セダンから1年遅れて追加された7代目3シリーズ・ベースのステーションワゴン。ボディ後半部分を変更することでワゴンに仕 立てる手法は歴代モデルと同じ。十分な荷室容量を確保しつつも、スポーティでスタイリッシュなデザインを持つ。なお、5人乗車時の荷室容量は先代よりも5ℓ拡大し、500ℓになった。全長 ×全幅×全高=4715×1825×1440mm、ホイールベース=2850mm。全高以外はセダンと変わらない。190ps/40.8kgmの2.0ℓ直4ディーゼル・ターボのほかに、2.0ℓ直4と3.0ℓ直6のガソリン・ターボが用意されるが、ディーゼルと直6は4WDのみの設定となる。320d Mスポーツは666万円。
約1年前に導入された新型3シリーズは今までにも増して"駆け抜ける歓び"に力を入れてきた。その分ちょっと乗り心地が硬めではあるものの「電動化や自動運転ばかりが注目されている今だからこそ、3シリーズの魅力を思いっきり追求したかった」というエン ジニアの話を聞いて嬉しくなった。追加されたばかりのツーリングも、セダンとかわらぬ走りが持ち味で、正確性が高く気持ちのいいハンドリングで他を圧倒するが、もう1つのスゴいところがディーゼル・エンジン。
例の問題以降、欧州ではディーゼルに逆風が吹いており、厳格にエミッション規制をクリアするため、レスポンスなどは悪くなる傾向にある。ところが3シリーズのそれは逆に大きく進化。アイドリング+αぐらいの超低回転域から図太いトルクでグイグイと押してくるし、わずかなアクセレレーターの操作に対し敏感に反応。さらに回転上昇感はガソリン並に鋭く楽しさもある。音・振動の少なさや良好な実燃費などあらゆる面で一級品。さすがはエンジン屋のBMWと惜しみなく賞賛したい。
このクルマ、輸入車のど真ん中といってよかろう。「期待通り!」と言い換えてもいい。いや、もう少し正確に表現するなら、全ての点で予想を少しずつ上回ってくるのだった。例えばエンジン。最近のディーゼルって静かでクリーンでパワフルだと考えていることだろう。実際、新世代のディーゼルって全体的に素晴らしい。けれど320dの場合、おそらく変速機やエンジン・マウント、そしてFRということもあるんだろう。期待以上に 快適かつスポーティです。
また最近話題の運転デバイスなんか世界最先端だったりする。自動ブレーキは最も新しいモービルアイのトリカム(3眼カメラ)を 採用しており、クルマの陰から出てくる歩行者に対する停止性能は世界一!優秀なセンサー類をフルに活かし、渋滞時は手放し運転も可能。さらにレーンキープ・アシスト時はハンドルに触っているかどうかの判定に、触れているだけでOKの高機能静電センサーを使う。もちろんステアリング・フィールを含めた走りの味はステキです。迷ったら320dを推奨しておく。
ご存知のとおり3シリーズにツーリングが設定されたのは2代目E30からで、今回のG20型は通算6世代目になる(E36はアルピナのみでBMW版は輸入されなかった)。日本車もワゴンがブームになった頃は車種も豊富だったが、今はすっかり下火に。それを思うにつけ、欧州メーカーの多くがそうであるように、首尾一貫ツーリングを設定し続けているBMWの姿勢自体がエラいし、スゴい。一過性のファッションではなく、地に足がついた必要な道具と捉えている訳だ。
最新型では、ラゲッジ・スペースに載せた荷物が走行中に暴れにくくするために、フロアのレール部に仕込んだ滑り止めのゴムが自動でせり上がる仕掛けが新設された。便利なガラス・ハッチは4代目のE46以来のツーリングの特徴で今回も採用。試乗車は2.0ℓの4気筒ディーゼル+4WDかつMスポーツだったが、2019年7月生産以降のセダンに準じたクルマといい、足のしなやかさも実感できた。心情的には外観から" ホフマイスター・キンク"が消えたのは少し寂しい。
このところ密かにディーゼル車が販売台数を伸ばしているのをご存知ですか? 実は日本でのディーゼル車の販売台数は昨年過去最高を記録。なかでもBMWはディーゼル・モデルを充実させていて、ラインアップ数は現在35モデル。ディーゼル車の販売比率は全体の約40%にも及びます。BMW車のなかでもツーリングのようなステーションワゴンを選ぶ人は実用的に使うことが多いので、実用回転域の駆動力が高く、運転する楽しさと燃費性能が優れたディーゼル・エンジン車が求められているのかも。しかも日本では軽油の価格はハイオクに比べると約20円前後安価です。
そしてツーリングと言えばラゲッジ・ルーム がポイントですが、BMW初採用の荷物の滑り止め機能「アンチ・スリップ・システム」を装備。バック・ドア を閉めれば床面からゴムの滑り止めが出てきて荷物の横滑りを防ぎます。さすがBMW!駆け抜ける歓びを実現するためには確かに荷物が後ろでゴロゴロ......なんて気になって運転に集中できないですから。
SUVよりもステーションワゴン、セダンよりもステーションワゴンが好きという、私みたいな"少数派"にとって、魅力的なモデルが切磋琢磨する輸入車の世界は、まさにパラダイス。なかでもこのBMW3シリーズのツーリングは、フルモデルチェンジでよりスタイリッシュ になった上に、運転しやすいちょうどいいサイズがうれしい、輸入ステーションワゴンの定番モデル。「駆け抜ける歓び」のBMWらしく、ステーションワゴンであっても、エンジンがディーゼル・ターボであっても、走り出した瞬間からクルマを操る楽しさをドライバーに伝えてくるのがスゴイ!
アクセレレーターの動きに対して即座に強力なトルクを発揮する2.0ℓ直列4気筒ディーゼル・ターボは、40.8kgmという最大トルクもさることながら、レブリミットが5000rpmに刻まれたタコメーターさえ忘れれば、ディーゼルの持つ実直なイメージを払拭するスポーティさでドライバーを楽しませてくれる。軽快な身のこなしも手伝って、まさにツーリングに出かけたくなる一台である。
(ENGINE2020年4月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.11.23
LIFESTYLE
森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わ…
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.22
WATCHES
パテック フィリップ 25年ぶり話題の新作「キュビタス」を徹底解説…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
2024.11.20
抽選販売の日時でネットがざわつく 独学で時計づくりを学んだ片山次朗氏の大塚ローテック「7.5号」 世界が注目する日本時計の傑作!