5シリーズは現行型で7代目となるBMWの中核サルーン。ご存じの通り、メルセデス・ベンツEクラスやアウディA6がライバルとなる。試乗した530eはプラグイン・ハイブリッド(PHEV)だ。レスポンスに優れるモーターの加勢が期待できる一方で、190kgの重い電池を積むというマイナスの面もある。そんなPHEVを「駆けぬける歓び」というキャッチ・フレーズのもとで走りの良さを売りにするBMWはそれをどう料理してきたか。斎藤 聡氏がリポートする。
現行型BMW5シリーズは2017年のデビュー。Eセグメントにカテゴライズされるミドル・クラスのスポーツ・セダンとして当初から高い完成度を持っていた。しかしデビューから3年、その間、自動車は運転支援やコネクテッドの面で大きく進化することとなった。
2020年9月のマイナーチェンジはまさにそこがポイント。中でも、3シリーズで採用になっていた高速道路の渋滞で機能する「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」の採用は大きい。これを成立させるために採用された3眼カメラ、レーダー、高性能プロセッサーにより運転支援システムの精度と正確性が向上した。
また、iPhoneでドアの施錠と開錠、エンジン始動ができるデジタル・キー「BMWコネクテット・ドライブ・プロフェッショナル」を標準装備するなどコネクティビティのアップデートも果たしている。
今回試乗することになったのは、PHEVモデルの530eMスポーツ。BMWでは、ユーザーの多様なニーズに複数のパワートレインを提供する「パワー・オブ・チョイス」の理念に基づき、ガソリン、ディーゼル、PHEVの3タイプが用意されているが、中でもPHEVは今後主流となるパワートレインとして注目を集めている。今後EV化や電動化が進んでいくと言われている流れの中で、有力かつ興味深いパワーユニットだ。
PHEVモデルは以前からラインアップしていたが、今回のマイナーチェンジでXtraBoost(エクストラブースト)を採用することによって、システム総合最高出力を42ps高め、252ps4(185kW)から294ps (215kW)へパワーアップした。モーター出力を燃費の向上だけでなくスポーツ性にも振り分けているところが注目のポイントとなる。
とはいっても車両重量1910kg。重いバッテリーを積んだPHEVでホントにスポーツ性は確保できるのか、という個人的には大きく気になるポイントだった。
果たして試乗してみると、これがびっくりするくらい良い。BMWのテイストそのものであり、間違いなく駆けぬける喜びがある。
システム出力を42ps引き上げた効果で、フル加速したときの各ギヤの伸び感が明らかに増し、痛快な加速感が得られるようになっている。以前のモデルは1000回転早めにシフト・アップしていたような感覚があったのと比べ、明らかにスポーツ・フィールが増している。
1910kgという車重も気にならない。停止状態からアクセルを踏んだ瞬間、ほぼ最大トルクが出るモーターの特性でクルマの出足はすこぶる軽やかだ。モーターがクルマの重さを巧に相殺してくれ、重量増によるネガティブを意識させないのだ。それどころか、旋回すると前後重量バランスは絶妙。これは前後重量配分だけでなくバッテリーを後席シート下に配置したことで重心が下げり、これが旋回時の安定感につながっているのだろう。
乗り味も上質でいかにもプレミアムスポーツセダンといったものだ。アダプティブスポーツサスの効果なのか、乗り心地からコツコツとした硬質さがなくなり、しっとりしたテイストになっている。
モーター駆動のメリットは低回転域のトルクの太さだけではない。アクセルに対する応答が素早いこと。またエンジンのようにアクセルを深く踏み込まなくてもトルクが瞬時に引き出せること。だからダイナミックな加速性能や、カーブでのコーナリング性能はもちろん良いのだが、それに加えて微細なアクセル操作に対する応答が期待通りにしっかり出るということだ。
いまさらになるけれど、エンジンの吸気や排気バルブのタイミングとリフト量を変化させるバルブトロニックはダイレクトなアクセル・レスポンスを得ることができるシステムとして開発されたが、これはドライバーとクルマとの一体感を高めの技術でもある。じつは、モーター駆動はBMWが望んだアクセル・レスポンスや応答性の良さを容易に作り出すことができるという点で、BMWのクルマに対する考え方に対して、どちらの機構も親和性があるのではないかと思っていた。
今回改めて530eに試乗して、PHEVがCO2削減のための退屈な技術ではなく、走る楽しさを自由に作りだすのにとても有効であるということが確認できた。530eMスポーツには明らかに駆け抜ける喜びがある。BMW5シリーズを代表するクルマの一台として、積極的に選ぶべき理由があると思った。
■BMW530e・Mスポーツ・エディション・ジョイ+
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4975×1870×1485mm
ホイールベース 2975mm
トレッド 前/後 1600/1595mm
車両重量 1910kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V直噴ターボ+交流同期電動型
総排気量 1998cc
ボア×ストローク 82.0×94.6mm
エンジン最高出力 184ps/5000rpm
エンジン最大トルク 300Nm/1350-4000rpm
モーター最高出力 109ps/3140rpm
モーター最大トルク 265Nm/3000rpm
システム総合最高出力 292ps/-rpm
変速機 8段AT
サスペンション形式 前/後 ダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前後 245/40R19/75/35R19
車両価格(税込)840万円
文=斎藤 聡
(ENGINEWEBオリジナル)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.11.23
LIFESTYLE
森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わ…
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.22
WATCHES
パテック フィリップ 25年ぶり話題の新作「キュビタス」を徹底解説…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
2024.11.20
抽選販売の日時でネットがざわつく 独学で時計づくりを学んだ片山次朗氏の大塚ローテック「7.5号」 世界が注目する日本時計の傑作!