2021.04.11

CARS

スタイルと料理にこだわるシェフは、アルファ・ロメオ・スパイダーとランドローバー・フリーランダーの2台持ち!

神奈川県・湯河原でフレンチ・レストランを営むシェフは、リア・スタイルに一目惚れした3代目アルファ・ロメオ・スパイダーをずっと持ち続けようと思っている。


ガラス一面の竹林

壁面は大きなガラスで出来ていて、そこに青い竹林が広がっていた。まるで美術館で日本画を観ているようだ。眼前に広がる青の世界が店内に静謐な雰囲気を作っている。店内と書いたのは、そこがフレンチ・レストランだからだ。


「エルルカン ビス」は神奈川県湯河原町の山間にある一軒家のレストランで、2021年3月で開業15周年を迎える。オーナーシェフの伊東淳一さんはアルファ・ロメオ・スパイダーとランドローバー・フリーランダー2の2台持ちだ。


東京・目黒で育った伊東さんは19歳で免許を取得、オートバイにハマッた。


「最初に買ったのはホンダCBX400Fです。それからずっとオートバイ。当時は結構飛ばしました」


バイクだけでなく料理への思いも全開だった。


「誰でもが働けるようなところではなかった銀座のフレンチ・レストラン“レカン”でどうしても修行したかった。8年間務めました。次はヨーロッパだと思い、渡欧したのが25歳のときです」


「エルルカン ビス」の店内に入るとガラスの向こうに竹林が広がる。

フランスからベルギーと料理の修行を経て、フランスの3つ星レストランで働いた伊東さん。さらに見聞を広めるためにイタリアへ渡った。


「イタリア人はファッションとクルマについて熱かったですね。バーゲンのときは大量に買い込んで、寮でファッション・ショーをやるんです。クルマへの情熱もすごかった。フェラーリなんか、もちろん買えないんですけど、そんなことは関係なかったです」


帰国後もオートバイに乗っていた伊東さん。ついにハーレーのロードキング・カスタムを手に入れる。


「大型のツーリング・バイクなのに改造しちゃって、当時住んでいた奥湯河原の山道を攻めていました」


上が「本鰆の酢〆グリル ラディッシュと大根のソース」。日本料理店でも腕を磨いた伊東さんらしく、和のテクニックを使っている。皮目にも細かく和包丁で包丁目をいれ、それを炙っている。下は「蝦夷鹿のパイ包み焼き。赤ワインとポルト酒ソース」。「本サワラ」は歯ごたえが良く、優しくて上品な味わいだった。「蝦夷鹿」はソースと肉、双方の味がそれぞれを引き立てる感じで美味しかった。

後輪がズルッと滑ったとき、怪我をしたら料理が出来ないという気持ちが、峠を攻める楽しさを凌駕してしまった。


「これはまずいと思い、ハーレーをホンダ・クロスロードに変えました」


チェッカーモータース

仕事の関係で湯河原と東京を往復することが多くなり、クロスロードで同じルートを何度も通った。


「東名から環八に入って田園調布の方へ曲がるところにチェッカーモータースがあって、そこにアルファ・ロメオ・ブレラ、スパイダー、アルファGT、159なんかが並んでたんです。6灯のブレラの顔が印象的でした」


通るたびにブレラの顔がいいなあと思っていた伊東さんが思い切って店内に入ると、トップを下したアルファ・ロメオ・スパイダーがあった。


「後ろ姿に一目惚れして、その場で購入を決めました」


2013年6月、ホンダ・クロスロードは2008年式アルファ・ロメオ・スパイダー3.2V6になった。


伊東さんのアルファ・ロメオ・スパイダーは2005年、アルファ・ロメオ・ブレラのオープン・モデルとして登場した。ブレラはジウジアーロのデザインだが、スパイダーのデザインはピニンファリーナとの共同作業で行われた。3.2リッターV6は最高出力260ps/6300rpm、最大トルク322Nm/4500rpmを発生、6MTを介して4輪を駆動する。「フルタイム4WDだから車重が1830kgもあって軽快とは言えないですね」(伊東さん)。 スポーティなインテリアも伊東さんのお気に入り。ドライバーを囲むようなコクピット、アルミ仕上げのパネルに並ぶ3連のサブ・メーターが素敵だ。

「嬉しくて湯河原の自宅まで屋根を開けて帰りました。意外と寒かったこと、Aピラーが寝ているので開放感はそれほどではなかったこと、左ハンドルのマニュアルには慣れるまでちょっと時間がかかったことを覚えています」


ところが2座オープンのスパイダーでは、実用的なクロスロードの代わりにならないことも出てきた。


「フリーランダー2の中古車を探しました。真正面から見た顔が小学生の頃に作った宇宙探索車“ヴァンガード”に似ているんです(笑)。2008年に発売された限定25台のHST、走行1万7000kmを見つけて購入しました」


フリーランダー2は完全な足グルマで、オドメーターは現在7万6000kmを刻んでいる。


「魚の入ったクーラーボックスを積んだり、お客様を駅まで送ったりするのにすごく便利です。アイ・ポイントが高く見切りがいいのも、狭い湯河原の山道を走るのにありがたい。雪は滅多に降りませんが4WDなので安心です」


ランドローバー・フリーランダー2 HSTは2008年、限定25台で発売された。専用グリル、ボディ同色のフロント&リア・バンパー、テールゲート・スポイラー、19インチホイールなどを装備する。3.2リッター直6(232ps、317Nm)+6ATのフルタイム4WD、SUVである。「全幅は1910mmあるんですけど、全長が4515mmと短いのが幸いして湯河原の道でも大丈夫です」(伊東さん)。

ますます好きになる

フリーランダー2はあくまでも実用車なので、買い替える可能性があるけれど、アルファ・ロメオ・スパイダーはずっと乗り続けるつもりだという。


「カーグラフィックのムック本で、当時ピニンファリーナにいたケン・オクヤマさんが、スパイダーのリアを担当したことを知りました。アルファ・ロメオ・ブレラのエクステリア・デザインを手がけたジウジアーロとピニンファリーナとのすり合わせが大変だったとか、いろいろなストーリーが書かれていました。そうかあ、このボディ・ラインにはこんな苦労があったのかと思ったら、ますます好きになりました」


さらにアルファ・ロメオ・スパイダーを持ち続けることには、自身のライフスタイルや仕事のモチベーションにも関わっていると続けた。


「湯河原に店を開いたのはカッコ良さにこだわったからです。ほかの店にはない美しさを求めました。クルマも自分の身の丈にあった美しいものを選びたい。アルファ・ロメオ・スパイダーに決めたのもカッコづけです。旅館の主人はお客さんよりいいクルマに乗るなという人がいます。私は違うと思う。いい旅館だからこそ、主人は自分のクルマや洋服にこだわるべきです。クルマなんて動けばいい、洋服もこだわらない主人の旅館より、こだわるオーナーの宿に泊まりたいと思いませんか?」


奥さんと二人でお洒落をしてフランス料理を食べに行ったりするのにも、アルファ・ロメオ・スパイダーはよく似合うと伊東さんは思っている。これまでにトラブルはなかったのですか? と聞くと、


「トランクに雨水が溜まったりしました(笑)。3.2リッターV6を搭載していますが運動性能はそれほどでもないと思っています。塗装などもドイツ車に比べたら甘いんじゃないでしょうか?でも、そういうちょっとユルイところが私の性分に合ってるんですね」


フランス料理はカッチリとした料理なんだと伊東さんは言う。


「だからフランス料理のシェフでポルシェ好きはすごく多いですよ。私もポルシェ911は好きです。でも、自分はそこまで完璧か? と考えてしまう。911を買うならもっと人間的な成長が必要だと思うんです」


ひとつの街にフレンチ、イタリアン、中華、日本料理のどれをとってもトップ・クラスのレストランがあるのは、世界で東京だけだと断言する伊東さん。湯河原は、最先端を行く東京のフランス料理を感じられるギリギリの距離だという。


「田舎でそこそこ成功して、ポルシェ買ってオッケーというのが一番ダメです」


撮影用に作ってくれた料理をいただいた。ロケーション、素材、調理方法、そしてクルマとすべてにこだわる伊東さんのフレンチはもちろん、素晴らしいのだった。


文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=小林俊樹


(2021年2・3月合併号)

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