ランボルギーニの人気モデル、ウラカンの後輪駆動、EVO RWDにスパイダーが登場。スーパーカーをこよなく愛する清水草一氏が試乗した。
内燃機関を愉しむタイムリミットが近づいている。ガソリン車の走行まで禁止される動きはないが、近い将来、新車は買えなくなる。つまり、内燃機関の進化もその時点で止まるが、残りあと10~15年にして、究極の内燃機関を持つスーパースポーツに乗ることができた。それが、ウラカンEVO RWDスパイダーだ。
厳密には、ウラカンEVOであれば駆動方式やボディ形状は問わないだろうが、とにかくウラカンEVOのV10は、公道を走行可能な乗用車として究極の内燃機関を搭載している。これ以上のレスポンスとパワーを持ち、かつ通常走行にも一切支障のないフレキシビリティを兼ね備えるガソリンエンジンは、過去、存在しなかった。
もう少しカーマニア的に言うと、高回転高出力型多気筒自然吸気エンジンという、フェラーリのお家芸であった分野において、ランボルギーニブランドを傘下に持つアウディのエンジニアリングが、ついに上回ったように思う。あくまで体感的で曖昧な基準によるが、長年フェラーリを崇拝してきた私としては、「やられた」とつぶやくしかなかった。
思えば27年前、フェラーリV8のレスポンスと天まで突き抜けるような回転の上昇感、そして神も見える高貴なソプラノサウンドに魂を奪われ、人生を捨ててもこれを手に入れねば死ねないと思い詰めた者が、最後にランボルギーニにその究極の姿を見るとは、なんという皮肉。
少し頭を冷やして、クルマの詳細を見てみよう。焦点の5.2リッターV10エンジンは、4WDモデルで最高出力640PS/8000rpm、最大トルク600Nm/6500rpmを発生し、スペック的にはウラカン ペルフォルマンテと変わらない。
今回乗ったRWDモデルは、トラクションを考慮して、610PS(449kW)、最大トルク560Nmと若干ダウンしている。にもかかわらず、レスポンスやサウンドの体感は、ペルフォルマンテより明らかに上だった。
このレベルになると、絶対性能はほとんど無意味に近いから、体感がすべて。この、触れただけで火傷をするようなレスポンス、そして宇宙まで到達しそうな回転の上昇は、過去、体験したことがない。そのパワーを伝える7速DCTは、ひたすら電光石火にシームレスである。
ボディは、2014年に登場したウラカンのオープンタイプのそれだが、リヤウイングなしでも空力性能は大幅に向上しており、スタンダードモデルの7倍のダウンフォースを得るという。スパイダーボディをオープンにしたらどうなるのかは不明だが、公道を走る限り、そこにこだわる必要は皆無である。
ルーフを開け放ってアクセル全開で高速道路に合流すれば、異次元世界が待っている。あまりにも凄まじいサウンドと加速によって、突き進む先に極楽浄土が見え、リスクを感じつつも理性が機能せずアクセルを戻せない。つまりこの先は無間地獄かもしれないが、もうどっちでもいい! となる。かつてフェラーリF355スパイダーで感じたこの感覚が、パワーウェイトレシオ約2分の1という超高性能とともに、目の前に突き付けられる。
救いは、フル加速中、トラクションコントロールシステムのゆらぎなのか、スパイダーボディの悲鳴なのか、車体が微妙に左右に揺れ始めることだった。まるで宇宙船の大気圏再突入である。RWDとして物理法則を超える加速を電子制御が実現してると思しき、かすかなサインのように感じられた。
文=清水草一
■ランボルギーニ・ウラカンEVO RWDスパイダー
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4520×1933×1180mm
ホイールベース 2620mm
トレッド 1688/1620mm
乾燥重量 1509kg
エンジン形式 90度V型10気筒DOHC
排気量 5204cc
最高出力 610ps/8000rpm
最大トルク 560Nm/6500rpm
トランスミッション 7段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク
タイヤ 前245/35R19 後305/35R19
車両価格 2919万3598円
(ENGINEWEBオリジナル)
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