズキ 写真=山下亮一


(ENGINE2020年1月号)

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