2021.03.13

CARS

スポーツカーはもういらない!? 超高性能万能車、アウディのRSモデル、RS7スポーツバック、RS6アバント、RS4アバントに試乗!

先日富士スピードウェイで発表されたばかりの2代目のRSスポーツバックと4代目となるRS6アバントに加え、マイナーチェンジしたRS4アバントも連れて箱根へと赴いた本誌ムラカミ&ウエダと佐藤久実。3台の最新アウディRSに、3人は何を思ったのか。


セダンではなくワゴンの高性能車

上田 今回は上陸間もない3台のアウディRSをイッキ乗りしました。まずライト・ブルーと真っ赤というド派手なのがRS4とRS6のアバント。このRSって起源がRS2アバントだからか、RS=ワゴンっていうイメージが強いですよね。


村上 RS2の登場は1994年。ポルシェ・チューンのアウディ。


上田 そうそう、RS2は開発と製造にポルシェが関わっていました。


村上 注目すべき点は、もう1台の青いRS7も含め、今回の3台はアウディの中でも上級な、縦置きエンジンのクワトロ・プラットフォームを使っていることと、ボディの形がステーションワゴンと5ドアのハッチバックになっていることだよね。普通、こういう超高性能モデルはセダンで作るのに、アウディはアバントとスポーツバックを前面に押し出している。とりわけA4とA6ベースのRSはアバントしかない。


シートの仕立やインストゥルメント・パネルの造形は基本、RS7スポーツバックもRS6アバントも共通。ただし座面や膝あて、ドア内張などのレザー部分に入っているスティッチは、RS6が赤なのに対して、RS7は白になっていた。

佐藤 それ、日本市場だけですか?


村上 ドイツ本国もそうなんだよ。


佐藤 こういう俊足ワゴンって、なんか本当にドイツならではというか、他の国にはないですよね。


村上 アウトバーンがあるから、速さと実用性が直接的に利益に結びつくんだよね。


上田 でも最近は俊足SUVばかりで、RSアバントのライバルは、もうAMG E63 ワゴンくらいですよ。


エンジンはRS6、RS7共通の4リッター V8で、600ps/81.6kgmを発揮。8段ATを介して4輪を駆動する。
RS7の小さなトノカバーの上部には荷室と室内を分ける折りたたみ式の仕切りが備わる。

村上 今回乗って思ったけど、アウディのRSって、ちょっと方向性が変わった。基本アウディはAの上にS、さらにその上にRSがあって、RSはAMGやBMW Mと対抗しなくちゃいけない。だからかなり激しいスポーツ・モデルっていう印象が一昔前はあった。でも、今回乗った3台はとりわけそうだけど、ものすごく乗りやすくて、それでいてスポーティっていう、バランスの取り方が本当に絶妙だった。例えばBMWのM3やM5はもっと激しくて、いかにもサーキット向けだよね。


佐藤 確かに確かに。BMWのMは昔からサーキットっていう感じですね。こっちには寄ってこない。


上田 この3台の中だと、RS6が特に絶妙な感じでしたね。


佐藤 RS6が一番ビックリした。乗るとすごくラグジュアリーで、踏めば速い。見た目はけっこうすごい割に、ぜんぜん尖っていない感じ。


村上 むしろ拍子抜けするぐらいだよね。A7ベースのRS7はもともとメリハリのあるデザインだから、RS6ほど見た目は強烈じゃない。


上田 RS7は色が地味なせいもあったかもしれません。とはいえ圧が強い顔つきは一緒かも。


佐藤 でも、ちょっと意外。アウディってドイツ御三家では一番エレガントっていうイメージなのに。


上田 もはや3台ともオラオラ~とかいいそうな顔ですよね。


佐藤 特にRS6はギャップがすごい。乗るとこんなに上品なのに。


上田 張り出しているフェンダーにぴったり収まるホイール、RS6もRS7も22インチですからね。


村上 ただ、足まわりは少し違う。両方エアサスが標準装備だけど、対角線上のダンパーを油圧で連結するダイナミック・ライド・コントロール(DRC)付きのRSスポーツ・サスペンション・プラスっていう機械式サスペンションがオプションであって、RS7にはそれが付いていた。


佐藤 よりスポーティ指向だと。


RS4アバントのD字型ステアリング・ホイールはオプション。RS6やRS7にも似たデザインで設定はあるが、丸く細身のRS6やRS7の標準タイプの方が扱いやすかった。

村上 とにかく走りを追求するっていう人が一定数いるんだよ、RSって。乗ってみると確かにRS7にはこのオプションは合っているかもね。クルマが常に路面に張り付いているような感じで、凹凸があって伸び上がろうとするのをすぐ止めてくれる。RS7スポーツバックが機械式、RS6アバントはエアサスっていうこの組み合わせは正解だと思った。


佐藤 この2台の4リッターV8エンジンも600psもあるとは思えないくらい常用域で扱いやすいですよね。


村上 高速巡航中はコースティングもするし、48Vのマイルド・ハイブリッドだから回生して充電もしているし、4気筒が休止する時もある。


佐藤 まったく分からなかった。そういうことを感じさせないように、あえて表示もないんでしょうね。


カーボン・ブレーキと20インチ・ホイールはオプション。DRC付きスポーツ・サスペンション・プラスは標準装備。
3リッター V6ターボは450ps/61.2kgmを発揮する。荷室容量は495リッター。

スポーツカーはもういらない?

上田 アウディ全体もそうですけど、特にこのRSシリーズは最新技術をこれでもか、これでもかと延々積み重ねてきましたよね。毎回毎回どこまでやるんだ、って思いますけど。だからそれがてんこ盛りのRS7もRS6もRS4も、全体の方向性は一緒なんですが、走りのキャラクターは思ったより違いました。


佐藤 RS4とRS6に続けて乗ると、特にそう思いますね。RS4の延長線上にRS6はない。RS4のほうがちょっとヤンチャ。対するRS6はずっと上品というか。


村上 サイズ的にも山道をかっ飛ばそうという人はRS4の方がいい。でも、いろんな用途を幅広くカバーできるのはRS6のほうだった。


上田 確かにRS6の万能感はすごい。でも、昔は速いワゴンって、どっち付かずなところもあったと思うんですが、ここまで来ると……。


佐藤 そうそう。ここまで技術が進むと、昔は二律背反していたことが両立できてしまう。まるで物理の法則がひっくり返ったみたい。


村上 物理学で縛られている部分を超えるくらい技術が進んだ。その上、それがまったく違和感がなくて、自然なことがすごいよ。


佐藤 後輪操舵も、パーキングスピードでUターンするまで気がつかなかった。クルマによってはすぐに意識させられるものもあるのに。


村上 いやはや、ここまで何でもできちゃうとなぁ……。


上田 ……スポーツカー、いらないっていう人がいてもおかしくない。RS6かRS7、どちらを選ぶかは、もはや好みの問題ですかね。


村上 スポーツバックって、意外と男の人が好むんだよ。自分はちょっとお洒落だって、思われたいというか、セダンだとサラリーマンっぽくて嫌だって人が乗る。


佐藤 セダンはフォーマルといえば聞こえがいいけど……。


上田 真面目な堅物みたいな印象ですよね。対するアバントは?


村上 家族的というか、どっちかといえば女の人が好きなんじゃないかな。僕は昔、アウディのアバント、乗っていたけど。でも次に買うならスポーツバックがいい。


一同 笑。


ドライバー正面パネルは様々な表示が可能だが、面白いのは現時点で出力とトルクが何%なのかを示すメーターがあること。普通に走っている分には0~10%ほどの範囲に収まる。ドライブ・モードは中央のパネルからも切り替えられるが、ステアリング右の“RSモード”スイッチでも可能。
22インチ・ホイールとカーボン・ブレーキはオプションだが、試乗車はRS6アバント、RS7スポーツバックともに装着。
荷室容量はRS6アバントが565リッター、RS7スポーツバックが535リッター。

上田 もう1台のRS4は、RS6やRS7と比べれば、ちょっと昔のホットハッチ的というか。


村上 さっき久実さんがヤンチャだって言ってたけど、RS4は一昔前のRSのイメージもあるよね。


佐藤 でも、実用性や速さは完璧に備えた上で、あくまでキャラとしての意味でのヤンチャさですよ。ステアリングの感触もどっしりしているし、走行モードによる足まわりの仕立てもけっこうメリハリがあるし、エグゾースト・サウンドもうるさくはないけど、ちゃんと鼓舞する感じというか。


村上 この2.9リッターV6エンジンの音は、独特の切れ味があるよね。適度な音が、ちょうどよく響く。


佐藤 高速のクルージングだとかはちゃんと静かなのに、峠道だと、いい感じに耳に届きますよ。


上田 RS7とRS6の4リッターV8も基本そうですよね。始動時だけちょっとうるさいけど、変な演出もないし耳障りじゃない。V8はV6よりさらにしっとりしているかな。


村上 V8エンジン自体はポルシェが造っていて、アウディのRSだけじゃなくランボルギーニ・ウルスも、ベントレー・ベンテイガも、もちろんカイエンもパナメーラも使う。ただし、今回の3台のRSの4輪駆動システム、これはアウディ独自の、しかも上位モデルだけが使う、直結型のクワトロ。今はアウディ・ウルトラっていう後輪を切り離して、基本FWDになるタイプもあるけど、これだけのパワーで走りを整えていくのには、4WDっていうのがすごく重要なファクターになっている。


佐藤 そこはアウディRSの一番のアイデンティティですね。


上田 全体的な印象としては、2000年代前半の、機械的には頂点に近いところまで行ったけど、今ほど電子制御の要素が入っていなかった頃のアウディの味わいが、戻ってきたような気がします。


村上 色々と機械的にも電子制御もトライし続けて、すべてがちょうどいい塩梅になってきた。ただし、レベルそのものはあの頃より遥かに高みにある。


上田 いわば究極の黒子ですよね。すべてが意のままになるけど、その存在はいっさい感じさせない。


村上 先日ロールス・ロイス・ゴーストに乗って、そういう意味ですごくドライバーズ・カーだと思ったけど、RSのアバントやスポーツバックも、相通じるものがあると思ったよ。


話す人=佐藤久実+村上 政(ENGINE編集長)+上田純一郎(ENGINE編集部、まとめも) 写真=望月浩彦


■アウディRS7スポーツバック
駆動方式 フロント 縦置きエンジン全輪駆動
全長×全幅×全高 5010×1960×1415mm
ホイールベース 2925mm
トレッド(前/後) 1665/1650mm
車両重量 2170kg
エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCターボ
総排気量 3996cc
最高出力 600ps/6000-6250rpm
最大トルク 81.6kgm/2050-4500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) マルチリンク
サスペンション(後)マルチリンク
ブレーキ(前後)通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 275/35R21
車両本体価格 1799万円


■RS6アバント
駆動方式 フロント 縦置きエンジン全輪駆動
全長×全幅×全高 4995×1960×1485mm
ホイールベース 2925mm
トレッド(前/後) 1665/1650mm
車両重量 2200kg
エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCターボ
総排気量 3996cc
最高出力 600ps/6000-6250rpm
最大トルク 81.6kgm/2050-4500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) マルチリンク
サスペンション(後) マルチリンク
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 275/35R21
車両本体価格 1764万円


■RS4アバント
駆動方式 フロント 縦置きエンジン全輪駆動
全長×全幅×全高 4780×1865×1435mm
ホイールベース 2825mm
トレッド(前/後) 1605/1595mm
車両重量 1820kg
エンジン形式 水冷V型6気筒DOHCターボ
総排気量 2983cc
最高出力 450ps/5700-6700rpm
最大トルク 37.7kgm/1600-4500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) マルチリンク
サスペンション(後) マルチリンク
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 275/30R20
車両本体価格 1250万円


(ENGINE2021年4月号)

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