ポルシェが、911によるワンメイク・レースのベース車両となる911GT3カップの新型を発表した。2021年シーズンからのワンメイク・レースを走ることになるそれは、992世代としては初のレース仕様車となる。
ボディには1990年に964世代でカップカー登場以来、初めて車幅の広いターボ・ボディが採用された。全幅はオーバーフェンダーが大きく張り出したフロントが1920mm、リアが1902mm。またボディの素材は従来通りアルミとスチールを使用しているが、アルミの比率を大幅にアップ。アルミ7:スチール3という使用比率は先代と逆転している。ドアやエンジン・フード、スワンネック形状のステーが支える11段調整式リア・ウイングはカーボン製、ウインドウの一部はハードコートを施したポリカーボネート製といったように、アルミ以外にも軽量素材を多数採用。ボディにスチール製の補強ストラットを追加したものの、乾燥重量は先代比35kg増の1260kgに抑えられている。アルミ製ボンネットには、先端の左右に冷却用エア・アウトレット、中央部にコクピット換気用のエア・インテークを装着。また車内にはロールケージが溶接されるため、万一の際にドライバーの脱出を容易にする取り外しタイプの救助用ハッチがルーフに備わるのは先代と同様だ。
またターボ・ボディ以上に注目なのが、フロント・サスペンション。ノーマル911のストラット式に替え、レース専用911のトップモデル、911RSRの最新モデルと同じダブルウィッシュボーン式が採用された。カップカーが最新型の911GT3がベースになっていることを考えると、2021年春のデビューがウワサされる992世代初のGT3も、もしかしたらフロント・ダブルウィッシュボーン・サスペンションになるのではという期待は高まる。なお、リア・サスペンションはノーマルと同形状のマルチリンク式となる。
基本的なレイアウトはシングル・シーターで、運転席シートは取り付け角度に加え、2段階の高さ調整もできるようになった。また、先代では助手席側足元にあったデータロガーなどを車内後方へ移設。これにより、イベント走行などで助手席が必要になった場合のコ・ドライバー用シートの装着が簡単になった。
964をベースにした最初のカップカーは260psだったが、最新モデルの3996cc水平対向6気筒は最高出力510ps/8400rpm、最大トルク47.9kgm/6150rpmを発生し、最高許容回転数は8750rpmを誇る。このドライサンプ方式のレース・ユニットに組み合わせる駆動系は、パドルシフト付きの6段シーケンシャル・トランスミッションと3プレートの焼結メタル・クラッチ、機械式LSDで構成される。サーキットによっては、ラップタイムが先代比で1%速くなるという。
ポルシェは代替エネルギーの導入に積極的だが、このレース用911もそれに漏れず、通常のガソリンのほかに合成燃料を使用できる。その場合、二酸化炭素排出量の大幅削減が可能になるという。
これまで911のカップカー仕様は、5世代で4251台が製作されてきた。累計販売台数5000台を突破することになるだろう992世代のGT3カップ、デリバリーは2月に開始され、間接税抜きの本体価格は22.5万ユーロ(邦貨換算で約2850万円)とアナウンスされている。
文=関 耕一郎
(ENGINEWEBオリジナル)
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