村上 今回あらためて新しいマカンに乗って「えぇーっ」と思った。最初のマカン、前期型に乗ったときは、小さくてキュッと締まった印象だったんだけど……。
齋藤 記憶は美化されるから。
村上 こんなに大きなクルマだったんだっけと驚いた。
新井 デカイと感じました。
齋藤 カイエンはそもそも北米やロシアを考えて作ったクルマだから、なにもかも大きい。ボディだけじゃなくて、顔のつくりもそう。大きく見せる造形。もちろん、それでもアメリカ・メーカーのフルサイズSUVよりはひと回り小さいわけだけどね。一方でマカンは欧州市場をターゲットに、いかにもポルシェらしく小さくスポーティに見せる仕立てでしょ。ところが実際には、寸法上、大きな隔たりがあったわけじゃないんだよね。
村上 そうなんだよね。サイズはけっこう大きい。実際乗った印象も大きなクルマに感じた。前のはこんなに大きく感じなかったんだけどなぁ。それと、マカンはざっくりとした麻のシャツのような肌触りだったように記憶しているんだけど、今回乗ったら、もっと高級な、滑らかな肌触りのクルマに変化しているように感じた。印象がずいぶん違うんだよ。
齋藤 それは一発決めの標準サスペンションに標準サイズのタイヤを履いた初期型マカンのあの強烈な印象が強く残っているからだよ。しなやかにジワリとボディを深くロールさせながら、いかにもポルシェ的な手ごたえのある操縦感覚を身体に刻みつける乗り物だったでしょ。素晴らしい仕立てだと舌を巻いたのを僕もよく覚えている。
村上 気持ちのいいクルマだったよねぇ、あれは。
齋藤 今回は4気筒の素のマカンにもPASMがオプション装着されてタイヤもインチアップされ、6気筒のSやターボと同じ動き方をする仕立てになっていたよね。
村上 その6気筒系はさ、今回ターボだけじゃなくてSもオプションのエアサスが組み込まれていて、触感が完全に高級車のそれになっていたでしょ。立派な人になっちゃって、という感じがした。4気筒の素は金属スプリングで、しかも卸したてということもあって、そこまでではないにしても、立派な人になっちゃった感は強くあった。
齋藤 脚のオプションで印象は大きく変わるよねぇ、ポルシェは。マカンも例外じゃないと思う。でも、全体に上級指向が強くなったのは間違いなんだと思う。
村上 それと、今回3台に乗ってみて、今度はちゃんとヒエラルキーがついているんだと思った。
齋藤 同じ方向性のなかで、お金を出せば出した分だけイイ物になる。 前期型の素のマカンにあったああいう方向性を捨てている可能性もある。
上田 BMWの初代X1の素の後輪 駆動のモデルがあったじゃないですか。あれにもいかにも昔ながらの肌馴染みの良いBMWの良さが溢れて いましたよね。初代マカンの素の4気筒にはああいう良さがあった。でも、X1の場合もシリーズ全体がそういうものではなかったですよね。 たまたまそのモデルが、みたいな。
新井 与えられた機械構成の良さをそのまま素直に引き出しました、という感じの仕上がりだった。
齋藤 でも今回の4気筒モデルはオプションの助けを借りてはいるけど、まずポルシェとして中型SUVをどう走らせたいのかということが始めにある感じだよね。
村上 前のはターボにはターボの、素の4気筒には4気筒の味があったけれど、新型にはそういうところがなくなって、ちょっと残念。
齋藤 でも見方を変えると、パワーはそんなになくてもいいけど、装備を充実させたいという人には好都合なんじゃないの。パワーの違いによらず方向性は同じなわけだから。エンジンの違いで少なからぬ価格差があるから、そこで浮いたお金を装備の充実に回したいという人は少なくないでしょ。ポルシェのオプションって、そういうことができる。
村上 そういう意味では、この素の4気筒で必要十分。よくこんなに大きくて重いクルマを軽々と走らせるなぁと感心するほどだからね。
齋藤 1人乗っただけで2tになろうかというクルマを軽々と走らせる。ストレス・フリー。それに、踏めば速い。排気量を忘れていられる。エンジンを負荷がかかった状態で使えるうま味が引き出されている。それと、7段変速機の最終減速比まで含めたギア比配分が巧妙だよ。
村上 走りの質感もがさつなところがない。すごく上質。
齋藤 ロールの少ないフラットな姿勢を維持しながら、当たりを柔らかくして、機敏な動きにもゆったりとした動きにも自在についてくる、というのが今の方向性だし、主流でしょ。新型はシリーズ全体がそういう仕立てになっていることが分かった。
村上 その観点からすると、エアサスが圧倒的に有利だと思った。この方向を目指すのだったらエアサスが付いていた方が積極的に好ましい。そういう部分で、素からS、そしてターボに乗り換えていくと、どんどん素晴らしいものになっていく。お金があるならターボがいい。
齋藤 パワーのあるモデルになればなるほど車両重量は増えるけれど、走らせての印象はその真逆。どんどん軽やかになっていく。加速力と制動力が強力になるだけでなく、動き方全体が軽快になっていく。統一感も上がっていく。まさにポルシェ。
村上 スポーティさが増すと同時に高級感も上がっていく。そこのところで、ターボは頭抜けていた。
齋藤 アウディのプラットフォームとエンジンを使って、ポルシェでしかありえない世界を作っている。ポルシェの仕事の本当の凄さって、そこにあるんだと痛感させられたよ。
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
話す人=村上 政+新井一樹+上田純一郎(すべてENGINE編集部)+齋藤浩之(まとめ) 写真=神村 聖
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
2024.11.16
【詳細解説】320iセダンと420iクーペがドライバーズカーである理由を、自動車評論家の菰田潔が語る なぜBMWは運転が楽しいクルマの大定番なのか?
advertisement
2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement