2020.09.26

CARS

最新ポルシェ10台、国内イッキ乗り!  マカン、マカンS、マカン・ターボの3台に試乗した ポルシェの仕事の凄さがここにある

立派な人になっちゃって

村上 今回あらためて新しいマカンに乗って「えぇーっ」と思った。最初のマカン、前期型に乗ったときは、小さくてキュッと締まった印象だったんだけど……。


齋藤 記憶は美化されるから。


村上 こんなに大きなクルマだったんだっけと驚いた。


新井 デカイと感じました。


齋藤 カイエンはそもそも北米やロシアを考えて作ったクルマだから、なにもかも大きい。ボディだけじゃなくて、顔のつくりもそう。大きく見せる造形。もちろん、それでもアメリカ・メーカーのフルサイズSUVよりはひと回り小さいわけだけどね。一方でマカンは欧州市場をターゲットに、いかにもポルシェらしく小さくスポーティに見せる仕立てでしょ。ところが実際には、寸法上、大きな隔たりがあったわけじゃないんだよね。


両バンクからの排気を内側でまとめ大型のシングルターボを回すSの3.0リットルV6ユニット。写真は樹脂製遮音カバーを外した状態。


村上 そうなんだよね。サイズはけっこう大きい。実際乗った印象も大きなクルマに感じた。前のはこんなに大きく感じなかったんだけどなぁ。それと、マカンはざっくりとした麻のシャツのような肌触りだったように記憶しているんだけど、今回乗ったら、もっと高級な、滑らかな肌触りのクルマに変化しているように感じた。印象がずいぶん違うんだよ。


齋藤 それは一発決めの標準サスペンションに標準サイズのタイヤを履いた初期型マカンのあの強烈な印象が強く残っているからだよ。しなやかにジワリとボディを深くロールさせながら、いかにもポルシェ的な手ごたえのある操縦感覚を身体に刻みつける乗り物だったでしょ。素晴らしい仕立てだと舌を巻いたのを僕もよく覚えている。


村上 気持ちのいいクルマだったよねぇ、あれは。


齋藤 今回は4気筒の素のマカンにもPASMがオプション装着されてタイヤもインチアップされ、6気筒のSやターボと同じ動き方をする仕立てになっていたよね。


村上 その6気筒系はさ、今回ターボだけじゃなくてSもオプションのエアサスが組み込まれていて、触感が完全に高級車のそれになっていたでしょ。立派な人になっちゃって、という感じがした。4気筒の素は金属スプリングで、しかも卸したてということもあって、そこまでではないにしても、立派な人になっちゃった感は強くあった。


齋藤 脚のオプションで印象は大きく変わるよねぇ、ポルシェは。マカンも例外じゃないと思う。でも、全体に上級指向が強くなったのは間違いなんだと思う。


ポルシェ・マカン・ターボ

村上 それと、今回3台に乗ってみて、今度はちゃんとヒエラルキーがついているんだと思った。 


齋藤 同じ方向性のなかで、お金を出せば出した分だけイイ物になる。 前期型の素のマカンにあったああいう方向性を捨てている可能性もある。 


上田 BMWの初代X1の素の後輪 駆動のモデルがあったじゃないですか。あれにもいかにも昔ながらの肌馴染みの良いBMWの良さが溢れて いましたよね。初代マカンの素の4気筒にはああいう良さがあった。でも、X1の場合もシリーズ全体がそういうものではなかったですよね。 たまたまそのモデルが、みたいな。


新井 与えられた機械構成の良さをそのまま素直に引き出しました、という感じの仕上がりだった。


齋藤 でも今回の4気筒モデルはオプションの助けを借りてはいるけど、まずポルシェとして中型SUVをどう走らせたいのかということが始めにある感じだよね。



村上 前のはターボにはターボの、素の4気筒には4気筒の味があったけれど、新型にはそういうところがなくなって、ちょっと残念。


齋藤 でも見方を変えると、パワーはそんなになくてもいいけど、装備を充実させたいという人には好都合なんじゃないの。パワーの違いによらず方向性は同じなわけだから。エンジンの違いで少なからぬ価格差があるから、そこで浮いたお金を装備の充実に回したいという人は少なくないでしょ。ポルシェのオプションって、そういうことができる。


村上 そういう意味では、この素の4気筒で必要十分。よくこんなに大きくて重いクルマを軽々と走らせるなぁと感心するほどだからね。


齋藤 1人乗っただけで2tになろうかというクルマを軽々と走らせる。ストレス・フリー。それに、踏めば速い。排気量を忘れていられる。エンジンを負荷がかかった状態で使えるうま味が引き出されている。それと、7段変速機の最終減速比まで含めたギア比配分が巧妙だよ。


村上 走りの質感もがさつなところがない。すごく上質。


各バンクからの3気筒の排気で小型のターボ(計2基)を駆動する"ターボ"の過給システム。これも樹脂製カバーを外した状態。


齋藤 ロールの少ないフラットな姿勢を維持しながら、当たりを柔らかくして、機敏な動きにもゆったりとした動きにも自在についてくる、というのが今の方向性だし、主流でしょ。新型はシリーズ全体がそういう仕立てになっていることが分かった。


村上 その観点からすると、エアサスが圧倒的に有利だと思った。この方向を目指すのだったらエアサスが付いていた方が積極的に好ましい。そういう部分で、素からS、そしてターボに乗り換えていくと、どんどん素晴らしいものになっていく。お金があるならターボがいい。


齋藤 パワーのあるモデルになればなるほど車両重量は増えるけれど、走らせての印象はその真逆。どんどん軽やかになっていく。加速力と制動力が強力になるだけでなく、動き方全体が軽快になっていく。統一感も上がっていく。まさにポルシェ。


村上 スポーティさが増すと同時に高級感も上がっていく。そこのところで、ターボは頭抜けていた。


齋藤 アウディのプラットフォームとエンジンを使って、ポルシェでしかありえない世界を作っている。ポルシェの仕事の本当の凄さって、そこにあるんだと痛感させられたよ。


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話す人=村上 政+新井一樹+上田純一郎(すべてENGINE編集部)+齋藤浩之(まとめ) 写真=神村 聖

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