2021.07.16

CARS

偉大なるニッポンのスポーツカー! 熟成の極みにある日産GT-RとフェアレディZに乗ってみた

日産フェアレディZは240ZGとZ32型に2回ずつ、計4回乗り継ぎ、GT-RはR32に3回、R34に2回、そしてR35と6度も乗り継いだというジャーナリスト、西川 淳。日本を代表するスポーツカー2台について、考えた。

日本で最も有名なスポーツカー

それこそフェアレディZに乗るたびに考えさせられるのだ。「スポーツカーって何だろう?」、と。

世間一般には、否、クルマ好きの間であっても、フェアレディZ は“立派なスポーツカー”であるに違いない。“日本を代表するスポーツカーは何?”国民投票でも実施したならば、かなりの上位に食い込んで見せるだろう。その歴史を考えれば一番になったっておかしくない。

そうなのだ。Z32からZ33にかけての一瞬の断絶(およそ2年)に目を瞑ったなら、フェアレディZは連綿と進化し続けた歴史的スポーツカーだ。誕生以来半世紀以上にわたって基本コンセプトをさほど変えずに続いた“(いわゆる)スポーツカー”は、ポルシェ911とシボレー・コルベット(C2以降)くらいのもの。フェアレディZが日本で最も有名な、世界に誇るスポーツカーであることは確かだ。

そのうえでこうも思う。「Zは果たして本当にスポーツカーなのか?」。

乗りながらいつもそんなことを考えさせられる。今回のZ34でもそうだった。その設計の古さが生む今やかえって心地よいドライブ・フィールを憎からず思いつつ、下した結論は、やはり以前と同じもの=Z34は決してピュアなスポーツカーではない。もっというと歴代フェアレディZがスポーツカーであった試しなどなかったのではないか。



2020年モデルのGT-Rは、新型ターボチャージャーや新開発のカーボン・セラミック・ブレーキの採用、さらには軽量化など様々な改良が施された。

GT-Rのエンジン・フードを開けたら、エンジンを組み上げたエンジニアの名前が入ったプレートが目に飛び込んできた。自信の表れだろう。

スポーツカーとは一体何か?

じゃ、お前にとってスポーツカーとは一体何なんだよ、西川 淳! と、冒頭に書いたように自問するハメになるわけだ。それは歴代フェアレディZがそうでないと考える理由を問うことでもある。

そのためには自分なりのスポーツカー論をあらかじめ披露しておく必要があるだろう。結論までの道筋を詳しく説明し始めると紙幅も早々に尽きそうなので簡潔に述べておきたい。それは、「操る喜びをドライバーのみに与えるべく重量配分に優れた専用設計の車台を持ったアフォーダブルなリア駆動2シーター・モデルで、できればマニュアル・トランスミッションであること」、だ。ここでは便宜的にこの定義に沿ったクルマを“核心的スポーツカー”と名付けておく。

いやぁ、それは極論だ! はい。おっしゃる通りです。

見てかっこよくて乗って楽しいと思えたクルマをスポーツカーと呼んでいいんじゃないか。そういう意見も多い。確かに“広義のスポーツカー”論はそれでいい。

けれどもスポーツカーとレーシング・カーがまだほとんど同義であった時代に“かっこいいクルマ”のイメージが生まれ、乗ってみたいと思う人が多くなって、それにメーカーが応えてきた、と考えたならば、当初はまだしも生真面目な設計の核心的スポーツカーが多かったのではあるまいか。採算度外視も散見された。楽しいに至っては、人体を超える性能を操る喜びは全ての機械に対して言えることであって、そもそも当然というべきだろう。

とても人工的な独特の世界観を持っているGT-Rのインテリアはデビューから変わらない。

肉厚のレザー・シートは掛け心地がソフトで乗り心地にも貢献している。



核心的スポーツカーとは?

さらにレーシング・カーはといえば、必然、規則に沿って速く走るサーキット専用のクルマへと別個の進化を遂げ始めた結果、そもそもスポーツカー・ベースである必要がなくなっていく。むしろメーカーのマーケティング的思惑に左右されるぶん、普通の乗用車を速く走らせたいとなることの方が多かった(後述するGT-Rの先祖がそうだ)。

何を言いたいのか。そんな進化のプロセスにおいてGTやスペシャルティカー、スーパーカーといったバリエーションが増えた。核心があって初めてその周囲に様々な可能性が広がってきたのだ。その肝心を忘れてしまったとき何が起きるのか?「軽トラでもミニバンでもスポーツカーだ」と言わんばかりに広義のスポーツカーという輪郭がいっそうぼやけ、クルマ全てがそうだという話にもなりかねない。見てかっこいい、乗って楽しいクルマの多様性を支持し今後にも期待するからこそ、核心的スポーツカーとは何かを問い続けることが大切だと筆者は思う。



3.7リッターV6は吹き上がりがよく、活発に回すと楽しいエンジンだ。低速域ではゴツゴツとした入力が気になった。こちらも飛ばすと気にならなくなる。

Zは良く出来たGT

フェアレディZに話を戻そう。このまま私的Z論を書き連ねてしまうとZファンから吊し上げをくらいそうなので先に胡麻を擦っておくと、フェアレディZは筆者の大好物だ。過去にS30とZ32をそれぞれ2台ずつ購入した経験もある。免許を取って最初に探したモデルもS130だ。その時は買えなかったけれど。

240ZGに乗ってカタチ以外にスポーツカーを感じたことは一度もなかった(たとえ設計者たちがスポーツカーだと思って作っていたとしても)し、Z32に至ってはもはや豪華なグランド・ツーリングカーだった。S130やZ31も然り。2シーター専用となったZ33から少しはスポーツカー色が濃くなったとは思うものの、それでも先の定義に照らせば核心的スポーツカーの範疇に入れることはできない。結果的にGTの要素がよく残った、言い換えればよくできたGTとして高く評価したいモデルであった。Z33以降、おそらくは次に登場する話題のZ35も、あくまで核心的ではないというだけで、周りをめぐるGTの輪より核心寄りにプロットされるとは思うが。

アナログ・メーターやダイヤル式スイッチが並ぶフェアレディZのインテリアは、懐かしい感じがした。

彫りが深いデザインのアナログ・メーターやダッシュボード中央の3連サブ・メーターは、初代へのオマージュ。



GT-Rは異形の存在

R35GT-Rに至ってはまったく新しいカテゴリーのモデルというべきで、それゆえレーシング・カーであることも含めてクルマ好きを惹きつける性能をいくつも詰め込んだ、見た目通りに“異形”の存在である。

その歴史はやはりスカイラインGT-Rまで立ち戻っていい。これまた話を始めるとキリがなくなってしまうので、第一世代(ハコスカ)、第二世代(R32-33-34)ともにモーター・スポーツを意識した箱型のクルマであったことだけをここでは確認しておくに留める。さらにスカイラインがベースの3ボックス・セダン(2ドア&4ドア)という縛りから逃れたR35は一見、核心的にも思える。けれどもあまりの高性能を目指した結果、もはやシンプルに操るという喜びを失い(違う次元の走る喜びがあったとしても)、決してアフォーダブルなモデルとは言えなくなった(絶対性能で世界のスーパーカーと比較すれば安いが)。



それでも最新モデルに久々に乗ると妙に欲しくなってしまうから、R35は曲者だ。筆者はBNR32を三度、BNR34を二度、そしてR35を最初期に一度、それぞれ所有した経験があるが、R35のツルシで世界と互角に戦える性能はやはり魅力的だった。しかも最新型には自在に動く前アシという新たな魅力も加わった。スポーツカーの領域に一歩近づいた。デビュー後14年も経っていまだに買ってみたいと思わせるあたり、やはり只者じゃない。

とはいえR35も、そして歴代GT-Rもまた、スポーツカーではなかった。GTとしての魅力が優っている。たとえそのクルマをベースとしたモデルがサーキットで圧倒的な勝利を重ねていたとしても、それがスポーツカーであることの証には決してならないことは前述した通り。そう考えると、ダットサンはともかく日産は、過去に核心的スポーツカーを作ったことがないのかもしれない。否、ZとGT-Rという二大スターが、その出現を拒んだと言っていいだろう。

文=西川 淳 写真=茂呂幸正

■日産フェアレディZ(VersionST) 
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4260×1845×1315mm
ホイールベース 2550mm
車両重量 1540kg
エンジン形式 V型6気筒DOHC
総排気量 3696cc
最高出力 336ps/7000rpm
最大トルク 365Nm/5200rpm
変速機 7段AT
サスペンション前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション後 マルチリンク/コイル
ブレーキ前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ前/後 245/40R19/275/35R19
車両本体価格 503万8600円

■日産GT-R(プレミアム・エディション) 
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4710×1895×1370mm
ホイールベース 2780mm
車両重量 1770kg
エンジン形式 V型6気筒DOHCターボ
総排気量 3799cc
最高出力 570ps/6800rpm
最大トルク 637Nm/3300~5800rpm
変速機 6段自動MT
サスペンション前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション後 マルチリンク/コイル
ブレーキ前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ前/後 255/40R20/285/35R20
車両本体価格 1232万9900円

(ENGINE2021年7月号)

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