1シリーズと同じエンジン横置き前輪駆動のプラットフォームに、流麗な4ドアのクーペ・ボディをまとったBMWの新しい小型モデル。その完成度は兄貴分の3シリーズを脅かすのではというものだった。
クーペ&カブリオレと、アクティブツアラー&グランツアラー。従来の2シリーズはFRのスポーツ系と前輪駆動のユーティリティ系という両極に振れたモデルしかなかった。そこに新たに加わったのが2シリーズ・グランクーペ。眺め、触れ、乗ってみて、ひょっとするとこいつは3シリーズを食うかも?と思った。
プラットフォームはFF化された現行1シリーズと共通。しかし傾斜したルーフ・ラインとショート・デッキ、1シリーズよりも35mm低い全高が完成度の高いプロポーションを作り出している。欲をいえばグリーン・ハウスがあと20~30mm薄ければさらにスタイリッシュになっただろう。しかし、そこは後席スペースとのトレードオフ。実際、大柄な大人が乗っても頭がつかえることはないし、レッグ・ルームにも余裕がある。430ℓという荷室容量を含め、スペース面での不足はない。それでいて1シリーズで感じた外観のドテッとした印象があらかた消え去り、BMWらしい都会的でスポーティな佇まいを見せているのが嬉しい。
主に試乗したのは306psの2ℓ直4ターボを積んだ高性能モデルのM235ixドライブ(4WD)。まず感心したのが質感の高い乗り味だ。脚はそれなりに引き締まっているが、路面からの入力を強靱なボディが受け止め、ダンパーが一瞬にして減衰するため不快な振動が残らない。現在は改善されたが、快適性は初期の現行型3シリーズより上と感じた。ワインディング・ロードではステアリング操作に遅れなく反応するダイレクトな動きが気持ちよかった。小舵角から大舵角まで、あるいはジワッと切るときもズバッと切るときも、常にドライバーの意思に忠実に反応し、狙ったラインを正確にトレースしていく。また、ステアリングを切り込んだ状態でアクセルを踏み込んでも無粋なトルク・ステアはほとんどない。「FFベースとはいえBMWには洗練された乗り心地と自然なステアリングフィールが不可欠であり、われわれはそこに徹底的にこだわった」というエンジニアの言葉に偽りはない。1.5ℓ直3の218iには乗れなかったが、220dに乗ったかぎり、FFモデルのマイルドなドライブ・フィールにも好感がもてた。
3シリーズはちょっと大きすぎるし値段もなぁ、と感じているならぜひとも2シリーズ・グランクーペに注目して欲しい。FFベースだってちゃんとBMW味に仕上がっている。
文=岡崎五朗 写真=ビー・エム・ダブリュー
(ENGINE 2020年5月号)
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