2021.07.18

CARS

驚くほどスムーズなGTスパイダー フェラーリ・ポルトフィーノMに初試乗!

ポルトフィーノMに、ようやく試乗できる日がやってきた。果たして、その進化ぶりは走りにどう現れていたのか。

優雅でスポーティ

フェラーリ・ポルトフィーノMの試乗会は、横浜のみなとみらい地区に昨年新たにオープンした高級リゾート・ホテルを舞台に行われた。車名の由来であるイタリアの海辺の高級リゾート地を意識したのかどうかは聞きそびれたが、先月すぐ近くの埠頭でローマとともに撮影した時にも感じたのは、この優雅さとスポーティな要素を兼ね備えたGTスパイダーには、海や空の抜けるような青さが素晴らしくよくマッチするということだ。ましてや、今回私にあてがわれた試乗車は、涼しげな青みがかったシルバーのボディ・カラーに包まれており、海や空はもちろん、この季節ならではの新緑の風景とも抜群に合うように思われたのだ。



そんなスポーツカーに乗るのに、気分が高まらないわけがない。ホテルのエントランスでカメラマンが撮影に精を出している時から、私は逸る気持ちを抑えながらその姿を眺めていた。このスポーツカーは、老若男女の誰が見ても、ひと目でカッコいいと思うに違いない、そういう分かりやすいスタイルの良さを持っている。2017年にデビューした時から、ポルトフィーノはそういうカッコ良さを持つクルマだったが、今回“M”が付き、文字通りフェイスリフトして左右のエア・インテークを拡げるなどした結果、よりくっきりとした精悍な顔つきになった。

一方、リアのバンパーまわりのデザインも変更されている。エグゾースト・システムの変更により、2基のサイレンサーを排除することが可能になり、そのおかげで、よりコンパクトですっきりとした形状にすることができたというのである。このクルマだけ見ていると違いが良く分からないが、先代の写真と見比べると、先代が意外にコテコテした形状のリア・エンドを持っていたことが分かる。全体として、そもそもが端正なルックスを持っていたイケメンが、より磨き上げられてイケメン度を増したという感じだろうか。

シートにはオプションながらネックウォーマーも装備可能になった。

インパネの中央に据えられる巨大な回転計は、リアルな針がついたコンベンショナルなものだ。その左右には液晶ディスプレイが配され、様々な情報を表示する。ステアリング・ホイール上の運転モード切り換えダイヤルには、新たに「レース」のポジションが設けられた。

シートにはオプションながらネックウォーマーも装備可能になった。

すでにフェラーリ通ならご承知のとおり、“M”はイタリア語のモディフィカータのイニシャルで、英語のモディファイを意味し、フェラーリがフェイスリフトで大きな進化を遂げたモデルに使ってきた名称だ。その進化は、とりわけパフォーマンスの面において顕著であることが通例であったが、今回はどうなのか。

異例とも思える運転のし易さ

大きなドアを開けて座面の低いシートに腰を落ち着けると、すでにローマを体験した今となってはややクラシカルに感じられるインテリアが拡がっていた。インパネの中央に据えられた巨大な回転計はリアルな針がついたものだし、エンジンのスタート・ボタンを始めとするスイッチ類も、ローマのクリックやスワイプ式とは違い、すべてリアルに押したり回したりする形式のものだ。

独特の彫り込まれた形状のスポークを持つホイールは、ポルトフィーノMの専用デザイン。陰影の対比によってリムを明るく見せる効果があるという。

まずはそのステアリング・ホイール上の赤いスタート・ボタンを押してフロントに縦置きされたV8ツインターボに火を入れる。基本的に低音の太いエンジン・サウンドを持っていることは従来と同じだが、少し落ち着きを増したような気がするのは、エグゾースト・システムの変更によるものか、それとも同じエンジンでもこれよりも派手な音を響かせるローマを体験しているからなのだろうか。センターコンソールのスイッチを操作して、わずか14秒でハード・ルーフを降ろすと、その太いサウンドとともに気持ちの良い5月の風と光が室内に飛び込んでくる。この季節にピッタリのスパイダー姿で横浜の街に繰り出すことにした。

走り出してとにかく感心するのは、このクルマがフェラーリとしては異例とも思えるくらいに運転し易いことだ。もちろんフェラーリならではの緊張感がないとは言わないが、それでもリラックスして運転できるのは、前後左右の見切りが良い(クローズ時もローマよりずっと見切りがいい)のに加えて、操作に対するクルマの反応にピーキーなところがなく、すべての動きがスムーズだからだろう。先代のポルトフィーノも運転のし易いフェラーリだったが、今度のMはそのスムーズさがさらに大幅に増している。ギア・ボックスが従来の7段から、SF90ストラダーレに端を発し、ローマを経て移植された8段になったことは、とりわけ街中での中低速時の走りを快適にするのに大きく貢献しているようだ。

フロント・ボンネット・フードの下、奥深くに押し込まれた3.9リッターV8ツインターボ・ユニット。新しいカム・プロフィールを採用してバルブ・リフト量を増やし、燃焼室の充填効率を最適化するとともに、ターボチャージャーにも改良を加えるなどした結果、先代に比べて20ps増強された620psの最高出力を誇る。



20psアップの620ps

高速道路に乗って三浦半島方面に向かう。ルーフを開けたままでも、左右の窓を上げていれば、時速100kmまでならほとんど風は気にならない。乗り心地もスポーツカーとしては十分以上に快適で、これは大切な人を助手席に乗せてクルージングを楽しむようなドライブにはうってつけのクルマだと改めて感心した。

20ps増強されて620psになったエンジンは、この程度のスピードではパワーの差は分からないけれど、ますますスムーズさに磨きをかけてきたようで、どこから踏んでもリニアに反応してターボ・ラグなど微塵も感じさせない吹け上がりは、さすがフェラーリと口笛を鳴らしたくなるような気持ち良さを持っていた。



今回の試乗会で唯一残念だったのは、ダイナミック性能を試せるような山道をまったく走れなかったことだ。これまでスムーズさや快適性の進化について書いてきたが、実はこのポルトフィーノMは、ダイナミック性能でも大幅な進化を遂げているに違いないからだ。その証拠にドライブ・モードを選ぶマネッティーノのダイヤルにはフェラーリのGTスパイダーとしては初めてレース・モードが追加されている。これを選ぶと、ミドシップV8モデルなどで採用されている、よりアグレッシブにリアを流して曲がるような運転を助けるサイドスリップ・コントロールも働くようになっているというのだ。むろん、これはクローズド・コースで試すべきものだろうが、山道を走れば、その片鱗は窺えたはずだ。次に乗るときはぜひ体感してみたい。

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■フェラーリ・ポルトフィーノM
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4594×1938×1318mm
ホイールベース 2670mm
車両重量(車検証) 1750kg(前軸820kg、後軸930kg)
エンジン形式 直噴V型8気筒DOHCツインターボ
排気量 3855cc
ボア×ストローク 86.5×82mm
最高出力 620ps/5750-7500rpm
最大トルク 760Nm/3000-5750rpm
トランスミッション ツインクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
タイヤ (前)245/35ZR20、(後)285/35ZR20
車両本体価格(税込み) 2737万円~

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

(ENGINE2021年7月号)

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