2020.09.02

CARS

ピンツガウアーというクルマを知っていますか?「丹念に保革油を擦り込まれた傷のある山靴」のような初代レンジローバーを愛し、派手な街乗りSUVづくりに走るメーカーに手厳しかった四輪駆動車の権威、故石川雄一さんの言葉がすごい!

自動車ジーナリストの塩見智さん

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あらためてクルマとともに過ごしてきた来し方を振り返り、クルマが私たちの人生にもたらしてくれたものについて、じっくりと考えてみるスペシャル企画「わが人生のクルマのクルマ」。自動車ジャーナリストの塩見 智さんが選んだのは、「故石川雄一さんのピンツガウアー」。自動車雑誌編集者として、 大御所評論家とも多々仕事をした塩見さんは、四駆界のご意見番に出会って、新たな扉を開かれたと偲ぶ。

クソミソの感想だったトヨタ・ハリアー

いつだったか、当時人気があったトヨタ・ハリアーについてコメントをもらおうと、ある四駆の権威を訪ねた。クソミソの感想しかもらえず、ほとんど使えなかった。その権威とは、陸上自衛隊出身で、創刊メンバーとして『4×4 MAGAZINE』を立ち上げ、後年はより専門性の高い『CCV(クロスカントリーヴィークル)』の創刊編集長として長年本格的な四輪駆動車愛好家に支持された故石川雄一さんだ。

石川さんはハリアーにのみ厳しかったわけではない。SUV全般についてビジネス上の存在理由を理解しつつも機械として一切認めなかったのだ。例えば、長年にわたって初代レンジローバーを愛用されていた石川さんは、自著のなかで最近のレンジローバーについて、「そのスタイルは靴で言えば丹念に保革油を擦り込まれた傷がある山靴だと思う。それなのにどうしてピカピカなエナメル靴なのだろうか。木綿やツィードのカントリージャケットに通じるものだと思うのだが、演歌歌手の舞台衣裳というような頓珍漢なスタイルはいかがなものだろうか」と嘆いた。


また、「オリジナルな『ランドローバーらしさ』『レンジローバーらしさ』を魅力と感じてオーナーになられたのであれば、それを崩すようなスタイルは避けてもらいたい。派手派手なユーザーが増えてくると1台でも多く売りたいメーカーもそれに合わせて商品を作る。すると結局は『らしくない』LRやRRが作られるようになる。新しいモデルにはハイテクと呼ばれる電気仕掛は満載されているが、シャシーはデトロイトの量産四駆と同程度に手抜きされている。これ以上、私達の好きなLRがLRらしさを失って他の四駆と同質化していくのを防ぐのは我々ユーザー次第だ」とメーカーのみならず、オーナーにも容赦がなかった。

クルマはあくまで道具であり、機能こそが重要であり、飾り立ては不要という評論スタンスを貫いた。その痛快な言説に毎度感心しつつも、そこまでおっしゃる石川さんはいったいどんなクルマに乗っているのかと思い、ある時やや挑戦的に尋ねたら見せてくれたのがこのクルマだ。

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