これまで出会ったクルマの中で、もっとも印象に残っている1台は何か? クルマが私たちの人生にもたらしてくれたものについて考える企画「わが人生のクルマのクルマ」。自動車ジャーナリストの日下部保雄さんが選んだのは、「フェラーリ250LM」。少年時代に自動車雑誌で目にしたこのクルマが、人生をモーターレーシングへ導くきっかけになったと振り返る。
スポーツカーとレーシングカーの境目が曖昧な時代に誕生した最後のGT
物心ついた時からクルマと共にあった。
生まれたところは東京の神田。我が家はタクシー会社の傍らにあり、父はそこの地主であり従業員でもあった。排ガスと共にあったというのは決して過言ではない。ある日の早朝、雨戸の前で暖気運転するタクシーの排ガスが家に充満して、危うく一家心中するところだった。可愛がってくれた運転手はボクを助手席に乗せて営業運転してくれたが、乗り込んできたお客さんも別に文句も言わずにニコニコしていた。おおらかな時代だったのだ。
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